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1節[第二章]
第二十二話(中)『新たな居場所』
しおりを挟むローズ!?
その名前は「平民魔法の恋愛呪文♡」ファンなら誰でも知っている名前。
攻略対象が男性ばかりのこの世界で唯一、女性キャラクターとして登場した別名「フラワーソード」と呼ばれる
ローズ・アヤメシア
ヒロイン唯一の専属メイドで、ヒロインを常に愛し見守り続けたキャラクター。
ストーリー通りではヒロインはエイム様、フィブア様とこの場所、カミリアタウンにやって来る。そこで少女の話を聞き、三人で少女に会いに行く。その少女がローズ・アヤメシア。ヒロインがローズを助けたいという思いを知ったエイム様とフィブア様は、ローズとヒロインを合わせるために吹雪の止まないこの場所へヒロインと訪れる。
言葉が通じないヒロインはローズの姿を見て笑顔で手を広げる。その瞬間吹雪が止みローズは初めて自分をさらけだし泣き崩れる。それを優しく宥めるヒロイン。それからヒロインのそばにつき、幸せになるまで支え続ける。それが本来のストーリー。
でも今は違う。ここに来ているのは悪役令嬢のレイン。言葉も通じる。ローズに能力はない。私が転生したことによってストーリーやキャラクターが変わっていってる。
その変化は良いものもあれば悪いものもある。例えばそこにいるローズ・アヤメシア。ヒロインに救われ自分の道を歩んでいくはずのキャラクター。それがヒロインはおらず誰もローズを救う人はいない。
これも全て私が転生してストーリーを変えたから。でも後悔はしてない。私がする行動は必ず後悔しないためにしていることだから。
だから気づいた時思った。ヒロインがいないなら、私が救えばいい。ローズをレインが救う新しいストーリー。今までたくさんストーリーを変えてきた私なら、彼女のストーリーも変えれるはず!
「“ローズ、私はあなたを助けたい!”」
「“…ごめんなさい、私はここから離れられないの…”」
「“大丈夫”」
「!!」
私があなたを解放してみせる。だって私は、
「“チート持ちの悪役令嬢なんだから!”」
ストーリーでは吹雪の晴れる瞬間がローズの心をさらけ出すきっかけの演出に使われてる。なら、私は…それを自力でやるまで!
「空よ!その全てを照らす光を灯せ!!」
手を上に掲げながらいつもながらに唱える。やりたいことに対しての呪文みたいなのが頭の中に流れてくるのだ。その呪文を唱えればそれが現実になって現れる。
呪文を唱えた瞬間、吹き付けていた吹雪が止み空から光が差し込んだ。その場にいた全員が空からの光に釘付けになった。ローズは此方を見つめていた。その目には光がある。
あぁ良かった。ちゃんと救えたみたい。
「“どうして…”」
そんなのあなたを救いたかったからに決まってるじゃない。あなたは救われるべきキャラクター、いや人間なんだから。言ったじゃない、大丈夫だって。
「“ローズ、あなたはこれから自由よ!あなたの望む素敵な道を歩んでいいのよ”」(ニコッ
「!!」
ローズはその言葉を聞いた瞬間目から溢れ出した涙を抑えながらゆっくりと崩れた。彼女の上から、暖かい太陽の光が降り注いでいる。彼女の冬は、もう終わったのだ。
ローズ・アヤメシア。春の花、薔薇の名前を持つキャラクター。本来ならフィーダー家で働くからピッタリなんだけど…私はウィンター家、冬の家紋だからあんまり良くないよね…。
でも一番はローズがどうしたいか。街に行くのも別の場所に行くのも彼女の自由。私が決めることじゃない。
「“ローズ、あなたはどうしたい?”」
「“私は…”」
一瞬の沈黙、エイム様とフィブア様は空気を読んで私達を眺めている。決めるのはローズ自身。
「“私は、あなたのそばにいたいです。”」
そういうとローズは膝をつき敬服の意を示す形をとる。私はローズに手を伸ばす。手を取ればそれは完全なる契約の証。
ローズは噛み締めるように私の手を取った。これからローズの幸せは私が導いてあげなきゃ。
「“改めましてローズ・アヤメシアです。”」
「“私はレイン・ウィンター。これからよろしくねローズ。”」
「“…レイン様、少しお願いがありまして…”」
おっお願い?あのローズからお願い!!さっき自由になった女の子のお願いとかお姉さんなんでも聞いちゃいたいかも!
「“なぁに?”」
「“私に、新たな名前を頂けませんか?レイン様に仕えるものとして相応しい名前を…”」
新しい名前…。ウィンター家、冬にピッタリな名前。冬の花…。
「“カミリア…。”」
この街の名前、冬に美しく咲く椿の花。最後には形を保ったまま落ちる最後まで美しい花。
「“今日からあなたはカミリア・アヤメシアよ。どう?気に入ってくれた?”」
そう微笑めば彼女は嬉しそうに笑った。
「“はい。とっても素敵な名前を、ありがとうございます”」(ニコッ
今まで冷たい冬の目をしていた彼女の目には、暖かな冬の光が差し込んでいた。ローズ、いやカミリアの自由は私が守ってみせるから。
エイム様とフィブア様には色々後で聞かれそうだけど、今はカミリアが救われたことを、レインとして、このゲームの一人のファンとして素直に喜びたい。
笑っている彼女はどんな人より美しい
これからよろしくね
カミリア
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