おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

撫羽

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第6章 王都

189ー分からない

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『なるほどでっす。大勢の人間を解呪ですか』
『はい、クリスティー先生。あたしにできますか?』
『できない事はないと思いますがね……そうですね、少しお時間をくださいませんか?』
『はい、クリスティー先生』
『また、連絡しまっす。皆様無理をなさらないで、身体には気を付けてくださいとお伝えください』
『はい、有難うございます』

 できない事はない……か。でもクリスティー先生が考えるということは、俺が解呪するよりもっと有効な手立てがあるのか、若しくは俺の能力がギリギリなのか……?
 とにかく、俺には分からないからクリスティー先生の返事を待つか。

「ココ、無理は駄目だよ」
「はい、ロディ兄さま」

 もちろん、自己犠牲なんてしないさ。そんな事をしたら悲しむ人達がいるのが分かっているから。

「お嬢……」
「お嬢さまぁ」
「大丈夫よ。クリスティー先生が手立てを探してくれるわ。それまで待つわ」
「はいですぅ」

 ホッとした顔をした咲と隆。こいつ等を置いていくわけにはいかない。一緒に天寿を全うするんだ。転生したと分かった時にそう俺は決めたんだ。
 だから、そんな心配しなくても大丈夫だ。

「ココ、お前本当に良い奴だな」
「キリシマ、また勝手に読むんじゃないわよ」

 これは言っても聞かないな。

「敢えて読んでいるんじゃねーんだ。ココと繋がりがあるだろう。だから勝手に流れてくるんだよ」
「じゃあ、殿下も?」
「いや、あいつよりココの方が繋がりが深いらしい」
「意味分かんないわ」
「まあ、色々あんだよ」

 そうかよ。色々隠し事があるって事だな。

「ココー!」
「アハハハ」

 キリシマとそんな事を話しながら、ノワとじゃれていたんだ。そこに父とバルト兄が戻ってきた。

「ふぅ~、いかんな!」
「父上、報告しましょう」
「ああ、任せる」

 と、結局バルト兄が何をしていたのか話してくれるみたいだ。父が何故か疲れている。頭を使う事は苦手だからな。なんせ脳筋だ。脳筋集団のドンだからな。
 また、談話室にみんな集まっている。が、今日は姉達は欠席だ。学園があるからね。

「結論を申しますと、騎士団や事務管理の方にも何も情報が集まりませんでした。どちらも陛下のお姿を久しく見ていないそうです。管理の方は、いつもなら陛下によく呼び出されていたそうなのですが、この数年ぱったりと無いそうです」
「アレクシスが殿下をお連れする時にもお目通りできなかったのだろう?」
「はい、義父上。陛下にも王妃様にもです」
「その頃かららしいですね」
「では、最悪の事を考えるとその頃から城内は精神干渉を受けていたということか」
「そうなるかと。しかし、何が目的で一体誰がというのが全く掴めません」

 そこだよ。王族に精神干渉をして、城で働いている者まで精神干渉をして、一体何がしたいのか? それが、全く分からない。まさか他国の間者が? とも考え辛い。何故ならこの大陸にある国は各国と安全保障条約を結んでいるからだ。

「ココは何故そうなったのか勉強したかい?」
「はい、ロディ兄さま」

 昔々、ずっと昔、各国は領地を求めて戦を繰り返していたそうだ。それが何年も何十年も続いて各国は疲弊した。土地も荒れた。どの国もその戦が元で国力を削いでしまったんだ。それで、停戦し各国と安全保障条約を締結するに至ったんだ。奪うより、流通させようという事だ。
 当然だ。そんなに長い間戦をしていたら、どの国にとっても有益にはならない。なる筈がない。
 其々の国が欲しいもの、売りたいもの、領地は渡せないがその分物でという事になったのだろう。平和的に解決するしかもうなかったのだろう。そこまでになった戦だったらしい。
 だから2度と戦を起こしてはならない。平和を守らなければ1番傷つき疲弊するのは民達だと、領地にある教会の司教様に教わった。

「そうだね。だからもし今回の事が他国の侵略行為だとしたら国際問題になる」
「そんな事をどこの国でもしようとは思わないだろう」
「お祖父さま、どうしてですか?」
「各国から批判されるだろう? もしかしたら流通を止められてしまうかも知れない。そんな事になったら困るのは自分の国だ」

 なるほど。それだけ強固な条約なんだな。

「こんな事をして誰が1番得をするのかを考えたのです」
「誰だ?」
「それが、誰とも。強いて言えば王妃様の一派でしょうか?」

 そうだよ、だから俺達は1番最初に王妃を疑ったんだ。

「でも、王妃様ご自身も表に出てきておられません」
「そうなんだよ。だからその線も弱い」
「全く分からんぞッ!」

 ああ、父が投げやりになっている。メイドさんが出してくれたお茶を一気飲みしちゃって、おかわりを貰っている。

「ヒューマンとしてはそうなんだろうな」
「キリシマ?」
「いや、まだ俺も全然分かってねーぞ。でもクリスティー先生と話していたんだけどな、こんな精神干渉を続けるのにはヒューマンだと魔力が足らないんじゃないかと思ってな」
「キリシマ、なら黒幕はヒューマンじゃないって事か?」
「それも半々だ。ヒューマンの比較的魔力量が多くて魔法操作に長けている魔術師が何人もいるなら話は別だ。人数でカバーすんだよ。ならできねー事もない」

 なんだ、結局振り出しだよ。まだ何も確実な事は分からない。

「いや、陛下がご存命だと分かった事は大きな事だ」

 どんな状態で生きているかだ。と、俺は思った。何故なら精神干渉を受けていた頃の王子を知っているからな。


   ☆            ☆            ☆

読んで頂きありがとうございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願いしまっす!
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