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第6章 王都
204ー常習犯
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「何あれ?」
「殿下に会いたいと言ってたッスね」
「なんなのかしら? 許可を取っていなかったわよね? いいの?」
「そうッスね。警備はどうなってんッスかね?」
「本当だわ、確認しに行きましょう」
「お嬢」
「何よ」
「あまりうろつかない方がいいッス」
「何言ってんのよ。動かないと何も分かんないじゃない」
「そうッスけど」
メイドさんに警備まで案内してもらう。
この城の中にも門がある。そこにチェックする衛兵がいる。今俺達がいる場所に入ろうとしたらそこでチェックを受けなければならない。
あの令嬢は許可もないのに此処まで入ってきたんだ。絶対におかしいだろう。
メイドさんが教えてくれて門の脇にある衛兵の詰め所に入って行く。メイドさんは笑顔を振りまきながら「お疲れ様で~す」なんて言っている。慣れたもんだ。
ほんの数日でどこまで馴染んでいるんだよ。恐るべし。
「リュウさん、ここの責任者の方です」
「第2王子殿下の従者です。先ほど、許可のないご令嬢が入っておられたのですが?」
「なんだとッ!? またあの令嬢か!?」
どうやら常習犯らしい。それを通しているのもどうなんだよ。
「いや、どうして通しているのですか?」
「通しているのではないんんだ。無理矢理入っていくんだよ」
それは言い訳だ。衛兵相手にいくらなんでもそんな事は無理だ。
「いや、本当に俺達も手を焼いているんだ」
自分は侯爵令嬢なのだと親の権威を振り回し、近づくな、触るなと言いながら無理矢理通るのだそうだ。衛兵にしてみれば、侯爵令嬢に力づくで連れ出す訳にいかない。それが、毎回なのだそうだ。
「俺達が触れるわけにはいかないんだ」
「どこの侯爵令嬢ですか?」
「前宰相をされていた、ボリス・ハーレイ侯爵のご令嬢でオリヴィア様です」
なんだか大物らしき肩書だ。前宰相に侯爵か。グスタフじーちゃんに聞けばきっと知っているだろうな。
さて、その侯爵様がどっちなのかだ。精神干渉されているのか、それともじーちゃん達の同志なのかだ。
それに、どうして城で働いていない侯爵令嬢が精神干渉されているのか?
これは新しい事実だ。もしや、王都全体を見ないといけないのか?
「そのご令嬢はそんなによく城に来られているのですか?」
隆が聞いた。そうだよ。度々城に来ているのなら、その時に精神干渉を受けたのかも知れない。それに、父親のハーレイ侯爵だ。その人も見ておく必要があるだろう。
「侯爵が去年まで宰相をされていたからな。その時からしょっちゅうだ。第2王子殿下も困っておられた」
ああ、その時から第2王子を狙っているんだな。第2王子って婚約者はいないのか?
そういえば、第1王子はどうなんだ? 俺、全然知らねーや。
この衛兵は精神干渉されていないのか?
「ノワちゃんの成果ですよ」
そうなのか!? あ、そうか。だからか。今までは精神干渉されていたから、侯爵令嬢が無断で入っても気にしなかったんだ。なるほど。そういう事か。
「若……」
「え? 隆、なに?」
「いや、後でいいッス」
なんだよ、気になるじゃん。とにかくここはもう大丈夫なんだな? と、ノワを見たら元気よく……
「アンアン!」
と、答えてくれた。ならいいや。戻ろうぜ。
「そうッスね。戻りましょう」
「すまねーな。面倒かけた」
「いえ、大丈夫です」
隆、ちゃんと話せるんだな。俺はそれが1番の驚きだよ。
「若、第1王子殿下ッスけど」
「ああ、うん。それ知らなかったんだ」
「第1王子殿下は婚姻されてるッス」
「そうなんだ。第2王子の婚約者は?」
「それがあの令嬢の同級生ッス」
「え? さっきの?」
「そうッス。オリヴィア嬢が横恋慕してるんじゃないっスか?」
なんだよそれは。
「ココ様、奪ってやろう、て事なんじゃないですか? お父上が前宰相で侯爵様ですから」
「え? どうして?」
第2王子の婚約者は伯爵家のご令嬢なんだそうだ。なんでも建国当時からある由緒正しい家系なんだとか。それに、幼馴染みでもあり仲睦まじい2人なんだそうだ。
それでも、伯爵家より侯爵家の令嬢である自分の方が。て、事らしい。
「へぇ~、凄いね」
「若……」
「え? なによ」
「もうちょっと勉強してほしいッス」
悪かったよ。まさか、隆がそんな事まで知っているとは思わなかった。いつの間に勉強してたんだよ。
「常識ッス」
「常識ですね」
「アウゥ」
あ、酷いね。君たち。
「もっと奥をまわろう」
「若、やる気ッスね」
「折角、自由に入れるんだから見ておかないとな」
「うッス」
「ノワちゃん連れて行きますか?」
「ええ、ノワお願いね」
「アン!『任せろ!』」
このまま、ノワとメイドのお姉さんも一緒に城の中央へと戻る。
「この近辺をお願い」
「分かりました。ノワちゃん行きましょう」
「アン」
第2王子に例の侯爵令嬢の話をしておこうと、執務室へと戻る。
「ココ嬢、紹介しよう」
と、俺達を待っていたのは第2王子の婚約者のご令嬢だ。
だが、王子の後ろに半身を隠して出てこない。どうすんだ? 極度の人見知りだったりするのか?
「大丈夫だ。辺境伯のご令嬢だ。私を解呪してくれたんだ」
「で、殿下……」
どうした? 俺は令嬢には優しいぞ。怖くないぞ。出てこ~い。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日は後ほどハルちゃんも投稿します。
宜しくお願い致します!
