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第6章 王都
231ー大聖堂の魔法陣
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晩餐会という目標が決まった。今まで、色んな場所で解呪してきたが、今度の晩餐会では一気に解呪する事ができる。
そして、今度は堂々と城の中に入れるんだ。できる限り調査もしたい。いや、しよう。
目標は王と王妃の私室だ。近衛兵が警備していて近寄れないらしい。
メイドさんでも入る事ができなかった。一切の身の回りの世話をするウェイティングメイドや、部屋の整備を担当するチェインバーメイドでさえもだ。
だからな、もう一層の事近衛兵も解呪してしまえばいいんだよ。そうしないと、埒が明かないと思わないか?
「お嬢、イケイケッスね」
「はいぃ」
元を絶たなきゃ駄目なんだよ。キッチンに突然出てくるブラックな奴みたいにさ。放っておいたら、あっという間にウジャウジャと増えるぞ。
「げげぇ」
「例えがヤバイッス」
おや、食事中の人がいたらごめん。
そんなバカな事を言いながら、晩餐会の準備を進めていたんだ。そんなある日、クリスティー先生から魔法陣が届いた。先ずは、大聖堂に設置するものだ。
『大聖堂の入り口に、1つ大きなものを設置しまっす。必ずそこを通りますからね。大聖堂に居られる方々も意識して通るようにして頂いて下さい。もちろん他の出入口にも設置しまっす』
霧島、どう?
「ああ、確かに受け取ったぜ」
「あのさ、今更何だけどさ……」
「なんだよ」
「魔法陣って、そんな大きな物をどうやって設置するんだ?」
「ココ、任せな!」
お、おう。と、言う事でまた霧島は俺のバッグに入っている。前回バッグの中で居眠りしていたから、今回は中に敷物を詰めるのはやめた。
「なんだよ。居心地わりぃな」
「だって寝ちゃうじゃない」
「もう寝ないぞ」
はいはい、さっさとやってしまおう。
またディオシスじーちゃんとロディと一緒に大聖堂まで来ている。今日もいい天気だ。抜けるような青空に、薄いモワモワした雲が所々に浮いているだけだ。
俺達は馬車を止め、降りて正面入り口へと向かう。
「私は枢機卿にお会いしてくるよ。教皇様の容態も気になるからな」
ディオシスじーちゃんは平然と正面から入っていった。じーちゃんは例の下着も着けているし、魔石も持っているから大丈夫だ。
「キリシマ、どうすんの?」
「正面入り口付近まで行ってくれ」
おう。分かったぞ。
俺は霧島の希望通りに正面入り口の前までやってきた。
「キリシマ」
「おう、そのままだ」
そう言って、霧島はバッグの中からゴツゴツとした小さな手を出して回した。
指先をクルッと回しただけだ。
すると、大きな魔法陣が空中にブワンッと展開し、大聖堂の正面入り口へと固定された。
ピッカピカじゃん。これ、不可視なんだよな。
「あたぼうよ。クリスティー先生特製の魔法陣だ。俺でもこんな強力な魔法陣を見た事がないぜ」
「そうなの?」
「おうよ、これでこの入口を通る人は皆解呪されるぞ」
「凄いわね」
「ココ、他の入口用のももらってんだ」
「分かったわ」
「ココ、霧島、もう終わったのか?」
そうだ、ロディ兄には見えていないんだった。
「はい、ロディ兄さま。正面入り口は終わりました。他の出入口に回ります」
それから霧島と、大聖堂の両側にある入口と裏に1箇所ある裏口、そして、鐘楼の入口にも魔法陣を設置した。
クリスティー先生はこんなに作ってくれていたんだ。
「クリスティー先生はエルフの中でもバケモン級じゃねーか?」
「え、そうなの?」
「だってこんなに精巧な魔法陣をたった数日で作ってしまうんだからな。信じらんねーよ」
「ドラゴンはもっとじゃないの?」
「ドラゴンは魔法陣なんて使わないんだ。そんなもんでチマチマするより、ドラゴンブレスで一発だ」
ああ、ドラゴンも脳筋なんだね。そりゃ、父やユリシスじーちゃんと気が合うはずだ。
「最強だからな。あんま小さな事には拘らねーんだ」
「そうかよ」
ま、とにかくキリシマは魔法陣は苦手と言う事だな。その上、今はドラゴンブレスも吐けないってな。
「ココー! ちげーだろう!」
「アハハハ。僕から見ればキリシマだって十分バケモン級だよ」
「おう、ロディはよく分かってんじゃねーか」
アハハハ、愉快なドラゴンだよ。
「ココ、終わったのかい?」
ディオシスじーちゃんが大聖堂から出てきた。
「はい、お祖父さま」
「ディオシスお祖父様、キリシマがあっという間に何箇所も設置してしまいましたよ」
「何箇所もなのか?」
「はい、お祖父さま。正面と裏口、左右と鐘楼ですね」
「それは完璧じゃないか。クリスティー先生も、そんなに魔法陣を送ってくれていたんだな」
そうなんだよ。クリスティー先生、ありがとう。
『フフフ、とんでもないでっす!』
なんて、言いそうだ。本当に有難い事だ。
「お祖父様、教皇様はどうでした?」
「ああ、もう大丈夫だ。意識も戻られて普通に生活されているよ」
「念のためココと一緒に王都民が入る事のできる範囲だけでも見ておきませんか?」
「そうだな」
ロディ兄の提案で大聖堂の中を1周して帰った。ずっと鑑定眼で見ていたが、大丈夫だ。もう、怪しいものは何もない。
あとは、城だ。晩餐会に向けて皆で準備だ。
☆ ☆ ☆
読んで頂き有難うございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願いしまっす!
