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第6章 王都
185ー第3王子の件
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「ココアリア嬢、もしかして今持っているという事なのか?」
「はい、ありますよ」
「ブハハハ!」
霧島、何を笑ってんだよ。大人しくお茶飲んでお茶菓子に夢中だと思っていたのに。聞いていたのかよ。
「ココアリア嬢、それは私と側近達の分もあるのか?」
「ありますよ。出しますか?」
「え?」
「はい?」
だからさ、この件はもういいよ。出すぜ?
「ココ、待ちなさい」
「兄さま?」
「殿下、これも内密にお願いしたいのです」
「何だ?」
「実は……」
と、また祖父が俺のスキルと領地で作った下着の話をした。
「なんとッ! 今日は驚かされてばかりだ」
ちょっと疲れていないか? 解呪のせいじゃないよな?
「ココアリア嬢、私の従者に渡してくれるか?」
「はい、分かりました」
俺は亜空間に入れていた下着をドサッとだす。王子や側近の人達ならこれ位のサイズで大丈夫だろう。と、一応考えて出した。
「……!!」
また、何か変な事をしたか? 大丈夫だよ、ちゃんとサイズを考えて出したんだ。なんだ? 大きいか? そんな事ないよな?
「ココ、そこじゃない」
「兄さま、分かりません」
「本当に辺境伯一家は別格なのだな」
「そういう土地柄なのです」
「ロディシス、そうか」
「はい。これも領地にいた蜘蛛の魔物から採った糸で生地を織り作ったものです。状態異常無効に着目したのはココです。魔物を捕獲し糸を作り生地を織り、そして品物にしたのもココです。皆を守る為に考えたものなのですよ」
「そうか……魔物の……」
そうなんだよ。魔物討伐をしていると状態異常の攻撃をしてくる魔物がいる。毒を吐いてくる魔物なんてザラにいる。そんな魔物から領民を守る為に考えた物なんだ。
うちの領地だと魔物討伐は当たり前だ。そんな日常で少しでもリスクを減らしたかったんだ。着心地や防御力は後付けだ。
「頭が下がる。私は呑気にも呪いを掛けられて、精神干渉までされているのに気付きもしなかった。もしや……先ほどのマールミーアもなのか?」
「はい、殿下。ココが軽く解呪しておりますが、完全な解呪ではありません」
「そうか……なら、母上やニコルもか?」
「恐らくはそうでしょう」
ニコルとは第2王子、ニコルクス・ヴェルムナンド殿下の事だ。たしか、15歳で学園に通っていたと記憶している。姉と同じ学年だ。
緩いウエーブのダークブロンドの髪に綺麗なエメラルドグリーンの瞳の殿下だと聞いた事がある。でも少し頼りないと姉が話していた。姉が言う、頼りになるならないは剣の強さだ。だから、きっと第2王子は姉より弱いのだろう。そんな事で頼りないと言われたくないよな。
姉の基準もどうやら脳筋らしい。
「では、殿下。やっと本題です」
「ああ、第3王子だな」
「はい」
俺の父が保護した事。それまでは何年も別宮に移され幽閉されていた事。そして、第3王子も呪いと毒、それに深い精神干渉に侵されていた事等、一連の事を祖父が話した。
「全て、王妃様の侍女が指示した事だそうです」
「母上が……何という事だ」
「しかし、殿下。王妃様も呪いを掛けられている可能性が高いのです。精神干渉で操られているのかも知れません」
