上 下
13 / 35

13.王子もかよ〜!

しおりを挟む
 翌日、父と兄とばーちゃんは、王様に報告する為に城に行った。
 僕はいつも通り、学園だ。

「いい? 忘れずにネックレスをつけて行くのよ! 効果も検証したいんだからね」

 はいはい。忘れずにつけていくよ。てか、僕としては聖女候補に会わない事を祈るけど。
 そんな僕の思いなんて、いつも裏切られてしまうのさ。本当、いつもだよ。なんで来るんだよ! マジ、超ウザイ!

「テティス様、こんにちはッ!」

 僕が、いつもの様に裏庭のベンチで1人昼を食べていた。
 来やがったよ、ゾロゾロと。聖女候補御一行様だよ。やっぱホイホイ買っておこうかな。
 とりあえず、無視だよね。無視、無視。

「………… 」
「テティス、聞こえているだろう? 無視するなよ」

 また、ニキティスだよ。こいつ何なんだよ。下僕なの!?

「ぼ、僕は昼を食べてるんだ。邪魔しないでほしい」
「一人で寂しく食べても美味しくないでしょうぅ? あたしが、聖女候補のあたしが一緒に食べてあげますよッ! ねッ!」

 ピョコンとツインテールを揺らして聖女候補が言う。
 だから、お前らを避けてるって分かってよ! ピョコンピョコン揺らすなよ! ウザイんだから! ツインテールを頭の上で縛って風船でもつけてやろうか!

「い、いらない。迷惑」
「テティス、お前ミーアが優しく言ってくれてるのに、その態度は何だよ!」

 ニキティスが僕を手で突こうとした。

 ――――バシッ!

 目に見えない何かに弾かれた! 何だ!? どうなってんの!?

「痛ッ……」
「何? 今、ニキティスを弾いた!?」

 オネストが驚いて声をあげた。

「テティス、卑怯だぞ! 何なんだよ!?」

 知らないよ! 僕だって聞きたいよ!

「やめてッ! 暴力はいけないわッ! あたしの為に喧嘩なんてしないでぇッ!」

 もう、頭がわいてんの? 怒る気力もなくなっちゃった。脱力だよ。

「ミーア、行きましょう。テティスに構う必要はありませんよ」

 オネスト、お前達ホント何様なの? お前たちが勝手に来たんだろ?
 でも、お陰で聖女候補御一行は去って行った。良かったぁ。
 
 あれ? そう言えば気持ち悪くならなかった。
 ばーちゃん作のペンダントのお陰かな? スゲーじゃん! ばーちゃん天才じゃん! 帰ったら報告しなきゃ!
 なんて、僕は呑気な事を考えていた。


 俺が学園から戻っても、ばーちゃん達はまだ帰ってなかった。
 夕食の時間になって、やっとばーちゃんと父と兄が帰ってきた。

「ばーちゃん、おかえり!」
「ああ、テテ。ただいま」

 あれ? 疲れてる? いつもの勢いがないよ?
 あれれ? 父も兄もだ。どうしたの? 城で何があったの?

「とにかく、先に夕食にしよう。義母上、その後に話しましょう」
「そうね」

 やだな、気になるじゃん。食べながら話してよ。

「テテ、後でな」
「兄上、分かりました」

 仕方ない。大人しく食べよう。超気になるけど。

 食事のあと、父の執務室に皆が集まった。
 あ、そうだ! 忘れてた!

「ばーちゃん! あのネックレス、めちゃ効果があったよ!」
「テテ、そうなの?」
「うん! 気持ち悪くならなかった!」
「そう! じゃあ効果はあるのね」

 それどころか! と、俺はニキティスを弾いた話しをした。

「凄いね。ばーちゃんそんな効果があるなんて言ってなかったらビックリしたよ」
「テテ、私は精神異常の完全防御しか付与してないわよ」
「え? じゃあ何で?」
「あー、多分それ俺だ」

 えぇッ!? なんでブランが!?

「いや、試しにと思ってさぁ。テテに俺の加護を授けておいたんだ」
「ブラン、加護って!」
「ばーちゃん、怒るなよ?」
「怒る訳ないでしょ。ありがとう。テテを守ってくれたのね」
「まあ、な。テテは友達だしな。俺もテテに助けられたし」

 ブラン、そんな力持ってたの!? 凄いじゃん!

