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第6章 王都
190ー大袈裟です
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それは、父だけでなく皆も思っていた事だった。領地に来た頃の王子は今とは別人だ。
足元はふらつき、元気もなく、覇気もなかった。今は王子たるオーラが溢れている。じーちゃん達を相手に鍛練する位になったんだ。
「オーラはあったッスよ」
「そう?」
「そうッス。目立ってましたから」
「それはリュウの髪なんじゃないの?」
「酷い言いようっスね」
「そう?」
「そうッス」
まあ、いいや。くだらない事は置いといて、これからどうするかだ。
「うちのメイドからの連絡だと、陛下の部屋に近寄れないそうだ」
そんな事まで調べてんのか? 危険じゃないか?
「ココ、大丈夫だよ」
「ロディ兄さま、そうですか?」
「ああ。うちのメイド達は皆強いからね」
それは分かってんだけどさ。と、いうか一体どんな筋から潜入させたんだ?
「ココは知らなかったか?」
「はい、何ですか?」
「伯父上のご子息だ。僕達の従兄にあたるお2人の力だ」
そういえば、母の兄の子供には会っていなかった。確か2人共もう働いていたんじゃなかったか?
「ずっと城に詰めているみたいだね。文官も大変なのだろう」
城に泊まり込むなんて、社畜並だ。
俺は会った事もないのだが、母の兄には2人の息子がいる。
長男は家を継ぐべく伯父さんに付いて勉強しながら人事院に勤務しているらしい。
人事院とは、その名の通り城で働く人達を雇い入れる事から配置、管理までを担っている。その長男のコネでメイドさん達は城に潜入している訳だ。噂ではこの長男が文官達を仕切っているらしい。
王が表に出てこられなくなった事で1番影響を受けたのが文官だ。何でも自分である程度把握したいという性格の王は、文官に対して質問責めにする事があったらしい。しかし、書類の期限を遅らせる事はなく、期日までにちゃんと確認印が押されチェックの入った書類が戻ってきていたそうだ。
それがこの数年、期日までに戻ってこないばかりか、王からの質問が一切なくなった。これはおかしいと、皆が不審に思っているものの何せ面会できないのだ。
確認する術がない。そんな状態が続き、文官の仕事も遅れがちになり、皆仕事が終わらない状態になってしまっているのだそうだ。
そして、弟の方は騎士団付きの事務補佐官をしているそうだ。こっちもそのコネで騎士団の世話役や何やらでうちの侍従が潜入している。
騎士団といえば、王族を守る近衛兵程ではないが王族近くを警備する事だってある。その騎士団が団長クラスの上層部であっても王の姿を見ていないというのだ。
そして、誰が命令しているのか上層部に命じられた第3王子の幽閉と監視だ。
監視だぞ。おかしいだろう? 普通は『護衛』でなければならない。それが王子に対して『監視』の命が出た。騎士団は皆何か変だと思いつつも、命令に従わない訳にはいかない。そんな状態なのだそうだ。
因みにこの次男は、騎士団の裏ボスとまで言われているそうだ。
2人とも流石、王都在住の貴族達の裏ボスと真しやかに囁かれているグスタフじーちゃんの孫だ。
「近いうちにお2人とも会えるだろう」
と、ロディ兄が話していた。ロディ兄達は学園に通っていた頃によく世話になっていたらしい。俺だけ会った事がない。
「だから、2人共ココに会いたがっていたよ」
「お祖父さま、どうしてですか?」
「2人共文官だからだ。ココが発明したガラスペンとえんぴつには驚いていた」
なるほど、使ってくれているのかな?
「便利になったと言っていた」
そりゃ、良かったよ。自分が今迄のペンの使い勝手が悪いからと作ったものだったけど、実際に使ってくれている人がいると嬉しいね。
「そうだ、教会の司教様も感心しておられた」
「そうね、あの文字を覚える為の一覧表は素晴らしいわ」
「あれは領地の人に覚えて欲しくて作ったのです」
「でも、子供達用の物はとても分かりやすくて可愛らしいわ」
「お祖母さま、ありがとうございます」
「今迄どうしてあれを思いつかなかったのか。あれは便利だ。えんぴつも庶民にはもう必需品になりつつあるよ。手軽な値段だしね」
そりゃ良かった。これで識字率がアップするといいな。
「それだけでも表彰ものだ」
「お祖父さま、大袈裟です」
「ココちゃん、そんな事ないわよ。内緒だから言えないけど、あの生地なんて王族の皆様にとっては喉から手が出る程欲しい物だと思うわ」
あ、そういえば堂々と第1王子に渡してきたぞ。
「解呪した後だし、ちゃんと話をしたから大丈夫だよ。あれは王子殿下の命を守る物だからね」
「ロディ兄さま、大袈裟です」
「そんな事はないさ」
「ああ、そうだな」
「そうなのよ、ココちゃん」
マジか? 切羽詰まってるじゃん。激ヤバじゃん。
「この先何があるのか分からない。万が一、解呪した事が相手に知られてしまったら強硬手段に出てくるかも知れない。毒を盛られたりする可能性だってあるんだ」
怖いぞ。でも毒なら完璧に解毒するから大丈夫だ。
剣で貫かれたりしない限りは大丈夫だ。
「ココ、生地は沢山あるのか?」
「はい、お祖父さま。ありますよ」
なんでも持って行けとミリーさんに沢山持たされたんだ。どうせ亜空間に収納できるのだからと、本当に沢山持たされた。
本当は自分達で仕上げたかったらしいけど。ミリーさん達のスキルがガンガン上がっている。
ドレスシャツやブラウスなら半日で作ってしまう程だ。本当はドレスや礼服にももっとチャレンジしたいらしい。
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
この後、ハルちゃん投稿します。
宜しくお願いします!
