僕、婚約破棄されちゃったよ〜!(仮)

撫羽

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12.なんて事だよ〜!

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 ばーちゃんが調べた村で使われただろう、禁忌の魔術。言葉に魔力をのせて、精神を操る。

『禁忌』
『言葉に魔力をのせる』

 なんなんだろ……全然想像もつかないや。

「ばーちゃん、それからその村長一家は見つかってないの?」
「ああ。テテ、そうなのよ。全く消息がつかめなかった。まるで、煙のように消えたのよ」

 なんか、怖いな。不気味だよ。

「お祖母様、私の掴んだ情報ですが」
「イデス、何が分かったの?」
「大司教がどこで聖女候補を見つけたか調べがつきました」

 おお! 凄いじゃん。ちょっと興味あるよね。

「私も実際に聖女候補を見たけど、大した事ないでしょう? マナーも恥じらいもないんだから」

 うんうん。ばーちゃん、その通りだよ。もっと言って。

「お祖母様、私はその村の事件を知りませんでした」
「イデス?」
「偶然とは言えないと思います」
「どういう事なの? まさか……」
「その、まさかです。大司教はその事件のあった村で聖女候補と出会ったようです。
 今は、大司教が後ろ盾になって大聖堂預かりになってますが、彼女の出身はその村です。家は村民の集落から離れた、山手にポツンと建っている古い家でした」

 何? ばーちゃんの言ってた事件に関係があるって事なの?

「とても偶然とは思えないわね」
「はい、お祖母様。村民に聞き込みしてきました。両親と彼女の3人暮らしだったようです。
 村の老人の話によると、兄らしき男性がいたそうなのですが、今はその家にはいないそうです。
 隣国に留学しているらしいとしか分かりませんでした」
「両親と男の子……」
「ばーちゃん?」
「いや、まさか。何十年も前の事件なのよ」

 ばーちゃん、何を考えてんの?

「事件の村長一家がね、両親と男の子だったのよ」

 ばーちゃんが子供の頃の事件なんだから、もしも生きているとしたらその男の子かな。ばーちゃんと同じ様に孫がいるのかも知れない。
 いい感じの歳なんじゃない? 聖女候補とさ。
 そう考えるのが普通じゃないかな?

「そうね、テティ。うん、そうだわ」

 ばーちゃん? だから、何考えてんの?

「いえ、私の頭がちょっと暴走していたみたいだわ」
「お祖母様、当時の一家がそのまま生き残っているとは考えられません」
「イデス、分かっているわ」
「仮定ですが、その村に逃げたとします」

 え? どうして? もしも関係者なら村から離れて暮らさない? 普通はさ。
 追手があるだろう事も考えて、出来るだけ離れないかな?

「テテ、逆だよ。多分、逆なんだ」
「兄上、意味が分かりません」
「イデス……まさか」
「お祖母様、私の想像です。ここからは、私の想像だという前提で聞いて下さい」
 
 兄の想像とは……
 牢を脱獄して、一家が逃げた先は自分達が暮らしていた村だったとする。では、何故また戻ったのか?
 1番先に調べられるだろう事は分かりきっているのに、何故危険を冒しても元の村に戻ったのか?そして、案の定逃げ延びているのは何故なのか?

「村民が何も話さないと分かっていたからです」

 役人や兵が調べに来たとしても、村民は自分達の事を突きだしたりしないと分かっていたからだと兄は推理した。
 何故なら……

「村民は、やはり精神干渉を受けていたのですよ」
「イデス、私もあの村の人達は皆、精神干渉を受けていたのだろうと思うわ。でも、村長一家が戻ってきている事も言わなかったと言いたいの?」
「お祖母様、そう考えると辻褄があいませんか?
 告発までしなかったとしても、普通は不満が出ますよ。餓死する者まで出ていたのでしょう? そんな酷い状況で、なにも思わない、訴えないなんて普通じゃないですよ。おかしいです。
 何も言わないと分かっていたのですよ。だから、お祖母様のお祖父様も精神干渉を疑ったのでしょう?
 そこまでの精神干渉を受けていたのです。しかも、解呪されていないのです。1番安全な逃亡先だとは思いませんか?」

 兄の話しを聞いて、僕はゾッとした。
 そんな事があるのかと。今、聖女候補がしている事はとんでもない事なのだと思った。

「お祖母様、確かに『禁忌』です。しかし、今その禁忌を使われているかも知れないのです。
 人の意識を支配するのです。人の尊厳を無視しています。絶対にやってはいけない事です。国を支配する事だって可能です」

 しかも、聖女候補の元にいる学生達は次代の国の要職を担うであろう者達なんだ。これは、放ってはおけない。

「解呪方法を探さないと」
「お祖母様、当時はどうだったのですか?」

 そうだよ。まさか、そのまま放ったままなんて事はないよね?

「当時、村長一家を逃した牢番をお祖父さん達が解呪しようとしたのよ」
「お祖母様、その方法は!?」
「できなかったのよ」
「「えっ?」」

 なんだって!?

「だから、お祖父さんが色んな手を尽くして解呪しようとしたんだけど、できなかったのよ」

 そんな……!? じゃあ、どうすんの!?

「テテ、あなたに掛かっているかも知れないわ。」

 意味が分かんない。ばーちゃん、僕の肩を掴まないで。

「当時は聖属性魔法に長けたものがいなかった。私もまだ子供だったしね。だから、出来なかったのかも知れない。解呪するには聖属性魔法が1番だから。でも今は違うわ。私もいる。私より強い聖属性魔法を持ったテテがいる。ラティもいるわ。」

 マジ!? 僕、なんにも出来ないよ? ばーちゃんと、姉上に頑張ってもらうしかないよ。

「人間が使った古代魔法なら、人間に解呪できない筈がないんだよ。その爺さんの爺さんは本当に魔力量が足らなかっただけじゃないか?」

 ブランはそう言う。でもなぁ、僕あんまり自信ないよ?

「テテ、私より強力な聖属性を持つのに、何を怖気付いてるの」
「ばーちゃん、僕そんなに? そんな事ないよ?」
「使える聖属性魔法の種類が同じだったとしても、魔力量が違うわ。ブランが言う様に、解呪するには魔力量も必要なのよ。明日、城に行ってくるわ」
「義母上、私も一緒に行きますよ」

 父だ! いつの間に!?

「話は聞いてました。これは王にご報告しなければなりません。我々だけで動いて良いものではない。王にご報告しますので、義母上もお願いします」
「分かったわ。ついでに禁書の閲覧許可も願い出るわ」

 とんでもない事になってきちゃった。
 明日、ばーちゃん達の帰りを待つしかないけど、解呪方法が見つかる事を祈るよ。
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