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第6章 王都

183ー解呪

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「俺様はエンシェントドラゴンのキリシマだぁ! 逆らう者は皆殺しだぁー!」

 思わずペシッと叩いてしまった。

「イテッ!」

 はいはい、小さいトカゲさん。両手を腰にやり胸を張っている。相変わらず態度はデカイ。皆殺しって何だよ。どこでその台詞を覚えたんだ?

「ココ! お前呼んでおいてヒデーな!」
「アハハハ。キリシマ、転移できるのね」
「エルフにリミット解除してもらったからな。この程度なら余裕だぜ!」

 第1王子が固まっているぞ。どうした?

「ち、ち、小さなトカゲが喋っているぞ」

 と、キリシマを指さしている。そうなるよな。うん、予想通りだ。ロディ兄なんて笑いを堪えて肩を揺らしている。祖父母も下を向いて必死で笑いを堪えている。

「トカゲ言うなー!」

 やっぱそう思うよね。偉そうに指を差して怒っているけど、どう見てもトカゲさんだ。しかも小汚い。本当に汚くはないんだけど、色味がなぁ。とっても残念だ。

「ココ、お前本当に酷いぞ」

 アハハハ、ごめんって。

「殿下、先程ココアリアがご説明した通り親ドラゴンによって小さくされているのです。しかし、私の邸にいたのですが、今ココアリアが呼び直ぐに参りました。この様な事を普通はできますまい」
「確かに……何もない空間に突然現れた。本当にエンシェントドラゴンなのか?」
「おうよ、だから最初からそう言っているだろう」

 態度だけはデカイんだよ。このトカゲさん。いや、声も大きかった。

「なんならここでドラゴンブレスを吐いてやってもいいんだぜ!」

 霧島、それは止めておけ。

「ココ、そうか?」
「そうよ。それはやり過ぎよ」

 と、俺と霧島が話しているのをポカンとお口を開けて見ている第1王子殿下。そんなに不思議か?

「先ほどから見ていると、まるでココアリア嬢の心をその……ドラゴン? が、読んでいるように見えるのだが?」
「読んでいるのですよ。ココの気持ちを読むことができるのです」
「な、なんとッ!?」

 本当、迷惑なんだけどね。勝手に人の心を読むからな。

「ココ! 迷惑言うなー!」

 短い両腕を回してパタパタと叩きつけてくる。全然痛くねーぞ。ドラゴンらしくもねーぞ。

「アハハハ」
「仲が良いのだな……」
「あたぼうよ! 俺はココに加護を授けているからな! あ、フィルもそうだぞ!」
「フィル……第3王子のフィルドラクスか?」
「おうよ! 俺が守ってやってんだ!」
「フィルに? どうやってフィルと知り合った? いや、暫くフィルを見ていないぞ」
「殿下、ご存知ないのですか?」
「セーデルマン侯爵、どういう事だ?」
「先ずはココアリアに解呪を受けて頂きましょう。話はそれからですぞ」
「私は解呪をしなければならない状態なのだな?」
「はい、殿下。残念ですが」
「……よし。分かった。ココアリア嬢、やってくれ」

 お、おう。良いのか? ちょっと1発とかじゃなくて、完璧にいくぜ?

「ココ、構わない。でないと話が進まない」
「はい、ロディ兄さま」
「待て、俺が結界を張ってやるよ。周りからハッキリとは視認できないようにしてやるよ」

 と、霧島が短い指をフイッっと宙で回した。これで結界は張られているのか? 霧島、いつの間にそんな芸当を覚えていたんだよ。驚きだ。
 よし、やってやろうじゃん。俺はフゥ~ッと1つ息を吐いた。そして掌を第1王子に向け詠唱した。

「ディスエンチャント……」

 王子の身体から黒い靄の様な物がモヤモヤと浮き出る。ついでにだ。

「ピュリフィケーション」

 真っ白に輝く光が王子の身体を包み込み消えていった。
 どうだ? 身体には異変はない筈だ。だが、頭がスッキリしただろうよ。と、思いながら俺は鑑定眼で確認する。なかなか深いぞ。もう一発いっとくか。

「ディスエンチャント……!」

 王子の首筋から背中にかけて黒い何かが『グギャァー』と小さな声を上げて出てきたものの、中に戻ろうとする。
 なんだよ、何で戻るんだよ。しつけーな! こうなったら……
 俺は席を立ち第1王子のそばに行き、身体に再度戻ろうとしている黒い靄をガシッと両手でしっかりと掴んで引っ張り出そうとした。

「ココ!」
「ココ、お前何やってんだ!?」
「キリシマ、手伝って! また中に入ろうとするのよ! 引っ張り出すの!」
「おう!」

 霧島がシュンッと飛んできて俺の背中を引っ張る。

「おぉ! 力強いじゃない! もっとよ!」
「おうよ!」

 小さなトカゲさんが俺の背中を引っ張り、俺が王子の背中から出ている黒い靄を引っ張り出そうとする。大半が出た時だ。

「グググッ……」
「王子が苦しみ出した」
「最後の抵抗をしてやがんだ。ココ、もう1度解呪だ!」
「分かった! 兄さま、引っ張っておいて下さい!」
「ココ、僕に掴めるのか?」
「大丈夫です!」

 ロディ兄が慌てて俺の代わりに黒い靄を引っ張る。

「いくわ……ディスエンチャント!」

 俺が詠唱すると、あれ程王子の中に戻ろうともがいていた黒い靄がスポッと抜け出た。

「ごぁッ!」

 王子が変な声をあげている。

「ココ、これはどうするんだい?」

 ロディ兄が手にデロンとした黒い靄を持っている。おや? 消えないのか?

「兄さま、どうしましょう?」
「俺に任せろ!」

 と、霧島が言ったと思ったらその黒い靄をバクッと食べてしまった。


   ☆            ☆            ☆

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