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25.記憶があるみたいなんだよ~!

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 翌朝、僕はいつも通り学園に登校した。
 遠くに聖女候補御一行が見える。聖女候補はいつもと変わらないようだけど。まさか、学園が終わってからあんな集会を開いているなんて、誰も想像できないよね。

「テテ、おはよう」
「おはようございます」
「テティス様、おはようございます」
 
 ソフィアとリエン嬢とシャルロッテ嬢だ。

「お、おはよう」

 最近、3人一緒が多いみたいだね。
 仲良くしているみたいで、良かったよ。

「テティス様、先日はありがとうございました」
「シ、シャルロッテ嬢、僕はなにもしていないよ」
「いいえ、テティス様に話を聞いて頂いて、覚悟ができましたわ」
「リエン嬢。そんな大したものじゃないから」
「ふふふ。テテはいつも控えめね」

 もう、ソフィアは超かわゆいね~。

「あ、あれからどうなの? 聖女候補は」
「はい。言い掛かりもなくなったのですよ。スッキリしました!」

 ハハハ、シャルロッテ嬢。良かったよ。

「ニキティスは慌てて謝ってきましたけど、相手にしませんでした。親に言われて取り敢えず謝りに来ただけの様でしたから」

 あらら、そうなんだ。ニキティス、ダメダメだね。
 でも、もう少しの我慢だからね。

「テテ、今日テテの御父上が来られるそうよ」

 あー、うん。そうなんだけど。

「エーピオス兄上が呼ばれていたわ」
 
 うん、そうなんだよ。

「テテ、もう少しなんでしょう?」
「え……」

 ソフィア、相変わらず鋭いよね~。

「まあいいわ。もう少しだけおとなしくしておいてあげるわよ」

 うひょひょ、かぁ~わいいぃ!

「うふふ、テティス様は正直ですわね」
「本当に」

 あれれ? シャルロッテ嬢にリエン嬢、どういう意味かな?

「うふふ、内緒ですわ」

 なんだよなんだよ~。なんか僕からかわれてる?
 3人は優雅に去って行ったよ。残り香が良い匂いがした……気がする。

 僕は遠くにいる聖女候補御一行を見た。
 相変わらず、オネストとニキティスもいる。
 あと少しだ。あと少しで解放してあげるからね。
 正気に戻った時に、あの2人はどんな顔をするんだろう。
 不可抗力な部分もあるから、出来れば許してあげてほしいなぁ。

 その日、僕はいつも通り裏庭のベンチで一人昼を食べていた。
 ゲゲゲ! 久しぶりにやってきたよ。
 
「テティス様、今日もお一人なんですかぁ? 寂しいですわね~。聖女候補のあたしが一緒に食べて差し上げると言ってるのに、断るからですよぉ~」
 
 うげげ。いらないって言ってんじゃん。やっぱ、ホイホイ買ってきてやろうか! 聖女候補用て売ってるのかな? いや、一層の事自分で作っちゃおうか?

「テティス、お前リエンに何を言ったんだよ」

 はあ!? ニキティス、何言ってんだよ。僕はフォローしてやってんの!

「黙ってないでなんとか言えよ」

 また、ニキティスは僕に手を出そうとした……が、前に弾かれたのを思い出したのか途中で手を止めた。

「ニキティス、やめましょう。無意味です」

 オネスト、僕はね残念だよ。オネストなら取り込まれないかもと少し期待していたからね。

「ミーア、こんなやつ放っておいて行こう」

 おやおや、ニキティス。お前達の方からわざわざ来ておいて、酷い言い方だよね。
 その時、聖女候補が僕の耳元で囁いた。

「あなたの行動はイレギュラーなのよ。シナリオと違う行動をするから予定が狂ってしまったわ」

 え…………超驚いた。固まった。

 僕の耳がおかしいの?
 いやいや、そんな事はないよね。
 どういう事?
 今、なんて言ったの?
 まさか……まさかあの聖女候補は……僕と同じ前世の記憶があるんじゃないの……?

 午後の授業は耳に入らなかった。
 聖女候補の言葉が頭から離れなくて。
 授業が終わったら、僕は急いで家に帰った。


「おう、おかえり。テテ、どうしたんだ? 顔色が悪いぞ」

 僕の顔を覗き込みながら、ブランがふわりふわりと飛んでいる。

「ブラン……ばーちゃんは?」
「ああ、親父さん達と一緒に城に行ってるよ」

 そっか……父上達は今日、登城すると言っていたよな。
 ばーちゃんも一緒に行ったんだ。

「どうした? また何かあったのか?」
「ブラン……もしかしたら聖女候補も僕と同じ前世の記憶があるのかも知れない」
「前世の記憶って……聖女候補が国を乗っ取るってやつか?」
「そう……」
「なんだよそれ」

 そうなんだよ。びっくりするよね。
 僕もここにきてまさかの展開でびっくりしてるよ。

「とにかく、ばーちゃん達が帰ってきたら相談だ」

 うん、もちろんそうするよ。
 僕は他に何か忘れていることはないよね?
 自分の部屋に向かい歩きながら考える。
 ここまで来たら、あとは聖女候補と大司教が城で断罪をする事位しか残ってないよ。
 ん? 断罪……? いつ? どのシュチエーションで?

 ……

 …………

 ………………


 そうだよ、なんで気にしていなかったんだ?
 目の前の事に振り回されて、うっかりしていたよ。
 聖女候補と大司教が、王様や皆の前で断罪するんだ。
 誰をって?
 王様や王族全員だよ。
 あのパーティーは何のパーティーなんだろう?
 分かんない……だって、僕とソフィアは既に婚約破棄している。
 ゲームだと、僕とソフィアに関係するパーティーだったような……
 なんだっけ……
 そうだ、僕とソフィアの婚姻前のお披露目パーティーだ!
 僕達は卒業してすぐに婚姻する事になっていた。
 その前に、高位貴族や要職についている貴族達を集めて王妃様主催のパーティーが開催されるんだ。
 でも、今は婚約破棄していて、もちろん婚姻の予定はないよね。
 じゃあどうなるの?
 何か変わりのイベントが起こるのか?
 そんな事を考えながら自分の部屋のドアを開けた。

 ——ガチャ

「あら、テテおかえりなさい」

 あれ? ここ僕の部屋だよね? あれれ?

「母上、何をしているんですか? ここ、僕の部屋ですよね?」
「そうよ、テテのお部屋よね」

 いやいや、おかしいじゃない。なんで母上が普通に僕の部屋にいるの?
 しかも、メイドさん達もいてめっちゃ寛いでない?
 お茶飲みながら刺繍ですか? なんで?

「いいじゃない。今日はテテの部屋の気分だったのよ」

 いやいや、おかしいから。

「だって、テテは帰ってきたらすぐに自分のお部屋に引っ込むじゃない。お母様は寂しいの。一緒にお茶したりしたいのよ。それでね、テテの部屋で待っていたらいいのよ、て閃いたの。うふふ、良い考えでしょう?」

 いやいやいや、良くないからね。

「母上、僕はもう子供ではありませんよ?」
「あら、私にとってはいつまでも子供よ?」

 いや、だからと言ってね。もう17歳の息子の部屋に無断で入るのは止めてほしいなぁ。

「ほら、テテ座って。今日はなにがあったのかお母様にも話して欲しいわ」

 母はそう言ってニッコリと笑った。

「ブラン……」
「テテ、これはあれだ」

 なんだよ?

「母上もお前を心配しているんだ。それが少々暴走したって事だな」

 マジか。そんな理由じゃあ文句言えないじゃん。
 もう、仕方ないなぁ……

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