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第6章 王都

186ークリスティー先生は有名人

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「ココ、ココ」
「キリシマ、どうしたの?」
「もうお茶菓子ねーのか?」

 なんだよ、ずっと食べていたのかよ。口の周りが大変な事になっているぞ。

「だって、俺が口出すとこないしさ」

 だからと言って食べすぎだろう? あんまりだから、ちょっと拭いてやろう。まるで赤ちゃんみたいだぞ。

「だって、美味いぞ」

 はいはい、分かったよ。拭いても口の周りの色は変わんないからちょっと小汚い。
 それから、祖父達は第1王子と色々話をして計画を立てていた。俺は、霧島と一緒に話が終わるのを待っていた。お茶菓子のおかわりをもらってな。

「な、美味いだろう?」
「本当ね。流石、お城だわ」
「そういうもんなのか?」
「違うの?」
「さあ、俺はヒューマンのそんな事は分からんな」
「そっか」
「おう」

 呑気なもんだ。張り切ってやって来たわりに茶菓子を食べてるだけかよ。

「何言ってんだ。ずっと結界を張ってるだろうよ」

 あ、そっか。忘れてた。それにしても、この結界良いな。周りに認識出来なくなるんだろう?

「おうよ。いる事は分かるようにしてあるんだ。だけど、実際に何をしていたか、どんな話をしていたかを聞かれても分からないって事だ」
「凄いじゃない、便利ね」
「だろう? 俺様に掛かったらこんな事朝飯前だよ」

 ほう、そうなのか。俺にもできるかな?

「余裕じゃね?」
「そうなの?」
「ああ、ココは魔力量が多いからな」

 なるほど。帰ったら教えてもらおう。
 やっと話が終わって俺達は帰る事になった。

「ココアリア嬢、今度はゆっくり遊びにきてくれ。今日は世話になった」
「いえ、とんでもありません」

 気さくな王子で良かったよ。だが、あの王女だけは勘弁だ。ロディ兄が避けたくなるのも頷けるぜ。精神干渉を解呪したらまた違うのかも知れないけどな。
 そして、馬車に揺られている。眠くなるよね。ちょっと気疲れしたし。

「ココ、眠っていていいよ。着いたら起こしてあげよう」
「兄さま、良いですか?」
「ああ」

 俺はロディ兄にもたれてウトウトとしていたんだ。またあの夢を見たんだ。

「辺境伯達が見破ってくれたのだ! 私を救ってくれた!」

 王子がそう訴えている。場面は以前見た時と同じだ。処刑場ではなく、裁判所の様な場所で俺達は沙汰を待っているといったところか? 今日の夢は第3王子だけじゃなかった。第1王子も同じ様に訴えている。俺達の潔白を訴えてくれているんだ。だが、王妃一派がそれを取り合わない。歯牙にも掛けない。そんな夢だった。

「ココ……ココ、着いたよ」
「あ……兄さま」

 ロディ兄の声で俺は目が覚めた。ああ、嫌な夢を見たな。

「どうした? 少し魘されていたよ?」
「はい、夢を見ていました」

 そこで初めて咲と隆以外の人間に夢の話をしたんだ。

「ココ、その夢はいつ頃から見ていたんだ?」
「えっとぉ……たしか、お祖父さま達と森に盗賊団の討伐へ行った頃が初めてだったと思います」
「そんな前からかい?」
「はい。でも時々です。内容も変わってきていて」
「そうだね、予知夢というには内容が変化しているという事が不思議だ。領地のクリスティー先生に聞いてみよう」
「え? クリスティー先生にですか?」
「そうだよ」

 魔法だけかと思いきや、クリスティー先生は学者さんなのだそうだ。あらゆる事柄に精通しているらしい。その上、若い頃は冒険者としても勇名を馳せていて国から騎士爵という爵位を授かっているらしい。なんでも、功績を認められた者に対して一代限りの名誉の爵位らしい。クリスティー先生は、俺が知らないだけで、国では超有名なエルフさんだった。
 そんな優秀な人がどうして辺境の地にいるのか? 不思議だ。

「なんでもね、代々の辺境伯一家にとても興味を持っているらしいよ。ほら、今だとココだね」
「そうなんですか?」
「ああ。ココの事はとっても可愛がってくださるだろう。それと同時にクリスティー先生の良い研究材料なんだよ」

 げげ、俺は研究材料なんて思われてんのか!?

「でもとっても可愛がって下さっているだろう?」
「はい。でも兄さま、その裏側には研究材料だと思われているかと思うと」
「ああ、それはないよ。無意識だろうね」

 なんだよ、そうなのか。それにしても驚いた。俺が知らない事はまだまだ沢山あるのだろうな。
 ロディ兄と祖父母は帰って直ぐに第3王子に報告をしていた。俺は部屋で即ドレスを脱ぎいつものワンピースに着替えた。何だったら男装でもいいんだけど。

「あぁ~、疲れた」
「ふふふぅ。お嬢さまはお城に行くのは初めてですものねぇ」
「そうよ、初めてなのに色々あったわ」
「そうなんですかぁ?」

 咲と隆に第1王子の解呪の話をした。第1王子の身体から出てきた黒い靄を引っこ抜いた話をしたんだ。

「げッ。お嬢、呪いを触ったんッスか?」
「おう。だってしつこく殿下の身体に戻ろうとするからさぁ」
「だからって普通引っ張り出すッスか?」
「あたしだってまさか触れるなんて知らなかったわ」
「お嬢らしいッス」
「でも無事で良かったですぅ」

 そっか、もしかしたら俺だって取り込まれていたかもな。そんな事の無い様に状態異常無効の下着や何やらを着込んでいるんだ。
 色々てんこ盛りに付与した魔石も持っている。大丈夫だ。


   ☆            ☆            ☆

読んで頂きありがとうございます!
今日はこの後ハルちゃんも投稿します。
宜しくお願いします!
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