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第6章 王都
200ー即バレ
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「ココォーッ!」
あ、うちのドン……いや、父に見つかっちゃったぜ。ダッシュでこっちにやって来た。砂煙が立つんじゃないか? て、早さだ。
「父さま、見学に来ました」
「おう! 一緒に鍛練するかッ!?」
今さっき終わったとこじゃねーか。
「父さま、潜入なのですよね。キリシマは役に立ってますか?」
「おうッ! キリシマはよくやってくれているぞッ! ノワも潜入しているのだそうだなッ!」
「はい、毎日メイドさんと一緒に出掛けています。ノワが歩くと黒いモヤモヤが出るそうですよ」
「あのモヤモヤかッ!?」
「はい、そのモヤモヤです」
「ノワも頑張ってくれているのだなッ! しかし、ココ。無茶をしてはいかんぞ」
「はい、父さま」
「うむ、常にロディや叔父上に相談するんだぞ」
と、父にも釘を刺された。
その頃ノワちゃんは……
「まあ、可愛らしい!」
と、言われながら今日もお尻をフリフリ、尻尾をフリフリしながら城の中を堂々と歩いていた。
「どうしたの? 迷い込んだのかしら?」
と、第1王女に声を掛けられたそうだ。
その時の様子をメイドさんがこう話していた。
「まるで、悪魔みたいでしたよ」
悪魔だと。酷い言い方だ。それも仕方ない。だって、ノワちゃんはクリスティー先生お手製の魔法陣をつけているからね。見えないけども。
だからその効果なのだろう。第1王女の背中から黒いモヤモヤがフワフワッと出たのではなくて、黒いモヤモヤが身体に纏わりついている様に見えたのだそうだ。
それを見る事ができるメイドさんも凄くないか? 普通はあまり見えるもんじゃないぞ。
ノワちゃんがつけている魔法陣の所為だろうか?
「もう、びっくりしました。あんなの初めて見ました」
と、言っていた。やはり、第1王女の解呪は大変そうだ。
「ノワちゃんはお利口さんなんですよ。お城の中をもう覚えちゃったみたいでぇ」
なんだと? それって良いのか? 防犯的にさ。
「だって、ノワちゃんお利口さんなんですから仕方ないですよね~」
なんてメイドさんは話しながら、うふふと笑った。これって確信犯じゃないのか?
まあ、ノワが何かする訳じゃないけどさ。
「ココ、そろそろ僕達も潜入するかい?」
「はいッ! ロディ兄さま」
待ってました! もう早く潜入したくてウズウズしていたんだよ。
「ロディ様とココ様なら、何に変装しますか?」
本当だ。このまま乗り込む訳にはいかないんだよな。カチコミかける訳じゃないんだからさ。
「お嬢」
「お嬢さまぁ」
「分かってるって」
大人しくするよ。多分だけどな。
で、結局無難にロディ兄は従者の制服を貰い、俺は侍女……と言いたいんだが、俺はまだ8歳だ。だから、潜入するにしても仕事がない。
「ん~、ココは待機しておくかい?」
「えぇーッ! そんな! ロディ兄さま、もう行く気満々でした!」
「アハハハ、じゃあ、城を見学にでも来た貴族のご令嬢とでもしておくか?」
「嫌です」
「ココ?」
「変装します! また若になりますッ!」
だって、男の方が動きやすいじゃん。何かとさ。
「ココ様、じゃあ、庭師のお爺さんのお孫さんとでもしておきますか?」
「え? そんなの勝手に決めて大丈夫なの?」
「はい、庭師のお爺さんなら大丈夫ですよ。話しておきますね」
そうなの? じゃあそうしてもらおうかな。着々と人脈を築いてない?
と、いう事で、俺はまた男装をする事になった。白シャツに膝丈のボトムス、そしてサスペンダーだよ。無難な恰好をしておく事になった。
「ココ、くれぐれも無茶をするんじゃないぞッ!」
当日の朝にまで父にそう言われた。大丈夫だよ。庭師のじーちゃんに付いてるだけだ。
……の、筈だったのにどうしてこうなった?