「俺、まだ人間に加護を授けた事なんてないからさぁ。上手くできるか半信半疑だったんだけど。
 でも、あれだよ。ばーちゃん、俺の加護で弾いたのならその聖女候補の力は絶対に『聖』じゃないぜ?」
「そうね」

 良いものじゃないのは、最初から分かってたじゃん。今更だよ。

「テテ、ニキティスは聖女候補についているのか?」
「はい、兄上。まるで護衛の様に」
「お祖母様、どういう事でしょう?」

 意味不明……

「あれだよ。干渉されてるから毒されてんだよ。悪いもんに侵されてるんだ。だから、そいつを俺の加護が弾いたんだ」
「ブラン、そうなるわね」

 マジ? 染まっちゃう感じ?

「早いとこなんとかしないと、その人間達は元に戻れなくなるぞ?」

 マジ!? ブラン、怖い事言わないで!

「テテ、大マジだよ。人間て精神を乗っ取られたらヤバイんだよ。精神と魂は直結してるんだ。脆いんだ」
「ブラン、やはり崩壊する?」
「ばーちゃん、最悪は狂って死ぬ」

 待って待って! 僕、ニキティスもオネストも仲良くはないけど、恨みもないから。助けようよ、なんとかしてさ。

「その、男子生徒たちの事も王に報告してきた」
「父上」
「将来、この国を担う者達だからな」

 まあ、確かに。このままだと無理だけどね。

「それでだ、テティス」
「はい、父上」
「明後日、第2王子が学園を視察される」
「え、何で? こんな時に」
「実はその話もあったんだ。王は、第2王子も聖女候補の精神干渉を受けているとお思いだ」

 マジなのー! 何でよー! 一体どこで!?

「テテ、婚姻の儀の打ち合わせだ」
「あー…… 」

 そっかー! 大聖堂で打ち合わせをするもんね。その時かー。

 父の話によると……
 この国の第2王子と隣国の第3王女は婚約している。これも、決して政略結婚ではない。第2王子がまだ小さい頃、王に付いて隣国に外交で訪れた際に第3王女と恋に落ちたんだ。
 よくあるお話みたいにさ、身分に差がある者と恋に落ちたりしないんだよ。接点がないからね、そうそう物語みたいにはならないんだよ。
 それに、余りに身分差のある婚姻はうまくいかないと分かっているから、どっちも避けるのが普通なんだよ。誰だって不幸にはなりたくないからね。
 第2王子は婚姻の儀の打ち合わせで、大聖堂に行った。王女は今年自国の学園を卒業するらしい。王女の卒業を待っての婚姻なので、王子1人で行ったんだそうだよ。その時に、大司教は王子に聖女候補を紹介した。
 それから、聖女候補は第2王子と暫く話していたらしい。
 思えば、その頃から第2王子の言動がおかしくなったそうだ。
 まず、大聖堂へ日参する様になった。聖女候補は大聖堂にいるとでも思ったのだろうね。
 残念ながら、聖女候補は学園の寮に入っていて大聖堂にはいない。
 行動が露骨だよね。聖女候補に会うために大聖堂へ日参するなんて。
 今は離れているとはいえ、婚約者がいるのにさぁ。

「あ、父上。じゃあ、第2王子が学園に視察に来られるのは、まさか!」
「そうだ、テティス。聖女候補に会う為だろう」

 単純明解だよねー。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】聖女は妖精に隠される ~召喚されてきたのに追放されました。婚約破棄上等!~

ファンタジー
神獣ペガサスの住む泉の近くに、隣国から追放された聖女が住み着いた。 ある時、ケガを負った騎士を連れ帰ったペガサス。 聖女はその治療を引き受ける。 目が覚めた騎士は…… 身分差を乗り越えたハッピーエンドのお話です。 しかし結構なゲスい話になってしまいました。 ヒーローやヒロインのような人は、いません。わりとみんな自分勝手だなって、書き終わってから思いました。 ですがそれもまた、ありなのではないかな、と。 ※※※性表現や流血表現がある話には「※」を付けますのでご注意ください。 ◆注意 ・オリジナル恋愛ファンタジーです! ・ファンタジー=何でもあり! ・サラッと読もう! ・誤字脱字誤変換御免 2023年4月5日 完結しました。 ありがとうございました! --4月7日-- 感想ありがとうございます。 削除希望されていた方のものは削除させていただきました。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢、前世の記憶を駆使してダイエットする~自立しようと思っているのに気がついたら溺愛されてました~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
デブだからといって婚約破棄された伯爵令嬢エヴァンジェリンは、その直後に前世の記憶を思い出す。 かつてダイエットオタクだった記憶を頼りに伯爵領でダイエット。 ついでに魔法を極めて自立しちゃいます! 師匠の変人魔導師とケンカしたりイチャイチャしたりしながらのスローライフの筈がいろんなゴタゴタに巻き込まれたり。 痩せたからってよりを戻そうとする元婚約者から逃げるために偽装婚約してみたり。 波乱万丈な転生ライフです。 エブリスタにも掲載しています。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

処理中です...