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1節[第三章]
第三十二話『幸せ』
しおりを挟む本当に神様に会えちゃった!
「元気そうで何よりだよ。」
「私の事覚えてたんですね!」
「君にしか僕の力をあげてないからね!ずっと見てたよ?」
ずっと見てた??
「たっ例えば?」
「ノインって子と喧嘩してた所とか、エイムを下敷きにした所とか、ドラゴンとサラッと約束したところとか…」
「もう大丈夫です!分かりました!分かりましたから!」
恥ずかしい!!私の行動全部知られてるなんて!神様には申し訳ないけどストーカーじゃん!
「“僕を無視しないで貰えるかな?”」
あっ…
「なんだよクリーン、僕と萌との時間だぞ?」
「“勝手に来たのは君だろ?”」
あっあれ?神様とクリーンさんって仲悪い??
神様は私の隣に椅子を創り出し、足を組んで座った。指を鳴らして紅茶のカップを召喚し、浮かせたポットから紅茶を注いだ。
「“君は相変わらず頼らないね…。”」
「他人に頼み事はしないって決めてるからね。」
「“神様は大変だね。”」
「お前も妖精王だろ?」
なっなんだか会話に入りずらい…。この2人ってクリーンさんが説明した通りなら、世界を支える勢力のトップ同士って事だよね?互いに拮抗した関係だから、深く仲良くはならないようにしてるのかも…。
仲良くなったり距離が縮まったら世界のバランスとか崩れたりして大変だもんね。2人とも素直じゃない性格だから遠回しにしか言わないんだ。
じゃあ余計私居ずらくない??いくら神様から能力貰った身とはいえ、世界の均衡を保つトップ同士の会話に一般人間が入り込んじゃってますけど!ってそっか、今は一般じゃないんだっけ…。
そうだ!神様に会って聞きたいことがあったんだ!
「あの、神様?」
「ん?なぁに萌ちゃん?」
えっと…えっと…
「クックリーンさんみたいに神様にはお名前はないんですか?なんだか神様って呼び続けるのもどうかと思って…」
「名前??」
「はい…」
ってちがーう!!そうじゃない!空気に呑まれて完全に違うこと聞いてる!!私の馬鹿!!
私が聞きたいのは、ヒロインの事とか、私に能力をくれたのは何でなのかとかなのに!そんな友達作りの最初みたいな緊張今更いらないから!
「名前は教えられないんだ。でも名称はあるよ?」
「名称??」
「そう、僕の名称はシャイン。」
シャイン…光ってこと?いかにも神様って感じの名称。
「クリーンだって名前じゃなくて名称だからね。僕らは名前を呼ばれると厄介だからさ。名称を作って、それで呼んでもらうようにしてるんだ。」
それじゃあクリーンさんにも名前が別にあるってことなんだ…。ドラゴンのラバの時みたいに契約とかが関係してくるのかな?
正直、精霊の事も神様の事も世界の均衡を保つ3つの種族の事も何一つゲームには出てこなかった。
そのせいもあって、私にはここで話される全てが知らない事ばかり。そもそも転生した事すら私にとって非現実的なのだから。
ここはゲームになかった私の知らない独自の世界。本格的にこの世界がファンタジーだと分からせられているかのようだ。
「それでは神様のことはシャイン様と呼べばよろしいのですか?」
「うーん…クリーンがさん付けで呼ばれてるのに僕が様で呼ばれるのはなんか嫌だな…。」
「“さん付けは僕がクリーンって呼んで欲しいって言ったけど、彼女がどおしても呼び捨ては出来ないって言うからさ~”」
「ふーん…」
それは言わないで欲しかった…//
「“よっ妖精王を呼び捨てにするのはどうかと思いまして…。”」
それに…美男子を呼び捨てとか前世オタクの私にはかなりハードル高いのよ!!
「なら、シャインさんでいい。様は止めてくれ。呼び慣れたらシャインって何時でも呼んで構わないからさ!」
「わっ分かりました!シャイン…さん。」
「“ふふっ、僕もクリーンって呼べるように頑張ってね?”」
「“努力します…。”」
当分は無理だろうけど…。ただでさえ転生したレインのお兄ちゃん達を兄様で呼んでるのに…。いつか慣れたらお兄ちゃんって呼んでみたいけどね…。
「ところで萌ちゃん、転生生活は楽しい??」
「えっ、それはもちろん…」
楽しい…けど。
子供を助けて死んで、転生して、キャラクター達を死亡フラグから助けて…。
考えれば考えるほど怒涛の日々だった気がする。エイム様を助けるために初めて能力を使って、ジィーブ様やノイン様達メインキャラクターに出会って、ヒロインも転生者で…。
あぁ、本当に沢山色んなことがあったな…。一つ一つ必死に頑張って、不思議な事が立て続けに起こって…。
「私は、今の生活が好きです。前の生活じゃ考えられないドキドキやハラハラがあって、毎日推しの笑ってる姿が見れる。」
当たり前のような光景になっていくかもしれないけど、きっとそれが幸せなんだって私は思うから。
「私、この世界に転生出来て幸せです!」(ニコッ
「くくっ…そっかそっか幸せか!なら良かった!」(ニコッ
シャインさんは少年のように無邪気に笑う。本来ならであえなかった推し達に会えたのも、普通じゃ助けられない死亡フラグを折れたのも、全部シャインさんのおかげなんだよね。
「シャインさん、私を選んで下さってありがとうございます!」
シャインさんは優しく微笑んで私を眺めている。何故か見覚えがあるけれど、きっと気のせいだ。
「“さて、そろそろ帰らないと君のお兄さんが心配しているね。”」
お兄さん…あっ!フィブア様!!
「そうか、じゃあまた会いたくなったら僕を呼んで?何時でも君のもとへ行くよ。」
「はい、是非お会いしましょう!シャインさん!」
シャインさんが私の頭を撫でながら指を鳴らした。すると白い光に包まれ、目を開けるとフィブア様と来ていた図書館に戻ってきていた。
「レイン!?大丈夫か!?」
どうやらクリーンさん達に会っていた間、こっちでは眠っているような状態だったらしい。慌てた様子のフィブア様に私は笑って返事をする。
起き上がった時に持っていた本を見て、私は思わず笑みを零した。
「なんかええ事でもあったんか?」
不思議そうに見るフィブア様にはクリーンさん達のことは内緒だ。あの場所は私やシャインさん達の秘密の場所だから。
「はい!でも、フィブア様には秘密です!」
「秘密?なんやお兄ちゃんにも教えられへんの?」
「ダメ!お兄ちゃんにも内緒です!」(ニコッ
私は本を持って出口の方へ歩いていく。この本はウィンター家の欄にあったのだから、持っていっても大丈夫だろう。
「今日は一緒に来てくださってありがとうございます。本当に無事でよかったです。」
フィブア様が昏睡状態にならなくて本当によかった。これからも私がフィブア様や、推し達を死亡フラグから守っていかなくちゃ!
それが私の幸せを守るために出来る事だから。
「帰りましょう、フィブアお兄ちゃん!」(ニコッ
フィブア様は静かに微笑んで私の手を取ってくれた。私もその手をしっかりと握り返す。
窓から差し込む夕日が私たちを優しく照らしてくれた。この夕日をフィブア様達がいつまでも見れるように…
「私、頑張りますね。」(ボソッ
こうして私とフィブア様は大図書館アーターガイストを後にした。
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