短い時間の中で

かぼす

文字の大きさ
上 下
2 / 3
日常 青春

手紙に刻む君への想い

しおりを挟む
夏休みが始まったばかりのある日、君から突然告白された。その日は何も予定がなく、ただ一人で過ごしていた。君が急に現れて、言った。「1週間だけ、付き合ってみない?」その一言に驚いた。僕は男だし、恋愛対象は女だけだと思っていたから。でも、君は明るく微笑んでいた。少し考えてから、僕は軽い気持ちで答えた。「いいよ、遊び半分で。」

名前も知らないままで始まった僕たちの関係。自己紹介から始め、少しずつお互いを知っていった。君は映画に誘ってくれ、映画館では肩を寄せ合い、ポップコーンを二人でほおばる。周りの目を気にせず手をつなぎ、水族館や動物館を一緒に回った。帰ってからも電話をかけ合い、日常とは違う特別な時間が続いた。

君の笑顔がとても好きだった。どんなに疲れていても、君の笑顔を見ると元気が湧いてきた。毎日が少しずつ楽しくなり、君のことをもっと知りたいと思うようになった。最初はただの遊びだったけれど、だんだんと君に心を奪われていった。

そして最終日、僕は心の中で決めた。次は自分から告白しよう、君ともっと長く一緒にいたい。それが、僕の本当の気持ちだった。けれど、その日、君は現れなかった。待っても待っても、君は来なかった。約束していた場所で、ただひたすら君を待ち続けた。僕は驚き、不安になり、心が引き裂けそうだった。

数日後、君が殺されたことを知った。その知らせを受けたとき、世界が崩れ落ちるような気がした。数日後、君が殺される前に投函された手紙が届いた。それを読んだ僕は衝撃を受けた。君がいじめられていたことが書かれていた。そして、一度、僕が君を助けたことも思い出した。君が殴られそうになっていた日、僕は無意識にその場に飛び込んで、いじめていた人たちを追い払った。その後、君は足早に去り、会釈だけしていた。その日、顔はよく見えなかった。

その後、君はいじめに耐えきれず、居場所を失っていった。君は次第に生きる希望を失い、死にたいと考えるようになったことを、手紙で知った。しかし、君は死を選ぶ前に、僕を思い出してくれたという。君は「お礼を言わなければ未練が残る」と感じて、命を絶つのをやめた。そして、偶然僕を見つけて、ありがとうと言おうとしたが、「1週間付き合って」と言った瞬間、僕があっさり「いいよ」と答えると、君は少しずつ生きる希望を取り戻したのだと。

君が死を考えていたなんて思いもしなかった。でも、僕が君の生きる力になっていたことを知り、少し嬉しくなった。でも、それでも死んでほしくはなかった。

ニュースで報じられたのは、いじめが原因で君が命を落としたことだった。僕は君を救えなかったのかもしれない。もし、君がもっと心を開いてくれていたなら、僕はもっと君を助けられたかもしれない。でも、もう遅すぎた。僕は手紙を読んで、涙が止まらなかった。

あの日、君の温もりが今でも僕に残っている。君の死は、僕の心に消えることのない悲しみを刻み続けている。

あの1週間、僕たちが一緒に過ごした時間は、少しだけ幸せだった。その記憶が今でも僕を支えている。君の笑顔を思い出すたび、少しだけ前に進んでいる気がする。でも、それでもまだ、君を守れなかったことが許せない。君の死が、僕の心に深く刻まれている。

君へ。今更だけど、君を守ってあげられなくてごめんね。そして、ありがとう。君にしてあげたかったこと、伝えたかったことがたくさんある。でも、もう遅すぎる。それでも、君のことを忘れることはないよ。

届くはずのないこの手紙を、ポストに出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

デリバリー・デイジー

SoftCareer
キャラ文芸
ワケ有りデリヘル嬢デイジーさんの奮闘記。 これを読むと君もデリヘルに行きたくなるかも。いや、行くんじゃなくて呼ぶんだったわ……あっ、本作品はR-15ですが、デリヘル嬢は18歳にならないと呼んじゃだめだからね。 ※もちろん、内容は百%フィクションですよ!

大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。 でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。 けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。 同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。 そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?

AV研は今日もハレンチ

楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo? AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて―― 薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...