上 下
182 / 249
第6章 王都

182ー第1王女

しおりを挟む
「まさか、マールミーア殿下がおられるとは思いもしませんでした。イザークス殿下、内密に重要なお話があると先にお伝えしましたが」
「分かっている。しかし……」
「あら、何ですの? 私は邪魔なのですか?」

 何言ってんだ。約束していない奴が急に来るのが間違っているんじゃないか。こいつは、解呪2回だな。性格までは治せないだろうけど。俺は目を合わさないように注意しながら第1王女を見た。だって関わりたくないからさ。

「ロディシス様はいつの間にか卒業されて、もうお目に掛かれないのかと寂しく思っておりましたのよ」

 マジで性格の浄化もしたいぞ。嫌な感じだ。微笑みながら流し目でロディ兄を見ている。
 言っておくが俺は決してブラコンではない。ロディ兄が別に誰を気に入ろうが、それは自由だ。だけど、この王女の話し方と仕草、それに格好だよ。
 ロディ兄にアピールしてんだろうけど、逆効果だ。歳に似合わない真っ赤な口紅に濃いメイク。とんがった長い爪。昼間なのに胸元が大きくあいたヒラヒラなドレスに極め付けがキツイ香水だ。
 元々、少し派手目なのだろう。キャラメルブロンドの長い髪を大きく縦カールさせていて大きな髪飾りをつけている。オレンジガーネットの瞳がまるで獲物を狙う蛇の様だ。まさかとは思うけど、このまま学園に来られたら浮くぞ。そして周りは引くぞ。何よりも全く似合っていない。

「ココ、学園は制服だけどね。それ以外はまんまなんだ」

 ロディ兄が嫌そうな顔でボソッと呟いた。マジか。何かに憑かれてでもいるのか? もう1度鑑定しておこう。

「イザークス殿下、お話がございます。人払いをお願いできますか?」
「分かった」

 第1王子が、周りに合図をすると控えていた侍女達や護衛も距離をとって離れた。

「ミーア、これから大事な話がある」
「そうなのですね」

 と、動かず優雅にお茶を飲んでいる。これは動くつもりないぞ。
 解呪を軽く1発だけいっとくか? と、思ってロディ兄を見る。
 小さく首を横に振られてしまった。大丈夫だよ。こいつは1回解呪した位、どうって事ないぞ。ちょっとふらつかせる位で丁度良いんじゃないか?

「ココ……」
「兄さま、大丈夫です」
「本当に?」
「はい。軽~く1発だけにしておきますから」
「意味が分からないけど、じゃあ軽くね」
「はい」
「あら、仲がよろしいのね」
「可愛い妹ですから。初めてで緊張しておりますので」

 ロディシスが話している間に、俺はテーブルの下で指をピンと弾いた。デコピンする時の弾く手、あの逆さまバージョンだ。それで、軽く1発解呪だ。
 すると、少しビクッと身体を震わせた王女。

「あら? 少しフラつきますわね」
「ミーア、部屋に戻って休みなさい」
「残念ですけど、そうさせて頂きますわ。ロディシス様、まだ王都におられるのでしょう?」

 と、話しながらも身体がフラフラと傾いていく。
 見兼ねた第1王子が人を呼び、王女は両脇から支えられる様にして退席していった。

「ココ、やり過ぎじゃないか?」
「ロディ兄さま、本当に軽く1発だけです。あの程度なら直ぐに元に戻ります」
「何の話だ?」
「殿下、実は内密にお願いしたいのですが……」

 グスタフじーちゃんが、キョトンとしている第1王子に俺のスキルの説明をした。

「なんとッ!?」
「それに辺境の領地にはエルフがおります。直々に色々と指導を受けております」
「エルフか!?」
「はい。このココアリアはエンシェントドラゴンやブラックフェンリルの加護も授かっております。ココアリアの見立ては確かなものです」
「ドラゴンにフェンリルだとッ!?」
「この数年、陛下がお出ましになられない理由をご存知ですかな?」
「父上はずっと病に伏せておられると聞いているが?」
「では、第3王子殿下はどこにおられます?」
「フィルドラクスか。あれは……別宮にいるのではないのか?」
「不自然だとは思われませんでしたか?」
「母上の侍女が話していたのだ。まさか、私に虚偽の話をする筈がないだろう」
「そうでしょうか? 殿下、1度試しにココアリアの解呪を受けてみられませんか?」

 あ、はっきり言っちゃったよ。それは、受け入れられないのじゃないか? 普通は自分が呪われているだとか、精神干渉を受けているなんて思いもしないから。

「どの話も直ぐには信じ難いものだ」
「では、私が嘘を申していると?」
「いや、そんな訳ではない。セーデルマン侯爵の事は信頼している」
「では……」
「しかし、エルフは未だしもドラゴンにフェンリルとは……信じられん」
「呼びましょうか?」
「ココ」
「兄さま、ずっとキリシマは聞いているのですよ。キリシマなら呼んだら直ぐに飛んできますよ」
「でも、あれはドラゴンに見えないだろう?」
「ココアリア嬢、本当に呼べるのか? 呼べるのなら是非1度見てみたい!」

 王子、食いついたね。なら、こっちのもんだ。

「但し、殿下。親ドラゴンにお仕置きされて小さくされています。見た目はドラゴンに見えません。それでも信じて頂けますか?」
「ああ。呼べるのなら信じよう!」

 言ったな。言質はとったぞ。霧島、聞いてんだろう?

『おうよ』

 なら、ドドンと派手に登場してくれ。

『俺様の出番か! 任せな!』

 と、霧島が返事をした瞬間にポポンッと何もない空間にキリシマが登場した。だからさぁ、もっと威厳のある登場の仕方とかないのかよ。ポポンッて何だよ。ちゃっちーぞ。


   ☆            ☆             ☆

読んで頂きありがとうございます。
今日はこの後、ハルちゃんも投稿します。
宜しくお願いします!
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。 会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。 タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。

処理中です...