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1節[第二章]
第十九話『力と目標』
しおりを挟むヒロインがそんなことを??
エイム様たちを幸せにするためにやって来たって…ヒロインは平民育ちの母親がフィーダー家当主の人と再婚した時に連れていた子としてフィーダー家に入る。
明るくて前向きで優しい姿はまるで春の妖精とまで言われたヒロイン。その姿にお兄様達やエイム様は次々と恋に落ちていく。
これがゲームのある程度のあらすじとヒロインの設定。この後の行動は選択型と入力型にわかれて操作できるようになるんだけど、根本的なストーリーは変わらない。
ヒロインがエイム様のことを知るのはお兄様ではあるフィーア様が話をしている時。そして、レインの誕生日パーティーの時に初めて対面する。
そもそもおかしなとこはあった。ヒロインにしては目付きがきついし、お兄様方であるフィーア様やフユーン様たちが全く妹に対して愛がないっていうか…エイム様の反応もおかしかったし…。
スベイス様がシスコンな時点で悪役令嬢ルートであることは確定してる。レインのお兄様方がレインに対して優しいのはヒロインルートでも悪役令嬢ルートでも変わらない。
でも、悪役令嬢ルートだからってフィーア様達が悪役令嬢であるレインにこんな友好的に来るなんておかしい。
ヒロインの登場する時期だって違ったし、私は転生者だからレインのようにヒロインをいじめてない。なのにヒロインをいじめていると噂になってる。
ヒロインが予めレインが自分をいじめてくるって知ってたら?辻褄は合うけどどうやって??
「レインさん?」
「あっはっはい!」
「ごめんな?なんか考え事しとった?」
「あっすみません。そのフィーア様の妹様を私がいじめていると社交界で噂になっているらしくて…」
「君が妹を?」
「はい。身に覚えは無いのですが、もしかしたら妹様を不快に思わせてしまうことをしてしまったのではないかと…」
この反応によっては一番めんどくさいパターンの可能性が高くなるんだけど…。
「確かにエイムからそのことは聞いとる。やけど、君が妹をいじめていないのは明らかや。気にしんといて?」
「あいつがいじめられてるとか滑稽やな!なんなら見てみたいまであるわ!」
「ちょっフユーン兄さん!そんなこと思ってても言っちゃダメですよ!」
いや今思っててもって言ったよねズハイ様。あなたも本音が漏れてますよ??
「ふっ普段の妹様ってどのような方なんですか?」
「どのようなって…一言で言えばクズ、二言で言えば二重人格ぶりっ子やな。」
うわっ…最悪。
「妹って言っても実の妹ちゃうしな。」
「ここに来てから発言すればエイムさんの話ばっかり。婚約者のいる男性の話はあまりしないんが作法やと教えても一向に治らへんし。」
めちゃくちゃ言いますやんフユーン様、ズハイ様…。
「妹がよく分からへんことを言っとるのを耳にするし、得体の知れへん女やって我々の中では警戒してるんよ。あの子を妹とみたのは最初だけ、形式的に妹って呼んでるだけだよ。」
うわぁフィーア様ドライ…。さすがエイム様の助力者だけあるかも…。でもヒロインがここまでフィーア様たちに嫌われてるのは想定外。得体の知れない女なんて言われるとか、ヒロイン何言ってるんだろ…。
「具体的に妹様のはどのような事を?」
「う~ん…例えば“悪役令嬢”がどうのこうのとか、最近行ったレインさんとエイムのパーティー帰りに“どうしてエイム様があの女なんか”とか言ってたよ?」
悪役令嬢??
どうしてエイム様が??
それって…まさかヒロインって
「あぁ!それで言うたらあいついつもよく言う言葉あるやん!えぇっと…」
「“私はこの世界のヒロインなのよ!”ってやつ?」
「そう!それやそれ!」
あぁそのセリフは絶対言っちゃいけない禁句一位…。これで確定だ…ヒロインは間違いなくいや絶対に…
私と同じ転生者だ!!
一番めんどくさいパターン引いちゃったァ…。
「はぁ…」
「あっごめんなレインさん。レインさんから聞きたいことがあったらなんでも聞いてな?こっちから質問ばっかやったし。」
「あっいえ大丈夫です!皆様と話せているだけでこの時間はとても有意義ですから。」(ニコッ
推しと同じ部屋で話せるとかそれ以上何を望むというのか!転生万歳!!ありがとう神!!
「ならえぇんやけど…」
少し困った表情を見せたフィーア様に話題を変えようと話そうとした瞬間。
「キャー!!」
「「「「!!」」」」
遠くから女性の悲鳴が聞こえ私は後先考えずに部屋を飛び出した。
「ちょっレインさん!」
「俺が追うから兄さんは何があったか聞いといてくれ!ズハイは俺と一緒行くで!」
「はっはい!」
「レインさんを頼んだでフユーン!」
「任せとき!」
悲鳴の聞こえた場所に着くとそこには、巨大な獣がメイドさんを襲おうとしていた。
まじでやばい状況!
メイドさんは恐怖で腰が抜けているようだった。他の人が助けに出ようとするがその度に獣が敏感に反応している。無闇に動くのは危険だ。
「皆さん!動かないで!安全な場所にいてください!」
「あれは誰だ?」
「今日おいでになっているウィンター家のお嬢様よ!」
「お嬢様!!危ないです!こちらへ!!今騎士の方を呼んで…」
そんなのまってらんない!このままじゃメイドさん死んじゃう!!
