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27.薬草が足らないよ~!

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「テティス、どう言う事だ?」
「父上、僕も確実な事は分かりません。が、普通にディスペルするだけだと解呪できないみたいです」
「ブラン、分かるの?」
「ばーちゃん、俺も想像だけどな。人間が使う隷属とは掛け方が違うんだよ」
「掛け方?」
「そう。人間は隷属をどう使う?」
「隷属は禁忌なのよ。それに今は使える人もいないはずよ。魔道具は残っているだろうけど」
「そっか。じゃあ説明しようか」

 ブランの説明だと、人間が隷属を使う時は他の魔法と同じように詠唱して1度で精神に干渉する。あと、ばーちゃんが言ってたように魔道具にしたりとかね。
 でも、今回の隷属は何度も何度も少しずつ重ね掛けをしているんだって。
 ほんの少しの魔力を言葉にのせて、他人からも本人にも気付かれないように少しずつ干渉していく。

「これはな、人間の魔法の使い方じゃないんだ。前にも言ったが、それこそ妖魔や淫魔、ヴァンパイアの使う手だ。
 1度で隷属するよりは確実に深く隷属できる。だから、人間のディスペルじゃあ解呪できないんだ」

 あー、忘れてたよねー。言葉に魔力をのせるって言ってたね。
 でも、その後ドラゴンアイで隷属だと分かったから、てっきりディスペルできるものだと思い込んでいたよ。

「テテ、今魔法陣を登録したんだろ?」
「うん、ブラン。だって絶対にまた必要になるでしょう?」
「そうだな、それスクロールを何本か同時展開して複数の人間を同時に解呪できるか?」
「うん。スクロールを複製しておけばいいだけだからね」
「テティス、王城でできるか?」
「父上、城でですか? まさか城全体を?」

 父が言うには、城で働いている人達の中にも大聖堂に通っている人がいるはずだと。
 そりゃそうだよね。普通にいるだろうね。その人達をすべて割り出すのは時間がかかる。それで、まとめて一度にできないかという事だね。

「ん~……どこかに集まって貰っていれば大丈夫かなぁ」
「テテ、近々母上が主催するパーティーがある。初代聖女の誕生を祝うという名目の、お見合いパーティーみたいなもんだけどな。そこに貴族の子息と令嬢が招待される。学園の生徒達もだ」

 パーティーか……そこに出席した人達を解呪するってことだよね。

「でもね、それだとパーティーに出席した人だけになっちゃう。王都の民達はどうするの?」
「テテ、それだな……」

 なんだよ、王子。無計画かよ。

「テテ、それポーションにできないか?」
「ブラン、解呪薬にするって事?」
「ああ、そうしたらテテじゃなくても解呪にまわれるだろ?」
「そっか、なるほど。できると思うよ」
「テテ、ブラン良い考えだ!」

 王子はなんにもしてないけどね~。
 してないどころか、聖水も飲んで隷属にまでかかってたもんね~。

「テテ、不可抗力だ」

 ええ~、そうかなぁ~。聖女候補に甘い事を言われて鼻の下伸ばしてたんじゃないの~?

「テティス、確かに不可抗力なんだ」

 あれ、父が庇ってるよ。
 なんでも、婚姻の儀の打ち合わせで大聖堂に言った時に紅茶を飲んだ。
 きっとそこに聖水が入っていたんだろうと。
 それから、大司教に聖女候補を紹介された。
 その時に隷属を受けたのだろうと。
 まあ、仕方ないよね。まさかそんな事をされるとは、普通は思わないもんね。

「でも、解呪するなら一気にだ」
「ブランどういう事? 同時にするという事なの?」
「ばーちゃん、同時と言うかだな。あれ、もしかして解呪されてる? て敵に気付かれないようにしないと駄目だろう? 対策されちゃうと意味がないよ」

 なるほど、そっか。でないと、またやられちゃうよね。ブラン、天才!

「ブワッハッハ! やっと分かったかよ、テテ!」

 あ、調子にのってる。ドヤッてるよ。小さいトカゲなのに。
 とにかく、見てみよう。もう手持ちの薬草があんまりないからね。
 僕はまたパチンと指を鳴らしてスクロールを出す。

「スクロールstart up……展開」

 スクロールが空中でスルスルと広がる。
 
「魔法陣展開……解析……表示」

 さっき、記録した魔法陣を解析してみる。
 僕がスクロールに手を伸ばし魔力を通す。

「あー、薬草が足らないや」
「テティ、何が足らないの?」
「ばーちゃん、トゥルシーとモーリュ。前ので全部使っちゃった」
「父上、採取に行きますか」
「イデス、先に売ってないか探してみよう」

 トゥルシーは、聖なる植物と言われていて解呪関係には必需品、モーリュは毒や魔法を打ち消すと言われている。どちらもメジャーな薬草なんだよ。
 だから、普通に売ってると思うよ。でもなぁ……

「父上、王都を出たとこの草原や森にはないですか?」
「あるとは思うが。テティス、行くのか?」
「はい。売っている薬草よりは、出来れば採取したいです。店に並んでいるうちに薬草に不純物が付着したり、なによりも鮮度が違いますから」
「じゃあ、テテ。私も行くわ」
「ばーちゃん、ありがとう」

 じゃ、早速明日ね。

「テテ、駄目よ。学園があるでしょう?」

 えー、母上。いいじゃん。早く薬草欲しいよぉ。

「どっちにしろ、パーティーを利用する事になるだろう。集まってくれるのだからな。都合が良い。それまでに作ればいい」
「はい、父上。じゃあ、ばーちゃん。次の休みに行こう」

 そっか、僕が引っ掛かっていたパーティーはこれだね。うん、きっとそうだ。
 その日、王子が帰ってから僕達はもう少し詳しく計画をたてた。
 明日は、ばーちゃんが姉上にも決めた事や分かった事を報告してくれる事になった。
 父と兄は聖女候補の身元調査だ。
 僕は、いつも通り学園へ。
 次の学園の休みまで、大きな変化もなく過ごした。
 そして、僕のお休みの日。予定通り、僕とばーちゃんは薬草採取に出ることにした。

 当日……

「お祖母様、テテ、おはよう!」

 げげっ、姉上だよ。やっぱ、おとなしくする人じゃないよね~。来ちゃったよ。

「姉上、どうしたのですか? その恰好は?」
「いやだわ、テテ。私も一緒に行くに決まってるじゃない」

 えー……行かなくていいよぉ。姉はまるで冒険者の様な恰好をしていた。まあ、冒険者にしては綺麗すぎるけど。

「あら、テテ。私がいると鑑定できるから便利よ?」
「姉上、僕もドラゴンアイを使えます」
「あら、そんな事いわないで。テテは私が一緒だと嫌なの? ねえ、い・や・なの?」
「いえ! ぜんぜん! 助かるなぁ~。あははは~」
「でしょう~。だからね、一緒に行くわ」

 ばーちゃん、なんで知らん顔してんの! もう! いいけど!
 と、言うことで、姉上も一緒に薬草採取へ向かう事になった。
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