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第6章 王都
195ー仲が良い
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「ココ、どうした?」
「はい。マールミーア殿下は、もしかしたらイザークス殿下よりも精神干渉が深いかも知れません」
「そうか?」
「はい。身体から黒い靄が出てましたから」
「ココアリア嬢にはそう見えるのか?」
「はい」
先日、初めて見た時に1発だけ軽く解呪した。でも、そんなもの1時間もすれば元に戻ってしまうだろうと俺は思っていた。
王子殿下2人も精神干渉や呪いを受けていたが、鑑定眼で見ても表面的には変わりなかった。ただ、鑑定眼が違うと教えてくれるだけだ。
だが、王女殿下は違った。鑑定眼で見ると、身体中から黒い靄が浮き出ていたんだ。だからあれは解呪が大変だろうなと思う。
それこそ、また黒い靄を引っ張り剥がさないといけないだろうな。
「ココ、俺もそう思うぞ」
と、アイスクリームでベタベタになった口をしてキリシマが言う。もう、きたねーな。拭いてやるよ。
「おう、ありがとうな」
拭いてもきたねーな。
「ココ、マジで酷い」
「フフフ」
それを見ていた第2王子。
「仲が良いのだな。兄上、私達兄弟も仲が良かった筈です」
「ああ。フィルドラクスの母上が亡くなられるまではな。あれが切っ掛けになっていた様に思う」
「そうですね。気の良いお方でしたから」
懐かしそうに王子2人が言う。側室というと仲が悪いのかと思いきや、この王子達は慕っていたようだ。
「私達の母上はとにかく厳しいお方だ。それは王妃としてのお立場もあるのだろう。だが、フィルドラクスの母上は厳しいだけでなく、温かいお方だった。それに、楽しいお方だったんだ」
「そうですな。あの方が居られると場に花が咲いたようでした」
じーちゃんがそういう位なんだ。気の良い人だったのだろう。
「フィルドラクスが父上の色を継いだ。それが私達の母にとっては気に入らなかったのだろう」
「色など、個性に過ぎませんぞ」
「そうなのだが。母上はそう思うお方ではない。だが、仲が悪い訳ではないのだ。お2人でよくお茶をしておられた。母上の良い気晴らしになって下さっていたのだろう。懐かしいな」
「ええ、兄上。あの頃は幸せでしたね」
じゃあ、今は幸せじゃないのか? まあ、精神干渉なんて受けていたし第3王子なんて呪いや毒もだからな。
「兄弟なのに居場所さえ知らなかった。知ろうともしなかったんだ。精神干渉とは恐ろしいものだ」
「お2人にご協力頂けないかと」
「セーデルマン侯爵、もちろんだ。王城を取り戻すんだ」
「ここにおりますメイド2名はアレクシスの配下にございます。何かありましたら2名に言付け頂けると私共に伝わります」
メイドさん2人が頭を下げた。そうしていれば、まさか歌ったり踊ったりして旅芸人に変装していたなんて見えないよ。
「なんと! そうだったか。色々手を打ってくれているのだな。ありがとう」
「何を仰います。臣下として当然でございます」
「感謝する」
「セーデルマン侯爵、ココアリア嬢、ありがとう」
王子2人に感謝されちゃった。へへん。
「ココ、お前そういうとこは子供だな」
うっせーんだよ。まだ食べてんのかよ。腹壊すぞ。
「ばか、ドラゴンが腹を壊すかよ」
「アハハハ、キリシマは本当に楽しいドラゴンだな」
「兄上、それはドラゴンに対してどうなんでしょう? ドラゴンといえば最強ですよ」
ま、そうなんだが。霧島は最強というよりも可愛い奴だな。その気持ちはよく分かる。
「俺様は性格が良いからな」
自分で言ってるよ。
そうしてお茶会、兼スイーツ会か? は、お開きになった。
それにしても、第1王子だけでなく第2王子も気さくに話せる人だった。どうやら姉の餌食になっているらしいが。
なのに、第1王女があれだ。どうした? どうしてああなった? と思う位におかしいぞ。
「ココ、元々派手好きの殿下だったんだ。だが、この数年それが酷くてね。変な方向へいってしまっている」
ロディ兄、酷い言い様だ。変な方向って……確かに、努力する方向性を間違えている。
「殿下には婚約者もおられるのだよ」
「え? なのにロディ兄さまに言い寄っているのですか?」
「そうなんだよ」
え? ビッ〇とは言えない。なんせこの国の王女殿下なのだから。
それは、精神干渉が原因なのだろうか? 個人が持っている素質にも因る様な気もしないでもない。
「それでも以前は、派手でも王族としての品がお有りになった。それが今では……」
お、おう。ロディ兄が言いたい事はよく分かる。品とは真逆だった。ケバイ化粧に大きなアクセサリー、ド派手なドレス。引き算ってものを知らないのか? て思ったよ。
シンプルが1番だよ。て、言ってる俺もフリフリのドレスを着せられているが。
「王女殿下の解呪は大変だろうね」
「そうですね」
「俺を呼べよ。ココだけで解呪するなよ」
「キリシマ、そうなの?」
「ああ。俺が思う感じだとな、あの王子達とは比べ物にならねーだろうな」
「えぇ~、第1王子殿下でも引っ張り出したのに」
「それ以上だろうって事だ」
想像もできないぞ。あれ以上ってどうなんだよ。
だけど、解呪は早いに越した事ないんだ。早く第1王女殿下も解呪しないと。
「そうだ、その内本当に精神を乗っ取られてしまうぞ」
「そうよね」
「拙いな」
「急がないといけませんね」
「ああ」
そんな話しをしながら帰りの馬車に揺られていた。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願いしまっす!
