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4.久しぶりだよ〜!

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「テテー! どうしたの!?  可愛いお目々が見えないじゃない!」

 約5年ぶりに帰った僕に、姉はそう言いながら抱きついてきた。

「姉様、抱きつくのは止めて下さい」
「やだ、テテが冷たいわ! 反抗期だわ! 今まで姉様は我慢していたのに! テテの帰りをずっと待っていたのに!」

 はいはーい。そんな事言うけど、ちゃっかり旦那さんを見つけてるじゃない。
 姉は学園の卒業と同時に婚姻が決まっていた。

「姉様、迫ったらしいですね」
「やだわ、テテ。人聞きの悪い事を言わないで。両想いよ、両想い」
「へえ~」

 まあ、なんでもいいけど。

「テテ、母様にちゃんとお顔を見せてちょうだい」
「母様……」

 僕は前髪を上げ、家族に素顔を見せた。
 父様、母様、僕は大丈夫だよ。ちゃんと剣も魔法も勉強も頑張ってきたからね。強くなったんだ。ただいま。父様、母様。

「テティス、その目なら大丈夫だな。安心した」
「あなた、そうね」
「父様、母様……心配かけました」
「親が子供の心配をするのは当然だ」
「そうよ。テテ、おかえりなさい。頑張ったわね」
「父様、母様、ありがとうございます」

 有難いよ。良い両親だ。気持ちよく僕を送り出してくれてありがとう。

「テテ、その髪は何か考えがあるの?」
「兄様、まあ。あるような~ないような?」
「僕は止めないけど。ソフィア様は引くかもね?」
「ふふふ……」

 それを狙っているんだよ。イデスくん。
 領地にいる間、ソフィアには僕から文は出さなかった。誕生日にだけは、手書きのカードを送った。だって、我慢できなかったんだよぉ。可愛い可愛いソフィアの誕生日だよ。本当はお祭りでも大々的に開催したい位だよ。
 そこをグッと堪えてカード1枚だけ。きっと、ソフィアは愛想を尽かしているだろうなぁ。悲しいけど。
 くぅーー! ソフィアの為だよ! 頑張れ、僕!

「テテ、もう一つ報告があるでしょう?」
「ばーちゃん……」

 ――バシッ!

「イテッ! お祖母様!」
「よしッ」

 何が『よしッ』だよ! バシバシ背中を叩かないで! まあ本気ではないし、もう慣れちゃったけど。

「テテ、報告って何かしら?」
「母様。驚かないで下さい。父様も姉様も兄様もです」

 一応、前振りはしておこう。うん。

「ブラン、出てきていいよ」
「はいな~!」

 シュルンッとキラキラ光る風と共に現れた、全身白い鱗に蝙蝠の様な羽のある小さなトカゲ……?

「ブランでッス! はつよろ~!」

 軽ッ! 軽すぎる! 片手を上げてウインクまでしている。テヘペロかよ!

「え? え? テテ、トカゲ?」

 うん。姉様、そう思っちゃうよねー。小さいからね。

「なんでだよッ! 俺はドラゴンだ!」

 自慢げに胸を張ってるけど、小さいからトカゲにしか見えないんだよね。羽があるトカゲさん。

「どこらへんが?」

 うんうん。兄様、そうだよねー。軽いからね。

「全部だよ! ぜ・ん・ぶ!! 」
「プハハハッ!! 」
「テテ! 笑ってないでちゃんと紹介してよ!」
「ブラン、ごめんごめん。姉様、兄様。本当に白いドラゴンです。今は小さくなっているので、このサイズです。」
「まあ! そうなの!? 」

 姉様の目がキラキラし出したよ。父と母は何故か生温かい目で見ている。
 なんで? 本当にドラゴンなんだよ。

「ばーちゃんも言ってよ~!」
「ブラン、ばーちゃんは駄目」
「えぇ~、だってぇばーちゃんはばーちゃんだしぃ~!」

 ばーちゃんが、手を上げた。

「やめて! ごめんなさい! ばーちゃん俺には本気で叩くから! 小さくなってる俺は吹っ飛んじゃうよー!」
「ブラン」
「はい! お祖母様!」
「よしッ」

 ばーちゃん、ドラゴンを手懐けてるよ。笑えるー!

