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第6章 王都
191ー沢山あるよ
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「余分に生地を持っているなら、王子殿下に差し上げたいんだが」
「分かりました。今出しますか?」
「え……?」
「お祖父さま、色々あるので……え?」
「いや、ココ。もしかして亜空間にか?」
「はい。沢山ありますよ。防御力大から小まで」
「……」
「プハハハ」
ロディ兄がプルプルと震えながら笑っている。なんでだよ。
「ココ、流石に言葉がないよ」
「あら、あなた。もう私は慣れましたわよ。ふふふ」
ばーちゃんまで笑ってるよ。もういい加減に慣れて欲しいもんだ。
本当に沢山持たされたんだ。ミリーさんったら心配性。
「ココ、男性用の色でいい」
「黒とかブルーとかですか? でも王子殿下なら白も必要ですよね。あ、あと模様が入っているのと入っていないのもあってぇ……」
と、次から次へと俺は生地を出していった。またロディ兄が笑っている。
「ココ、それくらいで良いよ。フハハハ」
「兄さま、そうですか? でも、第2王子殿下の分とか、王女様の分とかも必要じゃないですか?」
「ああ、そうだね。ふふふ」
「ココちゃん、領地でどれだけ生地を織ったの?」
「もうあたしには分からない位、種類も数もあります」
「まあ……!」
「アハハハ!」
とうとうロディ兄が声をあげて笑い出した。
「ロディ、どこまで作るつもりなんだ?」
「お祖父様、当然領民全員の分ですよ」
「それはまた……」
な、俺よりロディ兄の方がおかしいだろう? 俺、そこまで思ってないもん。そんな数、とんでもないと思ってるもん。でもこのペースだと可能かも知れない。
「この兄妹は領地から出したら駄目だったのじゃないだろうか?」
「あなた、常識を教えませんと」
「ああ、そうだな」
と、祖父母はため息をついていた。
祖父母が色々と選び、普段着るシャツから上着まで一式作れるだけの生地を持って行くことになった。俺はもう関係ないぞ。
「ココちゃん、女性用の下着は余分にあるかしら?」
「はい、お祖母さま。沢山ありますよ」
「そうなの!? 私、余分に貰えるかしら?」
「はい。お祖母さま、可愛いピンクもありますよ」
「あら!」
「レースがヒラヒラなのも可愛いです」
「まあ、素敵ね!」
こんなノリは母そっくりだ。話していて安心するぜ。
「お前ばかりずるいぞ」
「あら、だってあなたは黒がよろしいんでしょう?」
「いや、黒だけでは不便だ」
「じゃあ、お祖父さま。白も出しますか?」
「ああ、頼むよ」
と、また下着をどんどん出す。
「これ、本当に着け心地が良いのよ。苦しくないの」
「そうでしょう?」
そうなんだよ、そうなんだよ。咲と色々生地の角度を変えたりカッティングを考えたりして作ったんだ。締め付けるだけが能じゃないってな。
「エリアちゃん達の予備も欲しいわね」
「はい、お祖母さま」
と、結局沢山の下着を出すことになった。
「ココ、こんなに持って来ているとは思わなかったよ」
「ロディ兄さま、ミリーさんです」
「ミリーさんがどうした?」
「ミリーさんが、どうせ亜空間に入れるんだからと沢山持たされたんです。何かあったらと言って」
「そうか。流石だ」
「ちょっと心配性ですよね」
「有難いことだね」
「はい」
本当だよ。こんなに思ってくれるなんてさ。俺が何も言わなくても、きっと今頃だってあれやこれやと作っているんだと思う。みんな、働き者だよ。
もう俺はする事ないだろうと部屋に戻ろうとしたんだ。
「そうだわ、ココちゃん。領地のスイーツなんだけど」
はいはい、なんだ?
「あれ、お店で出せるでしょう?」
「え? お祖母さま、そうですか?」
「そうよ、あんなに美味しいものは王都にはないわ」
と、言われてもなぁ。
「あれは料理人達の努力の成果ですよ」
「でもココちゃんが言い出したのでしょう?」
「あたしはこんなのが食べたいと言っただけです」
「ククク」
またロディ兄が笑いだした。
「ココ、レシピはココだろう?」
「そうですか?」
「そうだよ」
そうだっけかなぁ? 俺覚えてないぞ。もしかして記憶が戻る前の話しなんじゃないか?
「お嬢、色々やらかしてるって言ったッスよね」
「リュウ、そうなの?」
「そうッス」
おやおや、俺が原因らしい。
「お祖母さま、あたしは何をすれば良いですか?」
「手軽にお持ち帰りできるようなスイーツを考えて欲しいのよ」
「お持ち帰りですか」
「ほら、シュークリームなんて良いでしょう?」
「ああ、そうですね。中のクリームを季節毎に変えたりして」
「まあ! 中のクリームを変えるの!?」
「はい。マロンクリームとか美味しいですよね。エクレアも良いかも」
「ココちゃん、エクレアってなあに?」
と、墓穴を掘った。それから俺は厨房でエクレアがどんなものかを料理人に話した。でも、既にシュークリームを作れる料理人達だから簡単だった。チョコがまだあまり普及していないんだ。だから、シュークリームよりエクレアの方がお値段が割高になりそうだ。
こんな商売をしてどうすんのかね。じーちゃんもばーちゃんも忙しいだろうに。
「テイクアウトの店を任せてみようかと思ってね」
なるほどね。自分でするのではなくて人を使うと。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願いしまっす!