「はい。マールミーア殿下は、もしかしたらイザークス殿下よりも精神干渉が深いかも知れません」
「そうか?」
「はい。身体から黒い靄が出てましたから」
「ココアリア嬢にはそう見えるのか?」
「はい」
先日、初めて見た時に1発だけ軽く解呪した。でも、そんなもの1時間もすれば元に戻ってしまうだろうと俺は思っていた。
王子殿下2人も精神干渉や呪いを受けていたが、鑑定眼で見ても表面的には変わりなかった。ただ、鑑定眼が違うと教えてくれるだけだ。
だが、王女殿下は違った。鑑定眼で見ると、身体中から黒い靄が浮き出ていたんだ。だからあれは解呪が大変だろうなと思う。
それこそ、また黒い靄を引っ張り剥がさないといけないだろうな。
「ココ、俺もそう思うぞ」
と、アイスクリームでベタベタになった口をしてキリシマが言う。もう、きたねーな。拭いてやるよ。
「おう、ありがとうな」
拭いてもきたねーな。
「ココ、マジで酷い」
「フフフ」
それを見ていた第2王子。
「仲が良いのだな。兄上、私達兄弟も仲が良かった筈です」
「ああ。フィルドラクスの母上が亡くなられるまではな。あれが切っ掛けになっていた様に思う」
「そうですね。気の良いお方でしたから」
懐かしそうに王子2人が言う。側室というと仲が悪いのかと思いきや、この王子達は慕っていたようだ。
「私達の母上はとにかく厳しいお方だ。それは王妃としてのお立場もあるのだろう。だが、フィルドラクスの母上は厳しいだけでなく、温かいお方だった。それに、楽しいお方だったんだ」
「そうですな。あの方が居られると場に花が咲いたようでした」
じーちゃんがそういう位なんだ。気の良い人だったのだろう。
「フィルドラクスが父上の色を継いだ。それが私達の母にとっては気に入らなかったのだろう」
「色など、個性に過ぎませんぞ」
「そうなのだが。母上はそう思うお方ではない。だが、仲が悪い訳ではないのだ。お2人でよくお茶をしておられた。母上の良い気晴らしになって下さっていたのだろう。懐かしいな」
「ええ、兄上。あの頃は幸せでしたね」
じゃあ、今は幸せじゃないのか? まあ、精神干渉なんて受けていたし第3王子なんて呪いや毒もだからな。
「兄弟なのに居場所さえ知らなかった。知ろうともしなかったんだ。精神干渉とは恐ろしいものだ」
「お2人にご協力頂けないかと」
「セーデルマン侯爵、もちろんだ。王城を取り戻すんだ」
「ここにおりますメイド2名はアレクシスの配下にございます。何かありましたら2名に言付け頂けると私共に伝わります」
メイドさん2人が頭を下げた。そうしていれば、まさか歌ったり踊ったりして旅芸人に変装していたなんて見えないよ。
「なんと! そうだったか。色々手を打ってくれているのだな。ありがとう」
「何を仰います。臣下として当然でございます」
「感謝する」
「セーデルマン侯爵、ココアリア嬢、ありがとう」
王子2人に感謝されちゃった。へへん。
「ココ、お前そういうとこは子供だな」
うっせーんだよ。まだ食べてんのかよ。腹壊すぞ。
「ばか、ドラゴンが腹を壊すかよ」
「アハハハ、キリシマは本当に楽しいドラゴンだな」
「兄上、それはドラゴンに対してどうなんでしょう? ドラゴンといえば最強ですよ」
ま、そうなんだが。霧島は最強というよりも可愛い奴だな。その気持ちはよく分かる。
「俺様は性格が良いからな」
自分で言ってるよ。
そうしてお茶会、兼スイーツ会か? は、お開きになった。
それにしても、第1王子だけでなく第2王子も気さくに話せる人だった。どうやら姉の餌食になっているらしいが。
なのに、第1王女があれだ。どうした? どうしてああなった? と思う位におかしいぞ。
「ココ、元々派手好きの殿下だったんだ。だが、この数年それが酷くてね。変な方向へいってしまっている」
ロディ兄、酷い言い様だ。変な方向って……確かに、努力する方向性を間違えている。
「殿下には婚約者もおられるのだよ」
「え? なのにロディ兄さまに言い寄っているのですか?」
「そうなんだよ」
え? ビッ〇とは言えない。なんせこの国の王女殿下なのだから。
それは、精神干渉が原因なのだろうか? 個人が持っている素質にも因る様な気もしないでもない。
「それでも以前は、派手でも王族としての品がお有りになった。それが今では……」
お、おう。ロディ兄が言いたい事はよく分かる。品とは真逆だった。ケバイ化粧に大きなアクセサリー、ド派手なドレス。引き算ってものを知らないのか? て思ったよ。
シンプルが1番だよ。て、言ってる俺もフリフリのドレスを着せられているが。
「王女殿下の解呪は大変だろうね」
「そうですね」
「俺を呼べよ。ココだけで解呪するなよ」
「キリシマ、そうなの?」
「ああ。俺が思う感じだとな、あの王子達とは比べ物にならねーだろうな」
「えぇ~、第1王子殿下でも引っ張り出したのに」
「それ以上だろうって事だ」
想像もできないぞ。あれ以上ってどうなんだよ。
だけど、解呪は早いに越した事ないんだ。早く第1王女殿下も解呪しないと。
「そうだ、その内本当に精神を乗っ取られてしまうぞ」
「そうよね」
「拙いな」
「急がないといけませんね」
「ああ」
そんな話しをしながら帰りの馬車に揺られていた。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願いしまっす!
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