「テテ! ちゃんと説明してよ!」
「はいはい。実は……」

 ブランとの出会いを話した。
 領地の外れの森の中で見つけたんだ。
 あの時は、ブランがフラフラと調子に乗って飛んでいたら、知らないうちにブラックドラゴンの縄張りに入っちゃった事に気付かなかったんだって。
 白い若造が何してくれてんだ! と、排除に出てきたブラックドラゴンに追いかけられ傷だらけになって倒れているところを僕が助けたんだ。
 サクッと回復魔法でね。それからの付き合いだよ。
 どうやら、人間の食事が気に入ったらしくて、ずっと僕の側にいる。ちょっとチャラくて軽いドラゴン。
 それでも、ドラゴンだから魔力は計り知れない。時々、俺をフォローしてくれる。まあ、今は小さくなっているから、トカゲにしか見えないんだけどね。

「本当に……信じられん」
「あなた、でも可愛いわ」
「へぇ~」

 父様、母様、兄様が興味津々だね。
 姉様は……隙があれば捕まえようと狙っている。

「テテと一緒にいるから、世話んなりまッス!!  俺、甘いの好きだからシクヨロ~!」

 本当にドラゴンかよ!!  て、誰もが疑っちゃうよねー。

「いや、テテ。俺マジでドラゴンだからね」

 うん。分かってるよ。 ブハハハ!


 そんなこんなで、入学式当日。ソフィアは僕を見て驚いてフリーズしていた。
 フリーズしていても、制服姿のソフィアは超かわゆぃぃ! 真新しい制服が超似合っているよ! 口元が緩んでしまうぅ。プルプルしちゃうよ。我慢だ、我慢。

 前髪で目を隠して、それでも目線を外し、仕上げに少し猫背気味に立つ。モサイ僕の完成形だよ。ブフフッ。

「テテ、あの……久しぶりね。元気だったかしら?」
「え、え? うん。まあ」

 キョドり気味に話す。完璧じゃない?

 なのに、ソフィアはいつになっても婚姻破棄だと言ってこなかったんだ。
 何故? どうして? 僕、何か間違えちゃった?

「馬鹿ね。ソフィア様はテテの見た目に惹かれた訳じゃない、て事よ。喜びなさい」

 母様、確かに嬉しいんだけど……超うれぴいけどぉ!! それじゃ駄目なんだよ。婚約破棄してくれないとぉぉぉ!!
 僕の大事なソフィアが、あの聖女候補の毒牙にかかってしまうじゃない!!
 
 僕が、嬉しいやら焦ったいやらで悶えている間に、僕達は4学年になった。
 ここで、お話の1番最初に戻るんだ。ちょっと長かったね。
 新入生歓迎パーティーで、やっとソフィアは婚約破棄を言い出した。
 長かった。ホント、長かったよ。ソフィアちゃん。
 愛しのソフィアに婚約破棄を言い渡されて、やっぱショックだった。うん、悲しかったよ。望んだ事だけど。僕がそう仕向けたんだけど。
 でもさ、これでソフィアは聖女候補にロックオンされる事はなくなるからね。少し、安心もしたんだ。
 僕がソフィアとの婚約破棄にこだわる理由は、前世のゲームでは僕に近付く聖女候補をソフィアが虐めていると理由をつけられて断罪されるからなんだ。
 シナリオでは、僕が婚約破棄を言い渡して、聖女候補と一緒にソフィアを断罪するんだ。
 だから、婚約していなければ断罪する理由はないからね。僕は絶対に断罪なんてしないよ。でもね、万が一てあるでしょ? シナリオの強制力って言うの?
 だから、一つでもゲームと違う事実を作っておきたかったんだ。小さな積み重ねが大事。うん、とっても大事だよ。

 僕の戦いは始まったばかりだ。
 ゲーム通りだと、4学年から聖女候補は編入してくる。これからが本番だ。気を引き締めないとね!
 それにしても、新入生歓迎パーティーでドレスアップしたソフィアちゃんは超可愛かったよぉ~!
 これで、暫くご飯が食べれちゃうよ? 目に焼き付けておこうっと。うひょひょ!

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