足元はふらつき、元気もなく、覇気もなかった。今は王子たるオーラが溢れている。じーちゃん達を相手に鍛練する位になったんだ。
「オーラはあったッスよ」
「そう?」
「そうッス。目立ってましたから」
「それはリュウの髪なんじゃないの?」
「酷い言いようっスね」
「そう?」
「そうッス」
まあ、いいや。くだらない事は置いといて、これからどうするかだ。
「うちのメイドからの連絡だと、陛下の部屋に近寄れないそうだ」
そんな事まで調べてんのか? 危険じゃないか?
「ココ、大丈夫だよ」
「ロディ兄さま、そうですか?」
「ああ。うちのメイド達は皆強いからね」
それは分かってんだけどさ。と、いうか一体どんな筋から潜入させたんだ?
「ココは知らなかったか?」
「はい、何ですか?」
「伯父上のご子息だ。僕達の従兄にあたるお2人の力だ」
そういえば、母の兄の子供には会っていなかった。確か2人共もう働いていたんじゃなかったか?
「ずっと城に詰めているみたいだね。文官も大変なのだろう」
城に泊まり込むなんて、社畜並だ。
俺は会った事もないのだが、母の兄には2人の息子がいる。
長男は家を継ぐべく伯父さんに付いて勉強しながら人事院に勤務しているらしい。
人事院とは、その名の通り城で働く人達を雇い入れる事から配置、管理までを担っている。その長男のコネでメイドさん達は城に潜入している訳だ。噂ではこの長男が文官達を仕切っているらしい。
王が表に出てこられなくなった事で1番影響を受けたのが文官だ。何でも自分である程度把握したいという性格の王は、文官に対して質問責めにする事があったらしい。しかし、書類の期限を遅らせる事はなく、期日までにちゃんと確認印が押されチェックの入った書類が戻ってきていたそうだ。
それがこの数年、期日までに戻ってこないばかりか、王からの質問が一切なくなった。これはおかしいと、皆が不審に思っているものの何せ面会できないのだ。
確認する術がない。そんな状態が続き、文官の仕事も遅れがちになり、皆仕事が終わらない状態になってしまっているのだそうだ。
そして、弟の方は騎士団付きの事務補佐官をしているそうだ。こっちもそのコネで騎士団の世話役や何やらでうちの侍従が潜入している。
騎士団といえば、王族を守る近衛兵程ではないが王族近くを警備する事だってある。その騎士団が団長クラスの上層部であっても王の姿を見ていないというのだ。
そして、誰が命令しているのか上層部に命じられた第3王子の幽閉と監視だ。
監視だぞ。おかしいだろう? 普通は『護衛』でなければならない。それが王子に対して『監視』の命が出た。騎士団は皆何か変だと思いつつも、命令に従わない訳にはいかない。そんな状態なのだそうだ。
因みにこの次男は、騎士団の裏ボスとまで言われているそうだ。
2人とも流石、王都在住の貴族達の裏ボスと真しやかに囁かれているグスタフじーちゃんの孫だ。
「近いうちにお2人とも会えるだろう」
と、ロディ兄が話していた。ロディ兄達は学園に通っていた頃によく世話になっていたらしい。俺だけ会った事がない。
「だから、2人共ココに会いたがっていたよ」
「お祖父さま、どうしてですか?」
「2人共文官だからだ。ココが発明したガラスペンとえんぴつには驚いていた」
なるほど、使ってくれているのかな?
「便利になったと言っていた」
そりゃ、良かったよ。自分が今迄のペンの使い勝手が悪いからと作ったものだったけど、実際に使ってくれている人がいると嬉しいね。
「そうだ、教会の司教様も感心しておられた」
「そうね、あの文字を覚える為の一覧表は素晴らしいわ」
「あれは領地の人に覚えて欲しくて作ったのです」
「でも、子供達用の物はとても分かりやすくて可愛らしいわ」
「お祖母さま、ありがとうございます」
「今迄どうしてあれを思いつかなかったのか。あれは便利だ。えんぴつも庶民にはもう必需品になりつつあるよ。手軽な値段だしね」
そりゃ良かった。これで識字率がアップするといいな。
「それだけでも表彰ものだ」
「お祖父さま、大袈裟です」
「ココちゃん、そんな事ないわよ。内緒だから言えないけど、あの生地なんて王族の皆様にとっては喉から手が出る程欲しい物だと思うわ」
あ、そういえば堂々と第1王子に渡してきたぞ。
「解呪した後だし、ちゃんと話をしたから大丈夫だよ。あれは王子殿下の命を守る物だからね」
「ロディ兄さま、大袈裟です」
「そんな事はないさ」
「ああ、そうだな」
「そうなのよ、ココちゃん」
マジか? 切羽詰まってるじゃん。激ヤバじゃん。
「この先何があるのか分からない。万が一、解呪した事が相手に知られてしまったら強硬手段に出てくるかも知れない。毒を盛られたりする可能性だってあるんだ」
怖いぞ。でも毒なら完璧に解毒するから大丈夫だ。
剣で貫かれたりしない限りは大丈夫だ。
「ココ、生地は沢山あるのか?」
「はい、お祖父さま。ありますよ」
なんでも持って行けとミリーさんに沢山持たされたんだ。どうせ亜空間に収納できるのだからと、本当に沢山持たされた。
本当は自分達で仕上げたかったらしいけど。ミリーさん達のスキルがガンガン上がっている。
ドレスシャツやブラウスなら半日で作ってしまう程だ。本当はドレスや礼服にももっとチャレンジしたいらしい。
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読んで頂きありがとうございます。
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