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7.嫌われ者かよ〜!

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「止めてッ! あたしの為に喧嘩しないでぇッ!」

 うげッ! キモッ! キモォッ!! 駄目だ、また悪寒がぁ! おまけに話が全然通じない。

「ぅぷッ……」
「テテ、あなた顔色が悪いわ」

 ああ、またソフィアが僕の心配をしてくれてるぅ! くぅ~ッ! キュンキュンするよぉ!!

「行きましょうぅ。あたしの為に喧嘩なんてしてほしくないわッ! ねッ!」

 この、エセ聖女候補がまだ言うか!
 取り敢えず、聖女候補御一行は去って行ったから良かったよ。

「テティス様、ありがとうございました」

 シャルロッテ嬢だよ。君も真っ青な顔をしているよ。ソフィア、シャルロッテ嬢をお願い。

「テテ、ありがとう。シャル、あなたも顔色が真っ青だわ。休みましょう」
「ソフィア様、ありがとうございます」
「テテ、あなたもよ」
「ぼ、僕は平気。それよりシャルロッテ嬢を」
「ええ。分かったわ。テテ、ありがとう」

 エヘヘ。いいよ~。どうって事ないよ。
 ソフィアに支えられながら、シャルロッテ嬢が校舎に入って行った。

 ホント、僕の婚約者は何て可愛いんだろう! あ、元だけどね……(泣
 でも、何だろう? この悪寒は。領地のばーちゃんに手紙で聞こうかなぁ?
 僕は、そんな事を考えながら帰宅した。


「テテ!」
「うわッ! ばーちゃん!」
「コラッ!」

 ――バシッ!

「イテッ!! なんだよ! 何で叩くんだよ!」
「ブヒャヒャヒャ!」

 腹を抱えて爆笑しているのは、白いドラゴンのブランだ。
 帰宅した僕を領地にいるはずの祖母が待ち構えていた。『ばーちゃん』と言った僕の背中を思い切り叩かれちゃった!

「テテ、ばーちゃんじゃないでしょう? 何て呼ぶか教えなかったかな?」
「はい、お祖母様。すみません」

 クソッ、それで叩くとか暴力反対!

「ん? テテ、何か文句でもあるのかしら?」
「いえ、何もありましぇん」
「相変わらずコエーよな」

 うん、ブラン。怖いよね。思いっきり睨まれちゃったよー。思わず噛んじゃったよー。怖いんだよー。

「何でばー……お祖母様がいるの?」
「年度始まりだからよ。去年の年間収支の報告に来たのよ」

 え? そんなの今迄やってたっけ?

「テテ、お祖母様はお前を心配して来て下さったんだ」
「イデス! 余計な事を言うんじゃないわ! 心配なんてしてないんだからね!」
「アハハハ。お祖母様、いい歳してツンデレは需要がありませんよ?」

 ――バシッ!

「イッテー!」

 ばーちゃんに、余計な事を言って背中を叩かれているのは僕の兄だ。
 イデス・マーシア 19歳。去年、学園を卒業して今は父の後を継ぐべく父に付いて勉強中だ。
 金髪をウルフカットみたいにしていて青紫の瞳のイケメンだ。頼りになる兄だよ。
 性格も明るいしノリも良いので単細胞と思われがちだけど、実は父の性格を引き継いでいて用心深く思慮深い。どちらかと言うと頭脳派なんだ。
 剣が得意な事の方が目立っていて頭脳派なんて誰も思わない。また兄はそれを逆に利用している。
 父と兄は絶対、敵に回しては駄目なやつだよ。

「ばーちゃん! 手紙出そうかと思っていたんだ!」

 ――バシッ!

「テテ、学習しなよ? 俺なんて学習しまくりだよ?」

 ブラン、うるさいよ!

「イッテ! お祖母様!」
「よし! 何かあったの?」
「うん、あのさぁ」

 僕は聖女候補の現状と、聖女候補に会った時の僕の症状を説明した。

「お前、何かに反応してんじゃないか?」
「兄上、何かとは何ですか?」
「そうだな。スキルとか魔法とかが無難なとこじゃないか?」
「ん……そうね。イデスの言う事は一理あるわね」
「うんうん。なんかテテ、嫌な感じするぞ?」

 ブランが僕の周りをパタパタと飛びながら言う。ブランまでそんな事言う? 怖いじゃん。
 スキルに魔法か…… でも、8歳の時もそうだったよ? 悪寒がして寝込んだんだ。

「あの3日も起きなかった時か?」
「うん。兄上、そうです」
「3日?」
「お祖母様、テテが8歳の頃です。初めて聖女候補と顔合わせをした時に倒れたんです。3日間、目が覚めなかったんですよ」
「なんだって? それは初耳なんだけど、テテ?」
「そうだっけ?」

 ――バシッ!

「イテッ!」

 だからさぁ、本気じゃないにしてもバシバシ背中を叩くのはやめてよね!

「テテ、大事な事じゃない!」
「ばーちゃんそうなの?」
「多分だけどね、その時に何か精神攻撃をされた可能性があるわね。それとも、常時発動の何かなのかしら?」

 え? 何? 超怖いんだけど。

「俺もそう思うぞ」

 ブランに分かるの?

「テテ、小さくなってても俺はドラゴンだぞ」

 それ、関係あんの?

「しかし、そうでも考えないとおかしいだろ? この短期間でそれだけ攻略して何人も従わせるなんて、どんだけだよ? まるで妖魔かヴァンパイアだよ。」

 うわ、兄から怖いワードが出てきた!

「テテ、冗談じゃなくて真剣な話しよ。本当にそうかも知れない。でないと、テテが反応する訳ないわね」

 ばーちゃん、僕が反応ってどう言う事なの? 僕、全然分かんないよ。

「テテは聖属性の魔力が強くて精神異常耐性も高いのよ。だから、そのテテにそれだけの反応が出たと言う事は良くないわね」

 んー、精神異常耐性は分かるけど、僕って聖属性が強いの? ばーちゃんと一緒で聖属性魔法が使えるだけだと思ってたよ。

「テテ、お前さぁ。傷付いた俺をだよ、ドラゴンを一瞬で治してしまう程の強い聖属性魔法が使えるんだ。普通に考えて強いに決まってるだろ?」

 ブラン、成る程。そうか、そうなんだ。じゃあさ、聖女候補は聖女なんかじゃないじゃんか!

「イデス、その聖女候補だけど身元は確かなの?」
「お祖母様、大司教様が後楯なんです。それ以上の事は分かりませんよ」
「今の大司教は…… ああ、あのじーさんね。レウスに調べてもらう必要があるわね」

 レウスてのは僕の父の事だね。

「ばーちゃん、大司教様知ってんの?」
「テテ、知ってるもなにも同級生よ」

 マジ!? ばーちゃんの繋がり恐るべし!

「テテ、あいつは侮れないわよ。昔から自分が伸し上がる事ばかり考えていたズル賢い奴なのよ。爺さまなんて大喧嘩した事があるわ」

 爺さまて、ばーちゃんの旦那さんだよ。ばーちゃんの旦那さんて、スタンピードからこの国を救った英雄の一人じゃん。

「あのスタンピードの時に奴と対立していた者達が何人も亡くなったのよ。今は奴の天下でしょうね」

 なんだか話が大きくなってきた。僕、ちょっと怖いんだけど。
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