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人生を斜交いに生きた男 実話 13

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これを針に通すのだが今みたいな便利な糸通しグッズも無かったので片目で通すのはかなり目が疲れて難しい。約20程を1時間以上掛かってそれを高いとこに針を刺して、糸のほつれを修正し抜い易くなる様に。高級品は仮縫いや手縫いが多い手作業になるのだ。
 又、生地への線の引き方、鋏で切る練習とか、然し座っている作業と片目なので、細かい事には目が疲れて昼食後にはいつも眠たくなるのが辛くて、辛くて。主人も近くにいるので居眠りをする訳にもいかず手足を抓って気を紛らわしてたが眠気には勝てず毎日の事なので慣れたらカバー出来るのか?それとも決定的に無理な世界なのかと悩み、どうしたものか、それと座っているのも苦痛だし4、5日考え抜いてある日の夕食後に
 「私の目の事は聞いていますか?」
 「何かなぁー」
 右目が義眼である事を告白すると
 「えぇーそうなのか?全然そんな風に見えんが」
 「ハァー」
 主人の前で義眼を外すと、びっくりした顔で
 「上手く出来てるなぁー道理で針通しが遅いなぁーと思っていたんや」
 ロウ人形、博物館に展示されている目と同じプラスチック製で軽くて薄いので目に負担が少ないので自然体に見えるのだ。
 「ウム、片目では細かい作業は無理かもな⁉️」
 話し合った結果、次の日曜日に私のいた教会へ主人が出向き、他の仕事を探す事になったが、決まるまでは今の所にお世話に、、、10日後に神戸の三ノ宮近くの有名なベーカリーに住み込みで決まった。2日後に主人が荷物を車で運んでくれ、別れ際に餞別までくれたのだ。思いの外多いので驚いた。親もいない上に、片目でだけとは、この先の苦労に負けない様にと同情の分が加算されていたのかも。
 落ち着いてから牧師さんにお礼の電話を
 「世話をするのもこれで最後だから、後は自分1人で頑張ってくれ」
 大きな声で、、、元々地声が大きな人だった。
 「ありがとうございます」
 保証人にもなってくれたのだ。
 私らは仕事を選択する自由も少ない世界で生きて行かなければと思い知らされた。
   続く
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