上 下
170 / 249
第5章 王都へ

170ー敵襲

しおりを挟む
 ――ピピーーー!!

「よし、攻撃開始だ」
「若さまぁ、出ないでくださいぃ!」
「ばか、サキ。出ないでどうすんだよッ!」
「若ッスね」
「あたぼうよッ!」
「ココ、俺もやるぞッ!」
「アンアン!『おれもだ!』」
「キリシマは上空から支援して、ノワいくわよ!」
「おうよ!」
「アン!」

 幌馬車から飛び降り、馬車に近づく敵を迎え撃つ。前線は兵達に任せる。じーちゃん2人も出ている。ちっとやそっとじゃ負けねーぞ!
 敵はアースウォールで囲んだ中を押し合いながら進んでくる。そこを複数人で迎え撃つ。1人が盾になり1人が攻撃をし1人がフォローする。この攻撃態勢を崩さないように戦う。俺達も参戦だ。
 先ず咲が突っ込んで崩し隆が斬り込み俺が仕留める。そこまでしなくても簡単に倒せる様な輩ばかりだった。

「急ごしらえなんッス」
「なるほどね」

 そんな無駄口も叩ける程度だった。だが、何しろ数が多い。イラっとするぜ。
 と、思っていたら上空からピンポイントで敵に風の刃が飛ぶ。

「キリシマ、スゴイじゃない!」
「へへん! どうだよ、俺様の力はこんなもんじゃねーぞッ!」
「アンアンアン!」

 ノワも可愛い声で鳴きながら風の刃を飛ばしている。その上、噛みついたりひっかいたり。敵がノワを捕まえようとしてもすばしっこくて結局尻もちをついている。

「強いッスね」
「ね、ほんとだわ」
「ブラックフェンリルですからぁ」
「そうだった」
「若ッ、前に出過ぎッス!」

 隆が叫ぶ。いかん、つい気が焦ってしまっていた。大事な事は王子を無事に守る事だ。
 咲や隆と一緒に馬車の周りを守る。アルベルトも馬車から離れない。
 父とじーちゃん達は前線に出ている。大きな声が聞こえてくる。

「うおぉぉーッ!」
「雑魚共がぁーッ!」

 ああ、張り切っているな。怪我するんじゃないぞ。

「ノワ、ここは大丈夫だから父さま達の方へ行ってくれる?」
「アン!」

 ノワは一鳴きして、敵味方が入り乱れて戦っている中を小さな身体で弾丸の様に走って行く。
 敵は馬に乗ったまま突っ込んでくる奴もいる。かと思えば、単身で突っ込んでくる奴もいる。

「なんだ、バラバラじゃないか?」
「寄せ集めなんスからこんなもんッス」

 そうか。それに比べてこっちの兵はしっかり落ち着いて連係しながら対応している。お、メイドさん達も参戦しているぞ。

「きゃー、怖いぃ~ッ!」

 なんて声をあげながら、しっかりと暗器を命中させていたりする。本当に怖いと思っているのだろうか? いや、考えるだけ無駄だ。絶対に思ってないぞ。

「あぁー、しつこいッス!」
「数が多いですぅ!」

 確かに、このままだと数で押されてしまう。
 どうする? 一層のこと王子が乗っている馬車を逃がすか? いや、それもどうなんだ?
 そんな事を考えていた時だった。

「ぐわッ!」
「アルベルトさん!」

 数人、明らかに動きの違う者達がいた。きっと訓練されている者達だろう。
 兵達が数人で抑えにかかっても、うまくすり抜けられている。こいつら、王子を狙っているぞ。

「サキ! リュウ!」
「はいッス!」
「はいですぅ!」

 俺達は馬車の前で立ちはだかる。そして、斬られたアルベルトにはヒールだ。

「大丈夫ですか?」
「申し訳ありません、大丈夫です。1人飛び抜けて強い者がおります」
「はい」
「俺様に任せろッ!」

 上空から霧島が応戦してくれている。
 どうする、勝てるか? まだチビの俺に勝てるのか?

「若ッ、下がってください!」
「若さまぁ!」
「大丈夫だ」

 俺は短剣で応戦する。ああ、面倒だ。この数の多い雑魚を減らせればなぁ。
 まとめて剣を振り上げてくる奴等に向かって、咲が斬り込む。隆が斬りはらう。が、キリがない。

「サキ、リュウ! いくぞッ!」
「はいッス!」
「はいですぅ」
「「「エアリアルブロークン」」」

 広範囲の上級風属性魔法だ。空気を凝縮させ、爆発を起こす。爆風と空気の塊が敵を襲うんだ。
 だが、しつこくまだ向かってくる奴等がいる。

「もう一発いくぞッ!」
「エアリアルブロークン!」

 3人でするよりは威力は劣るが、それでも敵を吹き飛ばした。

「ココ嬢!」
「殿下! 出ないで下さいッ!」
「しかし」
「アルベルトさん、殿下のお側に!」
「忝い!」
「伏せろ! もう一発いくぞぉッ!」

 霧島が上空から風の槍を出現させ敵を襲う。
 そんな中を王子が乗っている馬車を目掛けて突進していく者がいた。

「アルベルトさん!」

 ガキーン!!

 敵の剣をアルベルトの剣が受け止めた。
 
「サキ! リュウ!」

 俺は叫びながらその場へ向かう。が、雑魚達が邪魔でなかなか動けない。
 敵は強い。あいつはさっきアルベルトに傷を負わせた奴だ。
 ヤバイ、アルベルトがやられたら……
 そう思い焦っていた時だ。馬車の向こうから馬の一団が走ってきた。何だ? また新手なのか? マズイぞ。どうすんだ!?
 アルベルトがなんとか持ち堪えていたんだが、ほんの一瞬バランスを崩した。それを見逃さず敵はアルベルトに向かって剣を振りかぶる。ヤバイ! やられてしまうッ!
 と、思っていたらアルベルトに斬り込んできた奴の胸に、どこからか飛んできた剣がグサッと突き刺さった。



   ☆            ☆            ☆


読んで頂きありがとうございます!
今日はハルちゃんお休みです。
宜しくお願いします!
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

処理中です...