「殿下に会いたいと言ってたッスね」
「なんなのかしら? 許可を取っていなかったわよね? いいの?」
「そうッスね。警備はどうなってんッスかね?」
「本当だわ、確認しに行きましょう」
「お嬢」
「何よ」
「あまりうろつかない方がいいッス」
「何言ってんのよ。動かないと何も分かんないじゃない」
「そうッスけど」
メイドさんに警備まで案内してもらう。
この城の中にも門がある。そこにチェックする衛兵がいる。今俺達がいる場所に入ろうとしたらそこでチェックを受けなければならない。
あの令嬢は許可もないのに此処まで入ってきたんだ。絶対におかしいだろう。
メイドさんが教えてくれて門の脇にある衛兵の詰め所に入って行く。メイドさんは笑顔を振りまきながら「お疲れ様で~す」なんて言っている。慣れたもんだ。
ほんの数日でどこまで馴染んでいるんだよ。恐るべし。
「リュウさん、ここの責任者の方です」
「第2王子殿下の従者です。先ほど、許可のないご令嬢が入っておられたのですが?」
「なんだとッ!? またあの令嬢か!?」
どうやら常習犯らしい。それを通しているのもどうなんだよ。
「いや、どうして通しているのですか?」
「通しているのではないんんだ。無理矢理入っていくんだよ」
それは言い訳だ。衛兵相手にいくらなんでもそんな事は無理だ。
「いや、本当に俺達も手を焼いているんだ」
自分は侯爵令嬢なのだと親の権威を振り回し、近づくな、触るなと言いながら無理矢理通るのだそうだ。衛兵にしてみれば、侯爵令嬢に力づくで連れ出す訳にいかない。それが、毎回なのだそうだ。
「俺達が触れるわけにはいかないんだ」
「どこの侯爵令嬢ですか?」
「前宰相をされていた、ボリス・ハーレイ侯爵のご令嬢でオリヴィア様です」
なんだか大物らしき肩書だ。前宰相に侯爵か。グスタフじーちゃんに聞けばきっと知っているだろうな。
さて、その侯爵様がどっちなのかだ。精神干渉されているのか、それともじーちゃん達の同志なのかだ。
それに、どうして城で働いていない侯爵令嬢が精神干渉されているのか?
これは新しい事実だ。もしや、王都全体を見ないといけないのか?
「そのご令嬢はそんなによく城に来られているのですか?」
隆が聞いた。そうだよ。度々城に来ているのなら、その時に精神干渉を受けたのかも知れない。それに、父親のハーレイ侯爵だ。その人も見ておく必要があるだろう。
「侯爵が去年まで宰相をされていたからな。その時からしょっちゅうだ。第2王子殿下も困っておられた」
ああ、その時から第2王子を狙っているんだな。第2王子って婚約者はいないのか?
そういえば、第1王子はどうなんだ? 俺、全然知らねーや。
この衛兵は精神干渉されていないのか?
「ノワちゃんの成果ですよ」
そうなのか!? あ、そうか。だからか。今までは精神干渉されていたから、侯爵令嬢が無断で入っても気にしなかったんだ。なるほど。そういう事か。
「若……」
「え? 隆、なに?」
「いや、後でいいッス」
なんだよ、気になるじゃん。とにかくここはもう大丈夫なんだな? と、ノワを見たら元気よく……
「アンアン!」
と、答えてくれた。ならいいや。戻ろうぜ。
「そうッスね。戻りましょう」
「すまねーな。面倒かけた」
「いえ、大丈夫です」
隆、ちゃんと話せるんだな。俺はそれが1番の驚きだよ。
「若、第1王子殿下ッスけど」
「ああ、うん。それ知らなかったんだ」
「第1王子殿下は婚姻されてるッス」
「そうなんだ。第2王子の婚約者は?」
「それがあの令嬢の同級生ッス」
「え? さっきの?」
「そうッス。オリヴィア嬢が横恋慕してるんじゃないっスか?」
なんだよそれは。
「ココ様、奪ってやろう、て事なんじゃないですか? お父上が前宰相で侯爵様ですから」
「え? どうして?」
第2王子の婚約者は伯爵家のご令嬢なんだそうだ。なんでも建国当時からある由緒正しい家系なんだとか。それに、幼馴染みでもあり仲睦まじい2人なんだそうだ。
それでも、伯爵家より侯爵家の令嬢である自分の方が。て、事らしい。
「へぇ~、凄いね」
「若……」
「え? なによ」
「もうちょっと勉強してほしいッス」
悪かったよ。まさか、隆がそんな事まで知っているとは思わなかった。いつの間に勉強してたんだよ。
「常識ッス」
「常識ですね」
「アウゥ」
あ、酷いね。君たち。
「もっと奥をまわろう」
「若、やる気ッスね」
「折角、自由に入れるんだから見ておかないとな」
「うッス」
「ノワちゃん連れて行きますか?」
「ええ、ノワお願いね」
「アン!『任せろ!』」
このまま、ノワとメイドのお姉さんも一緒に城の中央へと戻る。
「この近辺をお願い」
「分かりました。ノワちゃん行きましょう」
「アン」
第2王子に例の侯爵令嬢の話をしておこうと、執務室へと戻る。
「ココ嬢、紹介しよう」
と、俺達を待っていたのは第2王子の婚約者のご令嬢だ。
だが、王子の後ろに半身を隠して出てこない。どうすんだ? 極度の人見知りだったりするのか?
「大丈夫だ。辺境伯のご令嬢だ。私を解呪してくれたんだ」
「で、殿下……」
どうした? 俺は令嬢には優しいぞ。怖くないぞ。出てこ~い。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日は後ほどハルちゃんも投稿します。
宜しくお願い致します!
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