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2節[第一章]
第三十五話『ついにこの日が…』
しおりを挟む白いフワフワとした雪が溶け始め、暖かな日差しが降り注ぐ。
今日私は16歳になる。
この日までウィンター家で開いたパーティーでの情報収集や社交活動をしながら、エイム様達の死亡フラグを書き起こして対策したりなど、目標のために時間を注いだ。
こっそり神様のライトさんや妖精王のクリーンさんに会って私の能力を試してみたりした。
ストーリーとは全く違う所は沢山あるけれど、少なくともヒロインがいる時点でこの世界はゲームの世界であると証明されている。
私園田萌は、あるひ車に轢かれそうになった子供を助けて死んでしまい、やり込んでいたゲーム「平民魔法の恋愛呪文♡」に転生した。
その時に何故か神様に気に入られチート能力を授かり、ヒロインに転生!!…かと思いきや悪役令嬢のレイン・ウィンターに転生!
ゲームオタクだった私はストーリーの全てを知っている。だからこそ私がキャラクター達を沢山ある死亡フラグから守って行こうと誓う。
それが私にとっての幸せだから。
今までのことを正確に思い出すと長くなるから、あんまりしないけれど、これから私が挑むのはストーリー最初の大きな山場だからしっかりしなくちゃ!
ストーリー最初の山場
それは本来ヒロインが初登場する、悪役令嬢レイン・ウィンターの正式な社交界デビューパーティー。通称、悪役令嬢初登場イベント。
ヒロイン目線だからそう言われているけれど、悪役令嬢ルートを極めた私がよく言っていたのはレインの記念誕生日パーティー。
この世界では正式な社交界デビューは16歳からと決まっている。レインは4代家紋であるため例外として16歳になる前から社交界にでていた。
ゲームではヒロインとメインキャラクター達の好感度によってそれぞれパーティーでの反応が変わる。
例えばスベイス様の場合、好感度が低いと
「やぁお嬢さん、お久しぶりですね(ニコッ」
だけど、好感度が高い場合
「○○ちゃん!会えて嬉しいよ!久しぶりだね!(ニコッ」
こんな感じにかなりセリフが変わる。これがまたフルボイスなのがいいんだよねー!
…えっと、この日になるまでヒロインが目立った動きをした事はなかったから好感度は大丈夫だと思う。
だけど逆に、この日に動くために静かにしていた可能性もある。
ヒロインがノイン様やエイム様に対してストーリーと同じ接触の仕方をした時点で、私はヒロインと敵対している。
ストーリーと同じだとみんなが死んじゃうの分かってるはずなのにするって事は、みんな死んでもいいって思ってるって事だからね!
私はみんなを死なせないように死亡フラグを折る、ヒロインはストーリー通りに進んでみんなが死ぬようにしてる。
簡単にまとめるとこんな感じかな?
ヒロインがどんな子かは知らないけど、ゲームで死んでるのにこっちの世界でも死んじゃうなんて悲しすぎるでしょ!?
まぁたまに、ゲームの世界と私が今レインとして生きてるこの世界は一緒なのかなって不安になる時はあるけど…。
「あぁ…こういう疑問って考えても分からないから困ってるのよね。」
ため息を1つして座っていた椅子から立ち上がる。
もうすぐ約束の時間、そろそろシオン君が来るはず。
そう思い扉を見ていると、コンコンと音がする。シオン君が私の部屋をノックする時の音だ。
軽く返事をすると、シオン君が入ってくる。
今日のシオン君はいつもより少し着飾ったスーツを着ている。今日のパーティーにシオン君は私の従者として出席するからだろう。
「お時間です、レイン様。」
「うん!じゃあ行こっか!」
シオン君と共にみんなが集まる玄関へ向かう。
私とシオン君、カミリアちゃん、フィブア様、スベイス様、ヤヌア様が一緒に行く。
馬車は4人乗りだから、シオン君とカミリアちゃんの2人は別の馬車に乗る。
この日までであの2人、更に仲良くなってるのよね~!ゲームとは違うカップルが出来てもオタクとしては大歓迎です!!キャー!早くくっつけ~!!
「あっ!レイン様!」
はっ!しまった…完全に恋愛脳だった。カミリアちゃんに話しかけられて気づくなんて…気をしっかり持たなきゃ!これから一言一句失敗できないんだから!
「お待たせしました!みな…さま…」
……。
「ん?どないしたんやレイン?」
「あぁ!可愛い!!相変わらずレインはどんなドレスを着ても似合うね~!」
「今日のエスコートをエイムさんに任せるんが惜しいくらいやね。」
…ファッ
あぁ玄関の照明が明る過ぎるからか、はたまたお兄様方が輝きすぎているからか…
とにかく直視できません!!何あれ!そりゃ普段からイケメンなのにパーティー用に着飾ったらそうなるだろうけど!
フィブア様は黒に赤色のストライプが入ったスーツに白の手袋をしている。赤色のストライプはフィブアの瞳の色そのものだ。
スベイス様は青色のスーツに黄色いネクタイを合わせている。初めは黄色か青色かで悩んでいたスベイス様が私の瞳を見るなり、黄色だ!と言って決めていたのを覚えている。
ヤヌア様は濃いグレーのスーツに薄紫のシャツを着ている。胸の辺りには紺色のリボンで作られた花がつけられていた。
その飾りは、私が転生する前の15歳のレインがヤヌア様の誕生日にプレゼントした物だった。
私の記憶ではないけれど、必死に悩んで買ったのを思い出す。毎回必ずプレゼントを渡すレインも、少なからずお兄様達を愛していたんだろうと私は1人で嬉しくなった。
今日の私は誕生日パーティー用に仕立てた水色と白の混合ドレスに、この日のためにエイム様がプレゼントしてくださったティアラを着けている。
相変わらず用意は大変だけれど、心做しかエイム様がプレゼントしてくださったティアラを着けていると、今から起こる出来事全てが上手く行きそうな自信が湧いてくる。
それに私は、
「さぁ、行くでレイン。」
「コケちゃアカンで?気ぃつけや?」
「手ぇ貸し?支えたるから。」
「レイン様、ゆっくりでいいですからね。」
「馬車の用意は完璧ですよ!レイン様!」
1人ではないのだから。
「私みんなの事…大好き!」(ニコッ
この大切な人達を守るためにも、必ずヒロインを停めなくちゃ!!
私はその決意を胸に馬車へ乗り込んだ。
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