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2節[第一章]
第三十九話『秋の家紋』
しおりを挟む会場には溢れんばかりの拍手が響いている。
その中にはフィブア様達の姿もある。
パーティーの主役である私は挨拶のために一歩前に出る。
「ごきげんよう皆様!ウィンター家令嬢、レイン・ウィンターです!今宵は私の社交デビューパーティーに来て下さり感謝致します。どうぞ心ゆくまで楽しんでくださいませ!」
会場に再び沢山の拍手が響く。後ろで待機していたエイム様も笑顔で私の横へ立って「良かったよ」と言ってくれた。
私とエイム様は下にあるパーティー会場へ向かい、まずフィブア様達の元へ行った。
3人とも沢山の人に囲まれており入りずらくしていると、エイム様が私の手を引きながら3人の元へ歩いていってくれた。
「やぁフィブア、スベイス、ヤヌア君、久しぶりだな。」
「お兄様達も楽しんで頂けているようで良かったです!」
「エイム!レイン!」
「レイン!挨拶良かったで!やっぱりレインは僕らの最高の妹やわ!」
「色んな方々から噂なんて当てにならないって話が出とるよ。まぁ俺らの妹なんだからそんな事は当たり前やけど。」
エイム様とフィブア様達はいつも通り話している。しかし場所が場所なので色々聞こえてきはする。
「一体何なのかしらねあの女。」
「いくらウィンター家の一人娘だからってね。」
「男好き令嬢とはよく言ったものよね。」
なんて声が聞こえてくる。一応私の社交デビュー記念パーティーなんだけどな…。
悪役令嬢として転生した時点でこういう事は覚悟していたし、初めの方はこういう態度があたり前だったから今更気にしてはいないけど。
フィブア様達にまで私と同じ態度を取られたら困るし、ここは一言言っておかなきゃ。
女の子達の所へ行こうとすると、その前に見慣れた人がその場へ行っていた。
そして私の隣にはその人物の兄弟が立っていた。笑顔で挨拶する彼は私のよく知る人物だ。
「社交デビューおめでとうございます、レインさん。」
「シオンのこと、いつもありがとうね。」
「ジィーブ様!エース様!」
そう2人は四代家紋、秋をつかさどるハーベスト家の長男と次男のジィーブ様とエース様。
私の従者、シオン君のお兄様達だ。
「ありがとうございます!こちらこそシオンには助けられてばかりですから…もっと頼りがいのある主人にならなきゃいけません!」
「ハハッ君は相変わらず頑張り屋なんだね。僕からはもう十分立派なレディに見えるよ。」
「ちょっとエース?僕の妹を口説くつもり?」
エース様達と話していると、スベイス様が私の横から顔を出して口をとがらせながら話し始めた。
「そんな事しないよ!レインさんはエイムの婚約者だしね。」
「その前に僕の妹やで!」
頼むからそんな恥ずかしい事を言わないでくださいスベイス様。
口をとがらせるスベイス様は少し幼く見える。まだまだ子供だな~。
2人はそれぞれの家紋の次男通しなのでよく話し合いをする場で出くわすらしい。
エース様もジィーブ様も弟であるシオンが大好きな事がよく伝わってくる。
ハーベスト家の兄弟はゲームでも仲がいい兄弟達で有名だったからか、それを近くで感じられている私は幸せだなと感じる。
ハーベスト家はシオン君、ジィーブ様、エース様、そして…
「ノイ…」
「ありゃ?そういえばノインは?」
「あれ?私たちと一緒に来てたんやけど…。」
「あっ!あそこにいる…ってあの子またやってるよ…。」
ふと、私はさっきまで聞こえていた声が聞こえてこないことに気づいた。
騒いでいた女の子達の方を見ると、怯えている女の子達ともの凄い剣幕で女の子達を睨んでいるノイン様の姿があった。
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