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24.解毒薬を作ったよ~!

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「ばーちゃん……」
「テテ、まさかあの事件の?」
「うん。僕はそう思うよ。聖女候補の義兄が留学してる、て事が引っかかるけどね」

 他国に出て、大聖堂の聖女候補と同じ事をしていたなら、それはかなりヤバイ。
 戦争が起きちゃうかも知れない。

「それは不味いな」
「はい、父上。かなりヤバイですよ」
「待て待て」

 ブラン、何だよ?

「家族全員が力を持っているとは考え難いんだ」

 ん? どうしてなの?

「言ったろう? 僕が知っているこの千年程だけでも、人と交わってきているって。だから、力を持って生まれてくる者と、そうでない者がいるんだ。
 人間同士でも、母親の髪色を持つか父親の髪色を持つかとかあるだろ? それと一緒だよ。
 それに、現在では純粋な妖魔や淫魔、ヴァンパイアは人間界には数少ないはずだよ」

 ん? またまたどうしてなの?

「決まってるさ。そりゃあ、自分達と同じ種族と暮らす方が楽だからだよ。人間界だと生き辛いんだ。
 どの種族でも同じだけど、半分別の種族の血が入った者や力のない者は締め出されてしまう。半端者だって言われてな。だから、人間界にいるんだ」

 そうなの? なんだかちょっと不憫だね。

「だからな、その聖女候補の兄か? もしかしたら、力がないから出ているのかも知れない。いや、力がないから出されたんだ」

 なるほど。ブラン、賢いんだね。知らなかったよ。

「テテ、失礼だな!」

 プクククク。

「その眷属化だが。テティス、何の眷属かは分からないのか?」

 そうなんだよ。そこだよ。

「父上、隠蔽されていて見る事ができませんでした」
「テテ、そんな筈はないぞ。ドラゴンアイで見れるはずだよ」
「ブラン、本当なんだ。眷属化は見れるんだ。でも、何の眷属なのかは文字化けみたいになっていて読み取れないんだよ」
「そんな筈はないんだ」

 でも、本当に見れなかったんだ。

「どう言う事だ……」

 ブラン?

「いや、ドラゴンアイで見れないなんて、訳が分からないんだよ。隠蔽……そうだな、態々隠蔽魔法で隠しているんだろう」

 そこまでしても隠したいと言う事なのかな? 僕には分からないよ。

「とにかく、現状で分かっている事を優先しよう。テティス、中毒に対してはどうする?」
「父上、直ぐに解毒薬を作ります」
「うむ……第2王子殿下を先ず解毒しなければ」
「はい、父上」
「解毒薬ができ次第、登城しよう」

 じゃあ、僕はこれから解毒薬の作成に取り掛かろうかな。
 
 先ずは毒の成分を中和分解排出する為の成分を見てみなきゃ。
 僕はパチンッと指を鳴らした。
 1本のスクロールが現れた。

「スクロールstart up……術式展開」

 スクロールが空中でスルスルと広がり、以前抽出しておいた毒の成分の小瓶の上に固定される

「分解……抽出……そして表示」

 僕がスクロールに手を伸ばし魔力を通し予め登録してあった術式を発動させる。
 次の瞬間、毒の成分を解毒する為の成分が表示される。
 手持ちの薬草で間に合うかなぁ。

「うん、大丈夫だ」

 スクロールが示した解毒薬作成の為の薬草数種類は、僕の手持ちのもので対応できそうだ。
 聖水は特殊な成分は使っていなかったからね。良かった。

「ブラン、手伝って」
「おうよ」

 僕はもう1本、スクロールを展開させる。

「スクロールstart up……展開」

 スクロールが空中でスルスルと広がり僕が用意した薬草の上に固定される。

「分離……抽出……」

 僕がスクロールに手を伸ばして魔力を通し予め登録してあった術式を発動させる。
 次の瞬間、キラキラと光を放ちながら薬効成分が分離され抽出されていく。

「ブラン」
「あいよ」

 ブランが抽出された成分に向かって手を出すと、抽出された薬効成分がまとめてガラスの容器の中に入っていく。
 もう1本、スクロールを展開させる。

「スクロールstart up……展開」

 スクロールが空中でスルスルと広がり、薬効成分の入ったガラス容器の上に固定される。
 僕は予め作成しておいた、薬効成分を定着させる為の純水を取り出す。
 薬師がポーション等を作成する場合も同じだけど、純水は必需品なんだよ。
 純水は高純度であればある程、薬効成分が溶け込みやすく効果が高くなる。
 錬金術だけでなく、薬師にとっても純水は基本中の基本なんだ。
 この純水に、さっき抽出した薬効成分を掛け合わせていく。
 
「混合……溶解」

 僕はスクロールに手を伸ばし魔力を通して予め登録してあった術式を発動させる。
 次の瞬間、キラキラと光を放ちながら数種類の成分が混ざり合い完全に純水に溶けていく。
 高濃度の解毒ポーションの出来上がりだ。

「ブラン」
「あいよ」

 ブランが手を前に出すと、出来上がった解毒薬が数本の小さな細いガラスの小瓶に分かれて入っていく。
 不純物が混ざらないように即座に封をする。

「できた」
「ほう……これが錬金術か」
「父上、解毒薬の完成です。ブラン、ありがとう」
「これぐらい、いいってことよ」

 僕は出来上がった解毒薬の1本を父上に手渡した。

「テティス、これはどれ位飲んで頂けば良い?」
「父上、ほんの数適です。例えば、お茶に4~5適入れて飲んで頂ければ大丈夫です。もちろん、そのまま飲んでも構いませんよ」
「そんな量で良いのか?」
「はい。薬草を直接調合したものとは違いますから」
「ほう……」

 父が、解毒薬の入ったガラスの小瓶をまじまじと見ている。

「テテ、素晴らしいね」
「兄上、ありがとうございます」
「ねえテテ、いつも飲む薬湯とはどう違うのかしら?」
「母上、薬湯は僕がさっき使った純水に薬草をそのまま混ぜ合わせてから抽出して作ったものです。これは、薬草の薬効成分のみを抽出して純水と掛け合わせてあります。ですから、純度も濃度も効果も違います」
「凄いのね。なのに錬金術でお薬を作る人がいないのはどうしてなのかしら?」
「母上、誰にでも出来ることではないですし、手間がかかるからでしょうか?」
「テテ、誰にでもできないのか?」
「兄上、それなりの魔力量と知識が必要です。」
「では、手間がかかるというのは? 見ていると、錬金術の方が早いように思えたけど? ほら、薬師の人達って薬草をゴリゴリしてるだろ?」
「兄上、スクロールです」
「ああ、その巻物?」
「はい。これを作成するのに手間と知識と魔力量が必要です。一度作成してしまえば、後は楽なのですけどね」
「なるほど……」
「テテは領地で古書を読み解きながら、自分で勉強したのよ。テテじゃなきゃできないわ」

 ばーちゃん、そんなに褒められると照れちゃうよ。エヘヘ。
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