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1節[第二章]
第二十二話(終)『誤解と決意』
しおりを挟む結局二人にかなり質問攻めされたけど、カミリアが止めてくれて何とかおさまった。
来た犬ぞりではカミリアが乗れないためフィブア兄様が犬ぞりで先に街へ向かい街の人達への説明や泊まる場所を用意することになった。私達はカミリアの案内で雪の少ない道を歩いて街に戻った。
「“あの、レイン様…”」
「“ん?どうしたの?”」
「“私が街に行ったら、みんな怖がってしまうと思うので外で待っています。”」
そっか、カミリアは街の人が自分の能力が怖くて追い出したと思ってるんだ…。
「“ダメよ!街の人はあなたを待ってるんだから!行くよカミリア!!”」
「“わっ!”」
カミリアは街のために一人で頑張ってた。それを街の人は言わないけど知ってる。だからきっと…
「“あぁ!ローズお姉ちゃんだ!”」
「“ローズお姉ちゃんが帰ってきたよ!”」
カミリアに気づいた街の子供たちがカミリアに抱きついた。笑顔できた子供たちにカミリアはかなり戸惑っていた。騒がしいことに気づき街の大人達もカミリアがいることに気づき集まってきた。
「“まぁお帰りローズちゃん!”」
「“よく生きて帰ってきた!あの日からローズちゃんを忘れた日はなかったよ!”」
考えもしなかった周りの反応にカミリアはあたふたしている。
「“あの時ローズちゃんを勘違いさせたまま行かせちまって…俺たちは君の能力が怖くて追い出したわけじゃないんだ。”」
「“違うの…?”」
街の人達はカミリアに話した。今までカミリアがしていた事を知っているが知らないフリをしていたこと。カミリアの能力は街の人全員が理解していること。
そしてカミリアが追い出されたあの日、国の使者が街を訪れていたこと。
「“国の使者が来た時街のみなは思った。国の使者はローズ、君を狙ってきたのだと。”」
「“私を狙って?”」
国はその頃戦争で佳境を迎えていた。戦争終結一か月前、ここを勝てば押し切れるという所である問題が生じた。
エネルギー問題
戦争に使うはずのエネルギーが足りないことに気づいたのだ。この国では主に修行を重ねた魔法使いが生活を保護してもらう代わりにエネルギーとなる魔力を分け与えるのが普通だ。
しかし魔法使いは国の味方ではない、ギブアンドテイクの関係。戦争に反対だった魔法使い達は戦争へのエネルギーを増やしはしなかった。
国に流れている首都のものからエネルギーを取れば必ず貴族たちから反感を買う。そこで国は首都から離れた街でエネルギーを供給できる者を探した。
基本魔法使いは一つの能力を持ち、それを磨いて一人前になる。一人前になった魔法使いは首都に留まり生活する。首都にいる魔法使いは戦争に反対する者しかいない、そこで国は発見されてない魔法使いの卵を探しその者をエネルギーにしようと考えたのだ。
それを察したカミリアタウンの人達は能力を持つローズを隠そうと考えた。国の使者には逆らえないが見つからないようローズを必死で守ろうとした街の人達はローズを街から追い出した。
国の使者がいなくなった後で街の人達が組まなく探したが、ローズは見つからず無事生きていることを祈るしかなかったという。
「“私達の言葉足らずのせいでローズちゃんを悲しませてすまなかったね…。”」
「“でもあの日からもずっと国のみんな、ローズちゃんが大好きだよ。”」
受け入れてくれる街の人達の優しさと愛されていたという事実にカミリアは目を潤ませた。
「“ローズお姉ちゃんのご飯美味しい!”」
「“ローズお姉ちゃんが作ってくれた髪飾り大好き!”」
子供からも大人からも街の全ての人から愛されていたことを知った。カミリアは貯めていた涙を少しづつ零した。これでカミリアも暖かい帰る場所ができた。
「“みんな、ありがとう。私もみんなが大好き。”」
微笑んだカミリアを見て街の人達も笑顔になった。すると一人の女性がカミリアに髪飾りを渡した。
「“これからウィンター家のお嬢様の元で働くんだろ?しっかり頑張りな!私達はいつでもあんたの味方だよ!”」
そう言ってカミリアに渡した髪飾りには椿の花のアクセサリーが付いていた。フィブア様が街の人に説明しみんな納得してくれたらしい。
カミリアは渡された髪飾りを使って二つにくくりこちらを向いた。
「“私は、レイン様のおかげで幸せになれました。今度は、私がレイン様を幸せにしてみせますから!”」
笑顔でそう言ったカミリアの目には真っ直ぐな決意が現れていた。
一人の少女のために街が団結できる
この街のような国が出来ればいいな…
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