「分かりました。今出しますか?」
「え……?」
「お祖父さま、色々あるので……え?」
「いや、ココ。もしかして亜空間にか?」
「はい。沢山ありますよ。防御力大から小まで」
「……」
「プハハハ」
ロディ兄がプルプルと震えながら笑っている。なんでだよ。
「ココ、流石に言葉がないよ」
「あら、あなた。もう私は慣れましたわよ。ふふふ」
ばーちゃんまで笑ってるよ。もういい加減に慣れて欲しいもんだ。
本当に沢山持たされたんだ。ミリーさんったら心配性。
「ココ、男性用の色でいい」
「黒とかブルーとかですか? でも王子殿下なら白も必要ですよね。あ、あと模様が入っているのと入っていないのもあってぇ……」
と、次から次へと俺は生地を出していった。またロディ兄が笑っている。
「ココ、それくらいで良いよ。フハハハ」
「兄さま、そうですか? でも、第2王子殿下の分とか、王女様の分とかも必要じゃないですか?」
「ああ、そうだね。ふふふ」
「ココちゃん、領地でどれだけ生地を織ったの?」
「もうあたしには分からない位、種類も数もあります」
「まあ……!」
「アハハハ!」
とうとうロディ兄が声をあげて笑い出した。
「ロディ、どこまで作るつもりなんだ?」
「お祖父様、当然領民全員の分ですよ」
「それはまた……」
な、俺よりロディ兄の方がおかしいだろう? 俺、そこまで思ってないもん。そんな数、とんでもないと思ってるもん。でもこのペースだと可能かも知れない。
「この兄妹は領地から出したら駄目だったのじゃないだろうか?」
「あなた、常識を教えませんと」
「ああ、そうだな」
と、祖父母はため息をついていた。
祖父母が色々と選び、普段着るシャツから上着まで一式作れるだけの生地を持って行くことになった。俺はもう関係ないぞ。
「ココちゃん、女性用の下着は余分にあるかしら?」
「はい、お祖母さま。沢山ありますよ」
「そうなの!? 私、余分に貰えるかしら?」
「はい。お祖母さま、可愛いピンクもありますよ」
「あら!」
「レースがヒラヒラなのも可愛いです」
「まあ、素敵ね!」
こんなノリは母そっくりだ。話していて安心するぜ。
「お前ばかりずるいぞ」
「あら、だってあなたは黒がよろしいんでしょう?」
「いや、黒だけでは不便だ」
「じゃあ、お祖父さま。白も出しますか?」
「ああ、頼むよ」
と、また下着をどんどん出す。
「これ、本当に着け心地が良いのよ。苦しくないの」
「そうでしょう?」
そうなんだよ、そうなんだよ。咲と色々生地の角度を変えたりカッティングを考えたりして作ったんだ。締め付けるだけが能じゃないってな。
「エリアちゃん達の予備も欲しいわね」
「はい、お祖母さま」
と、結局沢山の下着を出すことになった。
「ココ、こんなに持って来ているとは思わなかったよ」
「ロディ兄さま、ミリーさんです」
「ミリーさんがどうした?」
「ミリーさんが、どうせ亜空間に入れるんだからと沢山持たされたんです。何かあったらと言って」
「そうか。流石だ」
「ちょっと心配性ですよね」
「有難いことだね」
「はい」
本当だよ。こんなに思ってくれるなんてさ。俺が何も言わなくても、きっと今頃だってあれやこれやと作っているんだと思う。みんな、働き者だよ。
もう俺はする事ないだろうと部屋に戻ろうとしたんだ。
「そうだわ、ココちゃん。領地のスイーツなんだけど」
はいはい、なんだ?
「あれ、お店で出せるでしょう?」
「え? お祖母さま、そうですか?」
「そうよ、あんなに美味しいものは王都にはないわ」
と、言われてもなぁ。
「あれは料理人達の努力の成果ですよ」
「でもココちゃんが言い出したのでしょう?」
「あたしはこんなのが食べたいと言っただけです」
「ククク」
またロディ兄が笑いだした。
「ココ、レシピはココだろう?」
「そうですか?」
「そうだよ」
そうだっけかなぁ? 俺覚えてないぞ。もしかして記憶が戻る前の話しなんじゃないか?
「お嬢、色々やらかしてるって言ったッスよね」
「リュウ、そうなの?」
「そうッス」
おやおや、俺が原因らしい。
「お祖母さま、あたしは何をすれば良いですか?」
「手軽にお持ち帰りできるようなスイーツを考えて欲しいのよ」
「お持ち帰りですか」
「ほら、シュークリームなんて良いでしょう?」
「ああ、そうですね。中のクリームを季節毎に変えたりして」
「まあ! 中のクリームを変えるの!?」
「はい。マロンクリームとか美味しいですよね。エクレアも良いかも」
「ココちゃん、エクレアってなあに?」
と、墓穴を掘った。それから俺は厨房でエクレアがどんなものかを料理人に話した。でも、既にシュークリームを作れる料理人達だから簡単だった。チョコがまだあまり普及していないんだ。だから、シュークリームよりエクレアの方がお値段が割高になりそうだ。
こんな商売をしてどうすんのかね。じーちゃんもばーちゃんも忙しいだろうに。
「テイクアウトの店を任せてみようかと思ってね」
なるほどね。自分でするのではなくて人を使うと。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願いしまっす!
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