私は自身のドレスを破り全速力で走り出した。獣が私に対して腕を振り上げるがすんででかわしメイドさんの所へたどり着く。
「大丈夫ですか?さっ私の手を…」
「後ろ!!」
メイドさんが叫び私は咄嗟に後ろを向いたが獣の腕に吹き飛ばされ気に背中を打ち付けた。
「キャー!!」
「騎士を早く!!」
いやぁ派手に飛んだな…。てか痛くないんだけどなんで??ってあっ…
「私チート持ちだったわ…。」
なんか使うことほとんど無くて忘れてた。まぁこのチートのおかげで絶賛私は無傷なわけですな…。
なら、この獣倒すくらい簡単だよね?
「令嬢とは名ばかりだけど、人命がかかってるしいいよね!」
まず、どんな形にするか。殺すのは可哀想だし…まず獣って理由なしで人を襲ったりしない。つまり何か原因があるわけで…。
あっこれこそチートの出番じゃん!えぇっと原因が知りたいから…。
「分析…。」
私がそう呟くと目の前にモニターのようなものが現れ獣をスキャンしていく。この世界じゃ考えられないハイテクぶり。
スキャンした結果が画面に映し出される。
結論、獣はどうやら左後ろ足の付け根あたりに枝が刺さり痛がっているだけのようだ。
「なんだそんなことか!じゃあさっさと取って治してあげよ!」
スキャンで位置はだいたいわかったし、枝を取り除いて傷を治すから…。
「身体強化と回復スキル付与!」
手を横に広げ体にスキルが行き渡るよう促す。薄くだが金色のオーラが見える。身体がエネルギーで満たされている感覚。
まっててね獣ちゃん!今痛いの治してあげるから!!
獣に向かったつ走り出し気づいた獣は腕を上げる、身体強化のおかげでヒラリとかわし背中に着地する。
「レインさん!!」
「レイン!!」
あっ…フユーン様とズハイ様に見られちゃった。まっいっか!!今は獣さん優先!
次は左の後ろ足にある枝をとって最後に回復スキルで治してあげれば完璧!
左後ろ足の方に行くと小さいが枝が刺さっているのがわかる。あれは痛い。誰かはなったことがあるであろうあの木製の製品を触ったら指に小さい枝が刺さっていたこと。あれはマジで痛い。
「よく我慢したね…もう大丈夫だから。」
獣の背を優しく撫で枝に向かって集中する。取り除くだから…。
「原因であるものを削除。」
手をかざしつぶやくと跡形もなく枝が消える。最後は回復スキルで治すだけ。
「傷の回復と痛覚緩和。」
傷口に手をかざし効果を言えば緑の柔らかい風が吹き、傷がみるみるうちになくなっていく。
「これでよし!」
獣はみるみる小さくなり子犬くらいのサイズになった。白い毛並みと赤い瞳がなんとも可愛い。痛みのせいで我を失い暴走してしまったのだろう。
「わんッ!」
「フフっよかったね。」
獣だった子犬はすっかり元気になり私の周りを走っている。かなり懐かれたみたい。
「レインさん!」
「レイン!!」
あっやばい。
「フユーン様、ズハイ様…」
「けっ怪我はございませんか?」
「あっ大丈夫です。ドレスは動くために破いただけですし、この子は痛がって暴れていただけですから。」
「この子??」
「はい、何かはわかりませんが…」
獣は獣でもただのわんちゃんじゃないだろうし…。痛がって体が大きくなるって私みたいに何らかの力を持ってるとしか考えられない。
「多分魔獣ちゃうか?」
「魔獣??」
確かにゲームないでヒロインが暴走した魔獣を止めて、優しくなだめてあげるシーンはあったけど…こんな感じじゃなくてもっと魔獣って感じだったような…。
というか
私のことずっと見てる…。
かわいい~!(ギュッ
モフモフだぁ!指を舌で舐めてくる!かわいい…可愛すぎる!!
「ふっははは!めっちゃニヤけるやん!!」
「くっふふふ…」
えっ!?そんなニヤけてた!?恥ずかしい!!でも可愛いから仕方ない!!
「あっあまり笑わないでください///」
モフモフ久しぶりだからニヤけちゃったか…。まぁでもこの子が無事でよかった。
「でもウィンター家の女の子がこんな動けるとはな~!」
うっ…。それはどんな言い訳も通じん。品がないとか令嬢としてはしたないとか言われるんじゃ…。
「今度一回勝負しようや!」(ニカッ
…そうか。フユーン様はただ純粋に
「はい、ぜひ!」(ニコッ
私の力だけを見てるんだ。
その後、フィーア様がやってきて周りの人を落ち着かせ騒ぎは収まった。フユーン様とズハイ様には私のことは公にしないでとお願いした。チート能力もった悪役令嬢とかラスボスと変わらんしね。
普通に帰ろうとしたら玄関にヤヌア様がいてビックリした。迎えに来てくれたらしい。フユーン様とは手紙で日程を合わせまた会う約束をした。
これでフィーダー家にも私が能力を使える人だって伝わってしまった。ヒロインにも恐らく知られるだろう。
私と同じ転生者のヒロイン。ヒロインルートでエイム様とのハッピーエンドどころかその先のハーレムルートも狙うしまつ。
全クリマスターオタクとしてはキャラを困らせるのは見過ごせない。ヒロインになった人がどんな人か知らないけど、転生したからって忠実に動いてキャラを巻き込んでるのは許せない。
本音出せばかなり虚しい理由だけど、ストーリーに忠実にいったらキャラ達みんな死んじゃうんだよ!止めるためには悪役令嬢で転生者である私が、世界ごと変えるしかない!
私が絶対みんなを生かしてみせる!!
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