俺は第1王子の執務室にいる。何故かって? それはだね……
予定通り、ロディ兄とメイドさんとノワちゃんも一緒に城に行ったんだ。もちろん、隆と咲も一緒だ。隆は侍従の、咲はメイドさんの変装をしている。ロディ兄もちゃんと侍従に変装している。俺も、庭師のじーちゃんの孫と紹介されても大丈夫なように変装していたんだ。なのにだ。城に入って前庭を抜け、中央を過ぎた辺りで第1王子が前から歩いて来たんだ。
普通、王族はこんな場所にはいない。もう一段階奥にいるんだ。なのに、どうしてだか第1王子が歩いてくる。俺達は超焦ったよ。だって面が割れているからな。どうすんだ? て、話だよ。
仕方ないから、みんな一緒に素知らぬ顔をして脇に除け頭を下げてやり過ごそうとしたんだ。
「おや? その犬は最近城をうろついているという噂の犬か?」
あ、やべー。ノワちゃん、噂になってるってよ。どうすんだよ。
「アン」
ノワちゃんは可愛いく尻尾を振りながらお座りをしている。お利口さんだね。
「おお、賢い犬だな。お前の犬なのか?」
と、王子がロディ兄に聞いたんだ。もうアウトだ。聞かれたロディ兄が仕方なく顔を上げると……
「ん? ロディシスではないのか?」
ほら、バレた。
「おや? もしや、ココアリア嬢か? その恰好はどうした?」
はい、バレた。即行だよ。
「何をしているんだ?」
そう思うよな。ああ、もうバレちゃった。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日はこの後、ハルちゃんを投稿します。
宜しくお願い致します。
あ、うちのドン……いや、父に見つかっちゃったぜ。ダッシュでこっちにやって来た。砂煙が立つんじゃないか? て、早さだ。
「父さま、見学に来ました」
「おう! 一緒に鍛練するかッ!?」
今さっき終わったとこじゃねーか。
「父さま、潜入なのですよね。キリシマは役に立ってますか?」
「おうッ! キリシマはよくやってくれているぞッ! ノワも潜入しているのだそうだなッ!」
「はい、毎日メイドさんと一緒に出掛けています。ノワが歩くと黒いモヤモヤが出るそうですよ」
「あのモヤモヤかッ!?」
「はい、そのモヤモヤです」
「ノワも頑張ってくれているのだなッ! しかし、ココ。無茶をしてはいかんぞ」
「はい、父さま」
「うむ、常にロディや叔父上に相談するんだぞ」
と、父にも釘を刺された。
その頃ノワちゃんは……
「まあ、可愛らしい!」
と、言われながら今日もお尻をフリフリ、尻尾をフリフリしながら城の中を堂々と歩いていた。
「どうしたの? 迷い込んだのかしら?」
と、第1王女に声を掛けられたそうだ。
その時の様子をメイドさんがこう話していた。
「まるで、悪魔みたいでしたよ」
悪魔だと。酷い言い方だ。それも仕方ない。だって、ノワちゃんはクリスティー先生お手製の魔法陣をつけているからね。見えないけども。
だからその効果なのだろう。第1王女の背中から黒いモヤモヤがフワフワッと出たのではなくて、黒いモヤモヤが身体に纏わりついている様に見えたのだそうだ。
それを見る事ができるメイドさんも凄くないか? 普通はあまり見えるもんじゃないぞ。
ノワちゃんがつけている魔法陣の所為だろうか?
「もう、びっくりしました。あんなの初めて見ました」
と、言っていた。やはり、第1王女の解呪は大変そうだ。
「ノワちゃんはお利口さんなんですよ。お城の中をもう覚えちゃったみたいでぇ」
なんだと? それって良いのか? 防犯的にさ。
「だって、ノワちゃんお利口さんなんですから仕方ないですよね~」
なんてメイドさんは話しながら、うふふと笑った。これって確信犯じゃないのか?
まあ、ノワが何かする訳じゃないけどさ。
「ココ、そろそろ僕達も潜入するかい?」
「はいッ! ロディ兄さま」
待ってました! もう早く潜入したくてウズウズしていたんだよ。
「ロディ様とココ様なら、何に変装しますか?」
本当だ。このまま乗り込む訳にはいかないんだよな。カチコミかける訳じゃないんだからさ。
「お嬢」
「お嬢さまぁ」
「分かってるって」
大人しくするよ。多分だけどな。
で、結局無難にロディ兄は従者の制服を貰い、俺は侍女……と言いたいんだが、俺はまだ8歳だ。だから、潜入するにしても仕事がない。
「ん~、ココは待機しておくかい?」
「えぇーッ! そんな! ロディ兄さま、もう行く気満々でした!」
「アハハハ、じゃあ、城を見学にでも来た貴族のご令嬢とでもしておくか?」
「嫌です」
「ココ?」
「変装します! また若になりますッ!」
だって、男の方が動きやすいじゃん。何かとさ。
「ココ様、じゃあ、庭師のお爺さんのお孫さんとでもしておきますか?」
「え? そんなの勝手に決めて大丈夫なの?」
「はい、庭師のお爺さんなら大丈夫ですよ。話しておきますね」
そうなの? じゃあそうしてもらおうかな。着々と人脈を築いてない?
と、いう事で、俺はまた男装をする事になった。白シャツに膝丈のボトムス、そしてサスペンダーだよ。無難な恰好をしておく事になった。
「ココ、くれぐれも無茶をするんじゃないぞッ!」
当日の朝にまで父にそう言われた。大丈夫だよ。庭師のじーちゃんに付いてるだけだ。
……の、筈だったのにどうしてこうなった?
俺は第1王子の執務室にいる。何故かって? それはだね……
予定通り、ロディ兄とメイドさんとノワちゃんも一緒に城に行ったんだ。もちろん、隆と咲も一緒だ。隆は侍従の、咲はメイドさんの変装をしている。ロディ兄もちゃんと侍従に変装している。俺も、庭師のじーちゃんの孫と紹介されても大丈夫なように変装していたんだ。なのにだ。城に入って前庭を抜け、中央を過ぎた辺りで第1王子が前から歩いて来たんだ。
普通、王族はこんな場所にはいない。もう一段階奥にいるんだ。なのに、どうしてだか第1王子が歩いてくる。俺達は超焦ったよ。だって面が割れているからな。どうすんだ? て、話だよ。
仕方ないから、みんな一緒に素知らぬ顔をして脇に除け頭を下げてやり過ごそうとしたんだ。
「おや? その犬は最近城をうろついているという噂の犬か?」
あ、やべー。ノワちゃん、噂になってるってよ。どうすんだよ。
「アン」
ノワちゃんは可愛いく尻尾を振りながらお座りをしている。お利口さんだね。
「おお、賢い犬だな。お前の犬なのか?」
と、王子がロディ兄に聞いたんだ。もうアウトだ。聞かれたロディ兄が仕方なく顔を上げると……
「ん? ロディシスではないのか?」
ほら、バレた。
「おや? もしや、ココアリア嬢か? その恰好はどうした?」
はい、バレた。即行だよ。
「何をしているんだ?」
そう思うよな。ああ、もうバレちゃった。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日はこの後、ハルちゃんを投稿します。
宜しくお願い致します。
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