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34.やっつけたよ〜!

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 ――ピシッ……!!

「え……? 何の音?」
「テテ!」
「え? ブラン、何これ!?」

 ――パキン……!!

「うッ……ッ!!」
「王妃!」
 
 突然、結界が破られた! 同時に王妃様が崩れ落ちる様に膝をつかれたんだ。

「ばーちゃん! 結界が!?」
「これはまずいわ」
「テテ! ばーちゃん! 来るぞ!!」
「ブラン!」
「テテ! お祖母様! 聖女候補の養父が逃げてます!」

 姉上の言葉と同時に黒い衣装で黒いマントの男性が黒い靄と一緒に天井から現れた。



 村に入っていた部隊が村人達の解呪を終えていた。後は聖女候補の実家にいるだろう、捨て子だった聖女候補を育てた両親だけとなった。
 
 城では一段落だと思っていた時だった。
 妖精が姉に接触していた。
 聖女候補の実家に踏み込んでいた隊員達からの緊急連絡だ。
 どこを探しても養父が見当たらない。養母は部屋で真っ青な顔色で倒れていたそうだ……首から血を流して……


 姉が会場を突っ切って走って来る。

「お祖母様! テテ! 養母が首から血を流して倒れているのを保護したそうよ!」

 姉上、見れば分かるよ。空中に浮いている養父らしき男性。
 獲物を狙う鷲を思わせる様な鋭い目つきで、青白い肌とは不釣り合いに赤い唇に尖った犬歯が覗いている。そして蝙蝠の様な真っ黒の羽。燃えるような赤い目がギョロッと王妃様を支える陛下達を見ている。
 物語によく出てくるヴァンパイアそのものだ。

「ばーちゃん、ヤバイ……」
「テテ……まずいわね」

 ヴァンパイアは聖女である王妃様を睨みつけている。ロックオンだよ。マジで。でも、王妃様は結界を無理矢理破られた影響で意識がない。

「ばーちゃん、どうすんの……!?」
「テテ、どうしようか……!?」

 マジかよ……ばーちゃん頼りにしてんだけど。王妃様が駄目だとなると、もうばーちゃんと姉上とで何とかするしかないのに。
 幸い、僕達はまだ何もしていないから魔力はある。どうしよう……考えろ……!

「テテ、例の魔法陣をこの会場に出せるか?」
「ブラン、魔法陣だね!?」
「とーちゃんはとにかく皆を避難させて!」
「ブラン、分かった!」
「あなた、私は王妃様につくわ!」
 
 父上は、皆を避難させようと、母上は王妃様の元へと走る。

「テテ、どうだ?」
「ブラン、時間をちょうだい!」
「ばーちゃん! テテの準備ができるまで時間を稼いで! シャイニング・フィールドで闇属性を弱体化させるんだ!」
「ブラン、分かったわ! ラティア! イデス! 時間を稼ぐわよ!」
「お祖母様! 了解です! 姉上、私の剣に聖属性を!」

 僕はスクロールをいくつも同時展開させて魔法陣の構築を急ぐ。
 兄上が、腰につけていたポーチから剣を取り出す。僕が作ったマジックバッグだ。

「イデス、分かったわ!」

 ブランが亜空間にいてくれて良かった。咄嗟の事で、頭が真っ白になっていたよ。
 僕が魔法陣を構築するまで、ばーちゃんがシャイニングフィールドを展開してこの場での闇属性魔法を弱体化させる。
 姉上が兄上の剣に聖属性を付与し、その剣で兄上はヴァンパイアに斬り掛かって行く。
 同時に姉上は、ホーリーアローを撃ちまくっている。

「テテ、落ち着け。一発勝負だからな」
「うん、ブラン。分かってる」
 
 招待客を避難させていた父が戻って来ると同時に剣を抜いた。

「ラティア!」
「はい! お父様!」

 姉上が父上の剣にも聖属性を付与する。
 父上と兄上2人で、ヴァンパイアに向かって斬りつける。

「無駄だーーッ!!」

 ヴァンパイアが一気に魔力を放った。
 父上と兄上が吹き飛ばされてしまった。

「父上! 兄上!」
「テテ、大丈夫よ! 魔法陣に集中しなさい!」

 ばーちゃん、頼むよ。

「小賢しい! あと少しで王国を我が手にできたものを」

「あなた56年前の事件の村長ね!」
「ほう? 貴様はあれを知っているのか?」
「あの時もこうして隷属させていたのね!」
「貴様、あの時の男と同じ匂いがするな」
「私のお祖父様だからよ」
「クックックッ、忌々しい。また同じ一族に邪魔をされるとは」
「あなたの養女と大司教は眷属化したんでしょう」
「ふん、役立たず共か。あの時の復讐もできるかと思ったが、また邪魔されるとはな。貴様等一族は生かしておくと面倒そうだ」

 ヴァンパイアが片手をゆっくりと上げた。
 くそ、もう少しなのに……

「灰も残らない様に消してやろう」

「テテ!」
「ブラン、力を貸して!」
「おうよ!」

 ブランが僕の直ぐ横にきて魔力を補助してくれる。ドラゴンの魔力だ。これ以上のものはないよ。完璧だ。
 僕はヴァンパイアの頭上に特大の魔法陣を何重にも構築、展開した。
 魔法陣が、ヴォン……ヴォン……ヴォン……と響きながら輝き出す。

「ブラン、いくよ……」
「ああ、テテ。いくぞー!」
「「バスタード・スラッシュ」」

 念の為にブランと相談して用意していた、聖属性魔法の中でも最高位の攻撃魔法だ。魔法陣から白く輝く聖属性の光の大剣が何本も現れヴァンパイアの身体を貫いた。

「ギャァオォーー!!」

 ヴァンパイアの身体は貫かれたところからボロボロと崩れ落ち、とうとう跡形もなく消えていった。

「テティス、ブラン、よくやった!」
「父上……」
「テテ、よくやったよ!」
「ブラン、ありがとう。ブランのおかげだよ」
「ハハハ! いいって事よ!」
「テテ、やっと終わったわね」
「ばーちゃん、ありがとう」
「テテ、頑張ったわね」
「姉上、ありがとう」
「テテ、泣くな!」
「アハハ、兄上。カッコよかったですよ」
「義母上、ヴァンパイアだったと言う事は……」
「そうね……2人は灰になっただろうね……」

 そっか……そうだった。妖魔や淫魔なら主を倒せば正気に戻るけど……ヴァンパイアだと血を吸って眷属化されているから灰になってしまうんだった。

「テテ、仕方ない事よ」
「うん……ばーちゃん」

 そっか……仕方ないんだよな。僕達ではどうしようもないんだ。

 それから僕達は念の為、手分けして城の中を確認して回った。
 僕達が設置した精神異常完全無効の結界を発生させる魔道具は、このまま使う方が良いだろうと言う事で撤去せずに置いておく事にした。それによって城の中では精神異常は完全無効になる。

「あなた……!」
「ああ。終わった」

 母上がいる部屋にやってきた。王妃様ももう意識を取り戻してベッドに起き上がっておられた。
 王様、第1王子、第1王子妃、第2王子、ソフィアが王妃様についていた。

「レウス、ご苦労だった」
「兄上、テティスのおかげです」
「テティス、久しぶりだな。此度は助かったぞ」
「陛下、とんでもありません。皆が協力したからです」
「確かに今回の計画では皆が力をあわせてくれたからだ。しかし、テティスは1人何年も前からソフィアを守ろうとしてくれていただろう? ソフィアの父として礼を言う。ありがとう」
「陛下、勿体ないお言葉です」

 こうして、僕達の戦いは終わった……
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