そして、今度は堂々と城の中に入れるんだ。できる限り調査もしたい。いや、しよう。
目標は王と王妃の私室だ。近衛兵が警備していて近寄れないらしい。
メイドさんでも入る事ができなかった。一切の身の回りの世話をするウェイティングメイドや、部屋の整備を担当するチェインバーメイドでさえもだ。
だからな、もう一層の事近衛兵も解呪してしまえばいいんだよ。そうしないと、埒が明かないと思わないか?
「お嬢、イケイケッスね」
「はいぃ」
元を絶たなきゃ駄目なんだよ。キッチンに突然出てくるブラックな奴みたいにさ。放っておいたら、あっという間にウジャウジャと増えるぞ。
「げげぇ」
「例えがヤバイッス」
おや、食事中の人がいたらごめん。
そんなバカな事を言いながら、晩餐会の準備を進めていたんだ。そんなある日、クリスティー先生から魔法陣が届いた。先ずは、大聖堂に設置するものだ。
『大聖堂の入り口に、1つ大きなものを設置しまっす。必ずそこを通りますからね。大聖堂に居られる方々も意識して通るようにして頂いて下さい。もちろん他の出入口にも設置しまっす』
霧島、どう?
「ああ、確かに受け取ったぜ」
「あのさ、今更何だけどさ……」
「なんだよ」
「魔法陣って、そんな大きな物をどうやって設置するんだ?」
「ココ、任せな!」
お、おう。と、言う事でまた霧島は俺のバッグに入っている。前回バッグの中で居眠りしていたから、今回は中に敷物を詰めるのはやめた。
「なんだよ。居心地わりぃな」
「だって寝ちゃうじゃない」
「もう寝ないぞ」
はいはい、さっさとやってしまおう。
またディオシスじーちゃんとロディと一緒に大聖堂まで来ている。今日もいい天気だ。抜けるような青空に、薄いモワモワした雲が所々に浮いているだけだ。
俺達は馬車を止め、降りて正面入り口へと向かう。
「私は枢機卿にお会いしてくるよ。教皇様の容態も気になるからな」
ディオシスじーちゃんは平然と正面から入っていった。じーちゃんは例の下着も着けているし、魔石も持っているから大丈夫だ。
「キリシマ、どうすんの?」
「正面入り口付近まで行ってくれ」
おう。分かったぞ。
俺は霧島の希望通りに正面入り口の前までやってきた。
「キリシマ」
「おう、そのままだ」
そう言って、霧島はバッグの中からゴツゴツとした小さな手を出して回した。
指先をクルッと回しただけだ。
すると、大きな魔法陣が空中にブワンッと展開し、大聖堂の正面入り口へと固定された。
ピッカピカじゃん。これ、不可視なんだよな。
「あたぼうよ。クリスティー先生特製の魔法陣だ。俺でもこんな強力な魔法陣を見た事がないぜ」
「そうなの?」
「おうよ、これでこの入口を通る人は皆解呪されるぞ」
「凄いわね」
「ココ、他の入口用のももらってんだ」
「分かったわ」
「ココ、霧島、もう終わったのか?」
そうだ、ロディ兄には見えていないんだった。
「はい、ロディ兄さま。正面入り口は終わりました。他の出入口に回ります」
それから霧島と、大聖堂の両側にある入口と裏に1箇所ある裏口、そして、鐘楼の入口にも魔法陣を設置した。
クリスティー先生はこんなに作ってくれていたんだ。
「クリスティー先生はエルフの中でもバケモン級じゃねーか?」
「え、そうなの?」
「だってこんなに精巧な魔法陣をたった数日で作ってしまうんだからな。信じらんねーよ」
「ドラゴンはもっとじゃないの?」
「ドラゴンは魔法陣なんて使わないんだ。そんなもんでチマチマするより、ドラゴンブレスで一発だ」
ああ、ドラゴンも脳筋なんだね。そりゃ、父やユリシスじーちゃんと気が合うはずだ。
「最強だからな。あんま小さな事には拘らねーんだ」
「そうかよ」
ま、とにかくキリシマは魔法陣は苦手と言う事だな。その上、今はドラゴンブレスも吐けないってな。
「ココー! ちげーだろう!」
「アハハハ。僕から見ればキリシマだって十分バケモン級だよ」
「おう、ロディはよく分かってんじゃねーか」
アハハハ、愉快なドラゴンだよ。
「ココ、終わったのかい?」
ディオシスじーちゃんが大聖堂から出てきた。
「はい、お祖父さま」
「ディオシスお祖父様、キリシマがあっという間に何箇所も設置してしまいましたよ」
「何箇所もなのか?」
「はい、お祖父さま。正面と裏口、左右と鐘楼ですね」
「それは完璧じゃないか。クリスティー先生も、そんなに魔法陣を送ってくれていたんだな」
そうなんだよ。クリスティー先生、ありがとう。
『フフフ、とんでもないでっす!』
なんて、言いそうだ。本当に有難い事だ。
「お祖父様、教皇様はどうでした?」
「ああ、もう大丈夫だ。意識も戻られて普通に生活されているよ」
「念のためココと一緒に王都民が入る事のできる範囲だけでも見ておきませんか?」
「そうだな」
ロディ兄の提案で大聖堂の中を1周して帰った。ずっと鑑定眼で見ていたが、大丈夫だ。もう、怪しいものは何もない。
あとは、城だ。晩餐会に向けて皆で準備だ。
☆ ☆ ☆
読んで頂き有難うございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願いしまっす!
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