上 下
187 / 249
第6章 王都

187ー普通って何だろう?

しおりを挟む
「ココ、起きているかい?」
「はい、ロディ兄さま」

 着替えて咲にお茶をもらっていると、ロディ兄が部屋にやって来た。

「ほら、領地で作った色々付与した魔石があっただろう?」

 おう、今それを思い出していたところだ。領主隊や魔術師団、そしてじーちゃん達や俺達家族、従者にメイド。皆に配った魔石だ。あれを全部付与するのに大変だった。作ったそばからメイドさん達がアクセサリーにしたり、ロゼットにしたり色々作ったんだ。
 俺は結局付け替えるのが面倒でアクセサリーにしてもらったんだ。

「あれをね、お祖父様達にも持ってもらおうと思うんだ。できれば、第1王子殿下にもね」
「はい。沢山ありますよ」
「それも沢山持ってきたのか?」
「はい。何があるか分かりませんから念のため。どうせ亜空間に入れたら何てことないので」
「なるほどね」

 と、言う事で祖父母が待つ談話室に来ている。そこで、俺はまたドドンと魔石を沢山出した。

「ココ……お前は本当に……」
「驚いたわ、こんな事もしていたのね」
「はい、全部に付与するのが大変でした」
「そりゃそうだろう、この数だ」
「はい。でも一緒に来ているみんなや、領地に残っている邸の者達にも配ってますからこれの倍は付与しましたよ」
「もう言葉がでないな」
「ココちゃん、これも秘密にする方が良いわ」
「え……これもですか?」
「そうね、常識外れだわ」

 常識外れってその表現はどうだろう? 
 俺、そんな特別な事をした意識がないんだけど。クリスティー先生だってニコニコしながら付与するのを手伝ってくれたし。母はまぁ半分嫌々だったけど。

「ココちゃんは普通という基準を覚える方が良いわね」
「え……そんなにですか?」
「そんなにね」
「でも領地だと普通ですよ?」
「ココ、領地でも普通ではないよ」
「え……ロディ兄さま。そうなんですか?」
「そうだよ」
「だってクリスティー先生は何も言いませんよ」
「クリスティー先生だからね」

 ん? 意味不明だ。

「クリスティー先生はココがする事を楽しんでいるからね」
「え……そうなのですか?」

 ちょっと俺、言葉が出ないんだけど。だって本当にクリスティー先生は普通の顔していたからさぁ。そんなに特別な事だとは思わなかったよ。

「そうだ、ココ。あのペンもそうだ」
「お祖父さま、ガラスペンですか?」
「あれはとっても良いわ。綺麗だし」

 そうだろうそうだろう。あれは俺もお気に入りの一品だ。何より書きやすい。

「お祖母さま、そうですよね」
「あれも最初は驚いた」
「そうね、まさかガラスで作るなんてね。その上、あの装飾ですもの。あれはお茶会の時に皆さまからどうしたら手に入るのかとすっごく聞かれちゃったわ」
「え……そうですか?」
「そうなんだよ。ああ、えんぴつもだ。あれは事務方から現場の人間まで問い合わせがあったよ」
「え……」
「なんでも変わった便利な物は辺境伯領発だと、みんなもう思ってしまっているからね」
「それはあたしのせいじゃありません」
「いや、ココが殆どだよ」
「え……そうなんですか?」

 いやいや、だって俺まだ8歳だぜ。そんなに色々やらかしてないぞ。魔石の話なのに、なんだか説教されている気分だぜ。メイドさんが出してくれたロールケーキを食べよう。うん、美味いな。中のクリームがマロン味だよ。マロンの粒々も入っている。凝ってるね~。

「何かする時は必ずロディに相談する事だ」
「はい、お祖父さま。それは必ずしてます」
「そうか。なら大丈夫だ。ロディ、頼んだよ」
「はい。まあ今のところなんとか」

 おいおい、どういう意味だよ。

「ほら、このロールケーキもそうだわ。こんなの王都のお店にだってないわ」
「ああ、まったくだ」

 ああ、美味い。今日は気疲れしたからな。甘いのが美味しい。

「ココ、聞いているかい?」
「はい、お祖父さま。美味しいですよ」
「ああ、美味いな。私は普段、甘い物は食べないが領地の物は美味い」
「本当に、美味しいわ。ねえ、あなた。もう引退したのですから辺境の領地へ移りましょうよ」
「それはまだ駄目だろう?」
「そうかしら? もう大丈夫だと私は思いますわよ」

 まあ、好きにしてくれ。俺は食べるよ。あれ? 霧島とノワはどうした?

「厨房でおやつをもらってますよぅ」
「キリシマはお城でもお茶菓子を沢山食べていたわよ。おかわりまでしていたもの」
「そうね、沢山食べていたわね。ふふふ」

 どんだけ食べるんだよ。て、俺もロールケーキ食べているけどさ。
 なんだか、井戸端会議になってるぞ。こんな平和な時間も良いね。うん、平和が1番だ。

「お祖父様、ですから魔石を」
「ああ、ロディ。そうだった。これ、どんな効果を付与してあるんだい?」

 と、じーちゃんに聞かれたので色々だと答えた。危機の時に自動展開するシールドだろう、物理防御力アップだろう、魔法防御力アップだろう、それに状態異常無効だ。今回は状態異常に特に力を入れている。なんせ、第3王子がしつこく毒や精神干渉されていたからな。そっち方面の攻撃があって当然だと思って色々作ったんだ。



   ☆            ☆            ☆

読んで頂きありがとうございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願いしまっす!
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。 会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。 タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

転生調理令嬢は諦めることを知らない

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。  主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。  追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。  2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

出来損ない王女(5歳)が、問題児部隊の隊長に就任しました

瑠美るみ子
ファンタジー
魔法至上主義のグラスター王国にて。 レクティタは王族にも関わらず魔力が無かったため、実の父である国王から虐げられていた。 そんな中、彼女は国境の王国魔法軍第七特殊部隊の隊長に任命される。 そこは、実力はあるものの、異教徒や平民の魔法使いばかり集まった部隊で、最近巷で有名になっている集団であった。 王国魔法のみが正当な魔法と信じる国王は、国民から英雄視される第七部隊が目障りだった。そのため、褒美としてレクティタを隊長に就任させ、彼女を生贄に部隊を潰そうとした……のだが。 「隊長~勉強頑張っているか~?」 「ひひひ……差し入れのお菓子です」 「あ、クッキー!!」 「この時間にお菓子をあげると夕飯が入らなくなるからやめなさいといつも言っているでしょう! 隊長もこっそり食べない! せめて一枚だけにしないさい!」 第七部隊の面々は、国王の思惑とは反対に、レクティタと交流していきどんどん仲良くなっていく。 そして、レクティタ自身もまた、変人だが魔法使いのエリートである彼らに囲まれて、英才教育を受けていくうちに己の才能を開花していく。 ほのぼのとコメディ七割、戦闘とシリアス三割ぐらいの、第七部隊の日常物語。 *小説家になろう・カクヨム様にても掲載しています。

処理中です...