38 / 77
2節[第一章]
第三十五話『ついにこの日が…』
しおりを挟む白いフワフワとした雪が溶け始め、暖かな日差しが降り注ぐ。
今日私は16歳になる。
この日までウィンター家で開いたパーティーでの情報収集や社交活動をしながら、エイム様達の死亡フラグを書き起こして対策したりなど、目標のために時間を注いだ。
こっそり神様のライトさんや妖精王のクリーンさんに会って私の能力を試してみたりした。
ストーリーとは全く違う所は沢山あるけれど、少なくともヒロインがいる時点でこの世界はゲームの世界であると証明されている。
私園田萌は、あるひ車に轢かれそうになった子供を助けて死んでしまい、やり込んでいたゲーム「平民魔法の恋愛呪文♡」に転生した。
その時に何故か神様に気に入られチート能力を授かり、ヒロインに転生!!…かと思いきや悪役令嬢のレイン・ウィンターに転生!
ゲームオタクだった私はストーリーの全てを知っている。だからこそ私がキャラクター達を沢山ある死亡フラグから守って行こうと誓う。
それが私にとっての幸せだから。
今までのことを正確に思い出すと長くなるから、あんまりしないけれど、これから私が挑むのはストーリー最初の大きな山場だからしっかりしなくちゃ!
ストーリー最初の山場
それは本来ヒロインが初登場する、悪役令嬢レイン・ウィンターの正式な社交界デビューパーティー。通称、悪役令嬢初登場イベント。
ヒロイン目線だからそう言われているけれど、悪役令嬢ルートを極めた私がよく言っていたのはレインの記念誕生日パーティー。
この世界では正式な社交界デビューは16歳からと決まっている。レインは4代家紋であるため例外として16歳になる前から社交界にでていた。
ゲームではヒロインとメインキャラクター達の好感度によってそれぞれパーティーでの反応が変わる。
例えばスベイス様の場合、好感度が低いと
「やぁお嬢さん、お久しぶりですね(ニコッ」
だけど、好感度が高い場合
「○○ちゃん!会えて嬉しいよ!久しぶりだね!(ニコッ」
こんな感じにかなりセリフが変わる。これがまたフルボイスなのがいいんだよねー!
…えっと、この日になるまでヒロインが目立った動きをした事はなかったから好感度は大丈夫だと思う。
だけど逆に、この日に動くために静かにしていた可能性もある。
ヒロインがノイン様やエイム様に対してストーリーと同じ接触の仕方をした時点で、私はヒロインと敵対している。
ストーリーと同じだとみんなが死んじゃうの分かってるはずなのにするって事は、みんな死んでもいいって思ってるって事だからね!
私はみんなを死なせないように死亡フラグを折る、ヒロインはストーリー通りに進んでみんなが死ぬようにしてる。
簡単にまとめるとこんな感じかな?
ヒロインがどんな子かは知らないけど、ゲームで死んでるのにこっちの世界でも死んじゃうなんて悲しすぎるでしょ!?
まぁたまに、ゲームの世界と私が今レインとして生きてるこの世界は一緒なのかなって不安になる時はあるけど…。
「あぁ…こういう疑問って考えても分からないから困ってるのよね。」
ため息を1つして座っていた椅子から立ち上がる。
もうすぐ約束の時間、そろそろシオン君が来るはず。
そう思い扉を見ていると、コンコンと音がする。シオン君が私の部屋をノックする時の音だ。
軽く返事をすると、シオン君が入ってくる。
今日のシオン君はいつもより少し着飾ったスーツを着ている。今日のパーティーにシオン君は私の従者として出席するからだろう。
「お時間です、レイン様。」
「うん!じゃあ行こっか!」
シオン君と共にみんなが集まる玄関へ向かう。
私とシオン君、カミリアちゃん、フィブア様、スベイス様、ヤヌア様が一緒に行く。
馬車は4人乗りだから、シオン君とカミリアちゃんの2人は別の馬車に乗る。
この日までであの2人、更に仲良くなってるのよね~!ゲームとは違うカップルが出来てもオタクとしては大歓迎です!!キャー!早くくっつけ~!!
「あっ!レイン様!」
はっ!しまった…完全に恋愛脳だった。カミリアちゃんに話しかけられて気づくなんて…気をしっかり持たなきゃ!これから一言一句失敗できないんだから!
「お待たせしました!みな…さま…」
……。
「ん?どないしたんやレイン?」
「あぁ!可愛い!!相変わらずレインはどんなドレスを着ても似合うね~!」
「今日のエスコートをエイムさんに任せるんが惜しいくらいやね。」
…ファッ
あぁ玄関の照明が明る過ぎるからか、はたまたお兄様方が輝きすぎているからか…
とにかく直視できません!!何あれ!そりゃ普段からイケメンなのにパーティー用に着飾ったらそうなるだろうけど!
フィブア様は黒に赤色のストライプが入ったスーツに白の手袋をしている。赤色のストライプはフィブアの瞳の色そのものだ。
スベイス様は青色のスーツに黄色いネクタイを合わせている。初めは黄色か青色かで悩んでいたスベイス様が私の瞳を見るなり、黄色だ!と言って決めていたのを覚えている。
ヤヌア様は濃いグレーのスーツに薄紫のシャツを着ている。胸の辺りには紺色のリボンで作られた花がつけられていた。
その飾りは、私が転生する前の15歳のレインがヤヌア様の誕生日にプレゼントした物だった。
私の記憶ではないけれど、必死に悩んで買ったのを思い出す。毎回必ずプレゼントを渡すレインも、少なからずお兄様達を愛していたんだろうと私は1人で嬉しくなった。
今日の私は誕生日パーティー用に仕立てた水色と白の混合ドレスに、この日のためにエイム様がプレゼントしてくださったティアラを着けている。
相変わらず用意は大変だけれど、心做しかエイム様がプレゼントしてくださったティアラを着けていると、今から起こる出来事全てが上手く行きそうな自信が湧いてくる。
それに私は、
「さぁ、行くでレイン。」
「コケちゃアカンで?気ぃつけや?」
「手ぇ貸し?支えたるから。」
「レイン様、ゆっくりでいいですからね。」
「馬車の用意は完璧ですよ!レイン様!」
1人ではないのだから。
「私みんなの事…大好き!」(ニコッ
この大切な人達を守るためにも、必ずヒロインを停めなくちゃ!!
私はその決意を胸に馬車へ乗り込んだ。
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

正妃として教育された私が「側妃にする」と言われたので。
水垣するめ
恋愛
主人公、ソフィア・ウィリアムズ公爵令嬢は生まれてからずっと正妃として迎え入れられるべく教育されてきた。
王子の補佐が出来るように、遊ぶ暇もなく教育されて自由がなかった。
しかしある日王子は突然平民の女性を連れてきて「彼女を正妃にする!」と宣言した。
ソフィアは「私はどうなるのですか?」と問うと、「お前は側妃だ」と言ってきて……。
今まで費やされた時間や努力のことを訴えるが王子は「お前は自分のことばかりだな!」と逆に怒った。
ソフィアは王子に愛想を尽かし、婚約破棄をすることにする。
焦った王子は何とか引き留めようとするがソフィアは聞く耳を持たずに王子の元を去る。
それから間もなく、ソフィアへの仕打ちを知った周囲からライアンは非難されることとなる。
※小説になろうでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる