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第6章 王都
205ー第2王子の婚約者
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第2王子殿下の婚約者は、セシリア・フレドリカというそうだ。
絹糸の様なホワイトブロンド色のストレートなサラ艶髪にすみれ色の瞳が可愛らしい儚げな令嬢だ。
「怖がらなくても大丈夫ですよ」
「え……? 男の子なの?」
「リア、男装をしているが歴としたご令嬢だ」
「あ、なんて失礼を……私ったら、申し訳ありません」
「いえ、構いません。こんな格好ですし」
「リア、大丈夫だ。挨拶できるかい?」
「は、はい、殿下。初めまして、セシリア・フレドリカです。殿下を救って頂いて感謝致しますわ」
「初めまして、ココアリア・インペラートです」
おとなしそうなご令嬢だ。そんなに俺って怖いか?
「くふふ」
「リュウ」
笑うんじゃないよ。ちょっと傷付いてんだからな。
「違うんだ、ココ嬢」
第2王子の説明によると、さっき城で会った侯爵令嬢オリヴィア・ハーレイに虐められ、対人恐怖症になってしまったのだそうだ。そんなに虐められたのか?
「そうなんだ。学園では絶えず私かエリアリア嬢が側にいる様にしている。今日の様に私が執務で欠席の時はリアも休ませている。目を離すと何をされるか分からないんだ。バルコニーから下の池に突き落とされかけた事もあるんだ」
突き落とすのか? なんて酷いことをするんだよ。
「殿下、そのご令嬢ならさっき会いましたよ」
「なんだと!? また勝手に入ってきていたのか!」
ノワがサクッと解呪したら帰って行ったけど。
「彼女には本当に手を焼いているんだ」
なんで侯爵令嬢の自分を差し置いて、と思っているだろう言動が以前からあったそうなんだが、この数年で酷くなったそうだ。第2王子の婚約者に、伯爵令嬢のくせに! などと暴言を吐き、その上学園では虐めのオンパレードなのだそうだ。ノートや教科書を目の前で破る。水を掛ける。最近では階段から突き落とされそうになったそうだ。
「え!? 酷い」
「だろう? 突き落とされ掛かったところを助けてくれたのが、エリアリア嬢なんだ。その時に酷く叱られてな」
どうも姉は、自分の大切な人ならもっとしっかり守りなさいと言ったらしい。
姉にしてみれば、歯痒かったのだろう。人一倍、正義感の強い人だから。それに加えて、脳筋も患っている。父のが感染したのだろうな。
「それからなんだ。学園に行こうとしたら身体が震え吐き気を催すようになってしまった」
なんだよ、なんなんだよ、あの侯爵令嬢は!? ムカつくなぁ。
「お嬢」
「分かっているわ」
分かってるよ。冷静になんなきゃな。だけど、いくら精神干渉をされていたと言っても、余りにも酷くないか?
「元々、プライドの高い令嬢だった。自分は選ばれて当然と思っていたのだろう。私は兄上の様に王太子ではない。兄上をお支えしたいとは思っているが、何れは城を出ていく身だ。静かに暮らしたいと思っている。だから、私はそんな気位の高い女性よりも、寄り添ってくれる優しい彼女の方を選んだんだ。幼馴染みだから気心も知れている。それが、彼女は許せないのであろう。プライドを傷つけたのであろうな」
「だからといって、やっていい事と悪い事があります」
「ふふふ、エリアリア嬢と同じ事を言うのだな。流石、姉妹だ」
そんなの、姉妹とか関係ないだろう。常識だよ、常識。
「その令嬢のお父上はどうなのですか?」
「まあ、プライドは高いだろうが冷静な方だ。でないと宰相の任は務まらないだろう」
「ご令嬢を注意されないのでしょうか?」
「目に入れても痛くないという可愛がりようだからな」
だめだ。何が冷静だよ。自分の娘に常識も教えられないなんて。
「お嬢も時々常識外れな事をするッスね」
「リュウ、なによ」
「いや、今とかもッス。普通の令嬢なら怖がって率先してやらないッス」
「うちは普通じゃないもの」
「そうッスね」
何を今更な事を言ってんだよ。
「アハハハ、辺境伯家は普通じゃないのか? 私にはとても勇敢で正義感に溢れた方だと思えるが」
まあ、そうなんだけどね。辺境の地ってのがもう普通じゃないだろう。
「ああ、立地的にはそう言えるのか」
「殿下……」
「うむ、大丈夫か?」
「は、はい。私もお話したい事がございます」
おや、落ち着いたかな?
「あの……オリヴィア様は以前は本当にこれほど酷くはなかったのです」
それだけじゃない。このセシリア・フレドリカという令嬢はよく周りを見ていた。
数年前からおかしな事が起こり出したそうだ。それは取り立てて問題にする程の事でもないような些細な事なのだそうだ。第2王子に対してもそんな些細な違和感をずっと持っていたそうだ。
それが、先日から第2王子だけでなく城の中まで違和感が薄れていった。それを不思議に思っていたそうだ。
「そうか……私もそうだったのだな」
「はい、殿下。でも本当に些細な事なのです。あれ? と、思う程度の事なのですよ」
「しかし、よく見ていたものだ」
本当だ。感心するよ。
うちはみんな大雑把だからなぁ。
「何言ってるんスか。ロディ様なんて超細かいッス」
「ロディ兄さまは別よぉ」
「誰が別だって?」
と、そこに第1王子と一緒にロディ兄が入ってきた。見慣れないご令嬢も一緒だ。見慣れないなんて言ってるけど、初めて王都に来た俺にとっては見慣れているのは身内だけだけどな。
「ぶはは」
また隆が笑ってるぜ。
「聞いたぞ、ココ嬢。あの令嬢を穏便に帰したそうじゃないか」
「殿下、私ではありません。ノワのお陰です」
ノワちゃんが可愛く解呪してくれたからだ。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願い致します!
絹糸の様なホワイトブロンド色のストレートなサラ艶髪にすみれ色の瞳が可愛らしい儚げな令嬢だ。
「怖がらなくても大丈夫ですよ」
「え……? 男の子なの?」
「リア、男装をしているが歴としたご令嬢だ」
「あ、なんて失礼を……私ったら、申し訳ありません」
「いえ、構いません。こんな格好ですし」
「リア、大丈夫だ。挨拶できるかい?」
「は、はい、殿下。初めまして、セシリア・フレドリカです。殿下を救って頂いて感謝致しますわ」
「初めまして、ココアリア・インペラートです」
おとなしそうなご令嬢だ。そんなに俺って怖いか?
「くふふ」
「リュウ」
笑うんじゃないよ。ちょっと傷付いてんだからな。
「違うんだ、ココ嬢」
第2王子の説明によると、さっき城で会った侯爵令嬢オリヴィア・ハーレイに虐められ、対人恐怖症になってしまったのだそうだ。そんなに虐められたのか?
「そうなんだ。学園では絶えず私かエリアリア嬢が側にいる様にしている。今日の様に私が執務で欠席の時はリアも休ませている。目を離すと何をされるか分からないんだ。バルコニーから下の池に突き落とされかけた事もあるんだ」
突き落とすのか? なんて酷いことをするんだよ。
「殿下、そのご令嬢ならさっき会いましたよ」
「なんだと!? また勝手に入ってきていたのか!」
ノワがサクッと解呪したら帰って行ったけど。
「彼女には本当に手を焼いているんだ」
なんで侯爵令嬢の自分を差し置いて、と思っているだろう言動が以前からあったそうなんだが、この数年で酷くなったそうだ。第2王子の婚約者に、伯爵令嬢のくせに! などと暴言を吐き、その上学園では虐めのオンパレードなのだそうだ。ノートや教科書を目の前で破る。水を掛ける。最近では階段から突き落とされそうになったそうだ。
「え!? 酷い」
「だろう? 突き落とされ掛かったところを助けてくれたのが、エリアリア嬢なんだ。その時に酷く叱られてな」
どうも姉は、自分の大切な人ならもっとしっかり守りなさいと言ったらしい。
姉にしてみれば、歯痒かったのだろう。人一倍、正義感の強い人だから。それに加えて、脳筋も患っている。父のが感染したのだろうな。
「それからなんだ。学園に行こうとしたら身体が震え吐き気を催すようになってしまった」
なんだよ、なんなんだよ、あの侯爵令嬢は!? ムカつくなぁ。
「お嬢」
「分かっているわ」
分かってるよ。冷静になんなきゃな。だけど、いくら精神干渉をされていたと言っても、余りにも酷くないか?