呪いどころか第3王子は精神操作もされていて毒にも侵されていたのだから。そう考えると王妃だってそうかも知れない。
「精神を操るのか?」
「はい、そうです」
「そんな事、実際に可能なのか?」
「ロディシス」
「はい、お祖父様。ご説明しましょう」
ロディ兄が説明した。精神操作とは、普通俺達ヒューマンがそんな術で人1人を操るには膨大な魔力と精密な魔力操作が必要だ。俺だってエルフのクリスティー先生が褒めてくれる程魔力量は多い。でも、俺には出来ない。魔力操作がとんでもなく難しいんだ。
だから、普通はもっと魔力操作に熟練した者、又はヒューマン以外だ。
例えば、エルフ。クリスティー先生の様なエルフなら可能らしい。だが、エルフは態々そんな事をしない。何故ならエルフはヒューマンよりずっと長命種で能力も高い。そして、エルフは独自の集落で暮らしている事もあり、世情に疎いんだ。一時の事に拘って態々精神操作をする気もないからだそうだ。
後は……クリスティー先生が最悪の場合ですがと、前置きして教えてくれたのが魔族だ。たとえば、ドラキュラ等の魔族だ。ヒューマンでも魔族に魂を取られた者は魔族の眷属になるらしい。
ドラキュラなら魅了も使える。魅了だけならそれを掛けたドラキュラを倒せば正気に戻る。だが、実際に吸血されて眷属化されていると一緒に灰になってしまうらしい。とんでもない事だ。それに、霧島が以前教えてくれたが、ヒューマンに変化する事ができる魔族がいる。ヒューマンのふりをして紛れられたら見分けがつかない。
そして、魔族はヒューマンより強い。それが通念だそうだ。だからこそクリスティー先生が『最悪の場合』と前置きしてまで話したんだ。
「最悪じゃないか……」
「殿下、先ずは敵の正体を見極めましょう」
「そうだな。今は何が何やら分からないのだからな」
「そうです。手の打ちようがありません。敵を知る事から始めましょう」
「分かった。それで、フィルドラクスは元気にしているのだな?」
「はい、ロディシス達と一緒に王都へ来られておりますよ。私の邸におられます」
「そうか! よかった。恩に着る」
「アレクシスが保護しお連れしたのです。あれを褒めてやってください」
「そうか、辺境伯が……何から何まで」
第1王子の様子を見ていると、第3王子と仲が悪い訳じゃない様だ。第3王子の事を心配している。なら、やはり王妃か?
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願いします!
「はい、ありますよ」
「ブハハハ!」
霧島、何を笑ってんだよ。大人しくお茶飲んでお茶菓子に夢中だと思っていたのに。聞いていたのかよ。
「ココアリア嬢、それは私と側近達の分もあるのか?」
「ありますよ。出しますか?」
「え?」
「はい?」
だからさ、この件はもういいよ。出すぜ?
「ココ、待ちなさい」
「兄さま?」
「殿下、これも内密にお願いしたいのです」
「何だ?」
「実は……」
と、また祖父が俺のスキルと領地で作った下着の話をした。
「なんとッ! 今日は驚かされてばかりだ」
ちょっと疲れていないか? 解呪のせいじゃないよな?
「ココアリア嬢、私の従者に渡してくれるか?」
「はい、分かりました」
俺は亜空間に入れていた下着をドサッとだす。王子や側近の人達ならこれ位のサイズで大丈夫だろう。と、一応考えて出した。
「……!!」
また、何か変な事をしたか? 大丈夫だよ、ちゃんとサイズを考えて出したんだ。なんだ? 大きいか? そんな事ないよな?
