上 下
233 / 249
第6章 王都

233ー設置

しおりを挟む
「どうやって設置するんだ?」

 と、覗き込みながら興味津々に聞いてくるのは第1王子だ。城の見学パスをくれたのは良いんだけど、何故がずっと付いて来る。

「殿下、何も付いて来られなくても」
「ロディ、気になるだろう? 興味があるだろう。キリシマは今日もいるのか?」

 そう言ってずっと付いて来る。第1王子が動くと人も動くんだよ。お付きの侍従だろう、護衛の騎士だろう、それに侍女まで付いて来る。ゾロゾロと目立つんだ。

「そうか? ロディ」
「はい、殿下」
「そうか、なら仕方ない。私は部屋で待つとしよう」

 待つのかよ。終わったら報告に来いって事だな。そして第1王子はゾロゾロと人を従えながら去って行った。あれ? 護衛の騎士が増えてないか? どこにいたんだ?

「ココ、とにかく進めよう」
「はい、兄さま」

 俺はバッグに入っている霧島を見る。

「おう、いつでもいいぜ」

 今日は起きてんじゃん。足を前に投げ出して、ペタンと座っている。

「なんだよ、いつも寝ているみたいに言うなよ」

 だって前は腹出して寝てたじゃん。

「もう寝ねーよ!」

 はいはい。じゃあ、やっちまおうぜ。5箇所あるからな。

「おうよ」

 霧島はバッグの中からいつもの様に指を出す。今日は目もちょびっと出している。そして、クイッと動かした。すると、何処からともなく魔法陣がブワンッと現れた。そして、また霧島が指をクイッと下に動かした。
 魔法陣がゆっくりと地面へと移動した。キラキラと光る大きな魔法陣だ。だが、普通だと見えないんだ。俺は鑑定眼で見ているから見えるんだ。クリスティー先生が不可視にしてくれている。
 精神干渉の魔法陣とは違って、クリスティー先生が作った魔法陣は白っぽくてキラキラしている。
 気持ちの問題なのだろうか? いや、そんな事はない。精神干渉の魔法陣は色で例えると濃いグレーだ。精神干渉と解呪なのだから違っていて当然なのだが、クリスティー先生が作ったものとは全く違う。

「相変わらず、とんでもないわね」
「ハッハッハ! ドラゴンの俺様にとってはどうって事ないぜ!」
「ちょっと、声が大きいわよ」
「あ、すまん」

 で、魔石はどうすんだ?

「その魔法陣の中心に置いてくれ」
「中心ね、ここら辺かしら?」
「おう、それで完了だ」

 ほう、魔法陣と魔石か。両方で魔力を受け止める感じか?

「両方で魔力を受け止めてシールドに変換するんだ」

 なるほどね……て、全然仕組みは分かんねーけどな。強力だという事だけは分かるぞ。

「ココ、もういいのか?」
「はい、兄さま。次に行きましょう」

 それを5箇所に設置した。そして、今は第1王子の執務室で完了報告だ。

「もう終わったのか?」
「はい、設置だけですので」
「ロディ、やはり見たかったな」

 この王子は何にでも興味津々なんだな。霧島にも興味を示していたから。

「で、当日に大聖堂の者達が発動させるのか?」
「はい。その手筈になっております」
「大聖堂も形無しだからな。まさか神聖な場である筈の大聖堂まで精神干渉されているとは思わなかった」

 全くだ。俺もびっくりしたよ。しかも、トップの教皇が1番深い精神干渉だったんだ。

「一体、いつ、どこでだ? 全く分からん」
「敵は巧妙です。しかも何年も前からです」
「ああ。フィルドラクスには辛い思いをさせてしまった」
「明日、ご本人に仰ると宜しいかと」
「そうだな。大きくなっただろうな」

 そんなになのか? 1番上のお兄ちゃんとしては心配なのか? 第1王子が寂しげな目をする。

「もう何年も会っていない。兄弟だというのに……」

 ああ、後悔しているんだ。お互いに精神干渉されていたんだ。仕方ない事だと思うし、不可抗力だろう。それでも、後悔して気持ちを掛ける。いい兄じゃん。

「フィルの髪も瞳も綺麗な色だろう。あれは私達兄弟の憧れだったんだ」
「殿下、王家の色とか言う事に拘っておられるのなら……」
「いや、ディオシス殿。拘っている訳ではない。分かっている。個性だとな」
「それならば、申し上げる事はありません」
「だが……」
「殿下?」
「妹のマールミーアだ。あれは異常なほど執着していた」
「今、勉強なさっている事でしょう」
「アハハハ。毎日大叔母上からは苦情の文が届くがな」

 毎日とは……それは酷いな。

「今までどうして放っておいたのだとキツイお叱りを受けた。ココアリア嬢にも迷惑をかけたな」
「いえ、とんでもありません」
「明日はフィルも来るのだな。顔を見るのを楽しみにしていると伝えてくれ」

 良い兄ちゃんだ。仲が悪い訳ではなかったんだな。今の問題が解決したらフィルドラクス殿下も一緒に平和に城で過ごせるようになると良いな。

「マールミーアが起こした事だが、ハーレイ侯爵とその令嬢にも罪を償ってもらう」

 それはなぁ……俺は別に良いんだ。王女に言われて断れなかったのだろうし、侯爵も精神干渉されていたし。

「ココ、そんな訳にはいかないんだ」
「そうだ。ココアリア嬢はこの国の守護神と言われる辺境伯のご令嬢なのだからな」

 結局、罰金で済むらしい。王女が無理強いした事と、精神干渉を鑑みての減刑だった。俺はそれで充分だと思う。



   ☆            ☆            ☆

読んで頂き有難うございます!
今日はハルちゃんはお休みです。
宜しくお願いします!
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。 会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。 タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

処理中です...