「元々、プライドの高い令嬢だった。自分は選ばれて当然と思っていたのだろう。私は兄上の様に王太子ではない。兄上をお支えしたいとは思っているが、何れは城を出ていく身だ。静かに暮らしたいと思っている。だから、私はそんな気位の高い女性よりも、寄り添ってくれる優しい彼女の方を選んだんだ。幼馴染みだから気心も知れている。それが、彼女は許せないのであろう。プライドを傷つけたのであろうな」
「だからといって、やっていい事と悪い事があります」
「ふふふ、エリアリア嬢と同じ事を言うのだな。流石、姉妹だ」
そんなの、姉妹とか関係ないだろう。常識だよ、常識。
「その令嬢のお父上はどうなのですか?」
「まあ、プライドは高いだろうが冷静な方だ。でないと宰相の任は務まらないだろう」
「ご令嬢を注意されないのでしょうか?」
「目に入れても痛くないという可愛がりようだからな」
だめだ。何が冷静だよ。自分の娘に常識も教えられないなんて。
「お嬢も時々常識外れな事をするッスね」
「リュウ、なによ」
「いや、今とかもッス。普通の令嬢なら怖がって率先してやらないッス」
「うちは普通じゃないもの」
「そうッスね」
何を今更な事を言ってんだよ。
「アハハハ、辺境伯家は普通じゃないのか? 私にはとても勇敢で正義感に溢れた方だと思えるが」
まあ、そうなんだけどね。辺境の地ってのがもう普通じゃないだろう。
「ああ、立地的にはそう言えるのか」
「殿下……」
「うむ、大丈夫か?」
「は、はい。私もお話したい事がございます」
おや、落ち着いたかな?
「あの……オリヴィア様は以前は本当にこれほど酷くはなかったのです」
それだけじゃない。このセシリア・フレドリカという令嬢はよく周りを見ていた。
数年前からおかしな事が起こり出したそうだ。それは取り立てて問題にする程の事でもないような些細な事なのだそうだ。第2王子に対してもそんな些細な違和感をずっと持っていたそうだ。
それが、先日から第2王子だけでなく城の中まで違和感が薄れていった。それを不思議に思っていたそうだ。
「そうか……私もそうだったのだな」
「はい、殿下。でも本当に些細な事なのです。あれ? と、思う程度の事なのですよ」
「しかし、よく見ていたものだ」
本当だ。感心するよ。
うちはみんな大雑把だからなぁ。
「何言ってるんスか。ロディ様なんて超細かいッス」
「ロディ兄さまは別よぉ」
「誰が別だって?」
と、そこに第1王子と一緒にロディ兄が入ってきた。見慣れないご令嬢も一緒だ。見慣れないなんて言ってるけど、初めて王都に来た俺にとっては見慣れているのは身内だけだけどな。
「ぶはは」
また隆が笑ってるぜ。
「聞いたぞ、ココ嬢。あの令嬢を穏便に帰したそうじゃないか」
「殿下、私ではありません。ノワのお陰です」
ノワちゃんが可愛く解呪してくれたからだ。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願い致します!
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