「ココ、そこじゃない」
「兄さま、分かりません」
「本当に辺境伯一家は別格なのだな」
「そういう土地柄なのです」
「ロディシス、そうか」
「はい。これも領地にいた蜘蛛の魔物から採った糸で生地を織り作ったものです。状態異常無効に着目したのはココです。魔物を捕獲し糸を作り生地を織り、そして品物にしたのもココです。皆を守る為に考えたものなのですよ」
「そうか……魔物の……」
そうなんだよ。魔物討伐をしていると状態異常の攻撃をしてくる魔物がいる。毒を吐いてくる魔物なんてザラにいる。そんな魔物から領民を守る為に考えた物なんだ。
うちの領地だと魔物討伐は当たり前だ。そんな日常で少しでもリスクを減らしたかったんだ。着心地や防御力は後付けだ。
「頭が下がる。私は呑気にも呪いを掛けられて、精神干渉までされているのに気付きもしなかった。もしや……先ほどのマールミーアもなのか?」
「はい、殿下。ココが軽く解呪しておりますが、完全な解呪ではありません」
「そうか……なら、母上やニコルもか?」
「恐らくはそうでしょう」
ニコルとは第2王子、ニコルクス・ヴェルムナンド殿下の事だ。たしか、15歳で学園に通っていたと記憶している。姉と同じ学年だ。
緩いウエーブのダークブロンドの髪に綺麗なエメラルドグリーンの瞳の殿下だと聞いた事がある。でも少し頼りないと姉が話していた。姉が言う、頼りになるならないは剣の強さだ。だから、きっと第2王子は姉より弱いのだろう。そんな事で頼りないと言われたくないよな。
姉の基準もどうやら脳筋らしい。
「では、殿下。やっと本題です」
「ああ、第3王子だな」
「はい」
俺の父が保護した事。それまでは何年も別宮に移され幽閉されていた事。そして、第3王子も呪いと毒、それに深い精神干渉に侵されていた事等、一連の事を祖父が話した。
「全て、王妃様の侍女が指示した事だそうです」
「母上が……何という事だ」
「しかし、殿下。王妃様も呪いを掛けられている可能性が高いのです。精神干渉で操られているのかも知れません」
呪いどころか第3王子は精神操作もされていて毒にも侵されていたのだから。そう考えると王妃だってそうかも知れない。
「精神を操るのか?」
「はい、そうです」
「そんな事、実際に可能なのか?」
「ロディシス」
「はい、お祖父様。ご説明しましょう」
ロディ兄が説明した。精神操作とは、普通俺達ヒューマンがそんな術で人1人を操るには膨大な魔力と精密な魔力操作が必要だ。俺だってエルフのクリスティー先生が褒めてくれる程魔力量は多い。でも、俺には出来ない。魔力操作がとんでもなく難しいんだ。
だから、普通はもっと魔力操作に熟練した者、又はヒューマン以外だ。
例えば、エルフ。クリスティー先生の様なエルフなら可能らしい。だが、エルフは態々そんな事をしない。何故ならエルフはヒューマンよりずっと長命種で能力も高い。そして、エルフは独自の集落で暮らしている事もあり、世情に疎いんだ。一時の事に拘って態々精神操作をする気もないからだそうだ。
後は……クリスティー先生が最悪の場合ですがと、前置きして教えてくれたのが魔族だ。たとえば、ドラキュラ等の魔族だ。ヒューマンでも魔族に魂を取られた者は魔族の眷属になるらしい。
ドラキュラなら魅了も使える。魅了だけならそれを掛けたドラキュラを倒せば正気に戻る。だが、実際に吸血されて眷属化されていると一緒に灰になってしまうらしい。とんでもない事だ。それに、霧島が以前教えてくれたが、ヒューマンに変化する事ができる魔族がいる。ヒューマンのふりをして紛れられたら見分けがつかない。
そして、魔族はヒューマンより強い。それが通念だそうだ。だからこそクリスティー先生が『最悪の場合』と前置きしてまで話したんだ。
「最悪じゃないか……」
「殿下、先ずは敵の正体を見極めましょう」
「そうだな。今は何が何やら分からないのだからな」
「そうです。手の打ちようがありません。敵を知る事から始めましょう」
「分かった。それで、フィルドラクスは元気にしているのだな?」
「はい、ロディシス達と一緒に王都へ来られておりますよ。私の邸におられます」
「そうか! よかった。恩に着る」
「アレクシスが保護しお連れしたのです。あれを褒めてやってください」
「そうか、辺境伯が……何から何まで」
第1王子の様子を見ていると、第3王子と仲が悪い訳じゃない様だ。第3王子の事を心配している。なら、やはり王妃か?
☆ ☆ ☆
読んで頂きありがとうございます。
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願いします!
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