おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

撫羽

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第5章 王都へ

167ー意気投合?

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「お母様、お父様、お兄様……か、痒くないです……水泡がないです……!」
「良かった……良かったわ!」
「有難うございます。なんとお礼を申せばよいのか……!」
「有難うございます!」

 伯爵や夫人、兄だけでなく、その部屋にいたメイドさん達まで涙ぐんでいる。本当に好かれているのがよく分かる。良い領主なんだな。

「しかし、どんな薬師に診せても分からなかったのです。なのにどうして分かったのですか?」

 そりゃそうだ。ちょっとテンパってしまって説明するのを忘れていた。なのに、あんなにアッサリと薬湯を飲ませた。それだけ、手詰まりだったのだろう。

「実は、ご内密にお願いしたいのですが……」

 と、ディオシスじーちゃんが俺の鑑定眼を説明した。そして、領地にいるエルフから魔法や薬湯等の教えを受けていると。偶々、本当に偶然にこの街へ来る途中で角有りのオオトカゲを討伐していて、薬湯に必要な角を持っていたのだと説明した。

「なんと……あの鑑定眼にエルフですか!?」
「はい。ですので、どうかご内密にお願いします」
「はい、それはもう、もちろんです。娘を助けて頂いたのです。あなた方の不利になるようなことは一切公言しないと誓いましょう」
「はい、もちろんですわ」

 良かった。俺も役に立てた。ホッとした。薬湯を思い出せない時はどうしようかと思ったよ。超焦ったぜ。霧島のお陰だな。

『俺様は知識もスゲーだろ?』
『まだ盗み聞きしてたのかよ』
『ココ、お前本当にヒデーぞ』
『アハハハ、有難うな』
『おうよ』

 霧島、意外に頼りになる奴だ。この旅で何度も救われた。感謝してるぜ。

『へへん! あたぼうだろう』
『こら、まだ聞いてる!』

 本当に、あれがなかったらなぁ。俺の思っている事を全部聞いてんじゃないだろうな。怪しいぞ。今後、気を付けよう。

「ココォーッ! よくやったッ!」

 宿に戻ると父が、そう言いながらまたまたガシッと抱き着いてきた。
 もう知っているのかよ、早いな。

「本当によくやったッ! 病で1年など可哀そうだからなッ」
「はい、父さま。クリスティー先生に教わった病で良かったです」
「なんとッ、クリスティー先生にかッ!?」

 本当に良かった。てか、思い出して良かったよ。

「まったくだぜ、一時はどうなるかと思ったぜ」
「キリシマ、どこから聞いていたのよ」
「まあ、なんだ。最初からだな」
「なによそれ。まあ、今回は助かったわ。ありがとう」
「良いって事よ。俺様は頼りになるだろう?」
「本当にね」
「おうよッ」

 その翌日、例の伯爵夫妻が宿まで訪ねて来た。

「まさか辺境伯も来られているとは思いませんでした」
「大事にはしたくないのです。ご内密にお願いします」

 珍しく、父の声が大きくないぞ。普通にできるんだな。

『ココ、お前ほんとヒデーぞ』

 ハハハ、確かに。

「昨日は有難うございました。どうお礼を申せばよいのか。心より感謝しております」
「お役に立てた様で良かったです」
「辺境伯ご自身がこちらにおられるという事は王都へ向かわれているのですか?」
「そうなのですが、何分、目立ちたくはないのです」
「辺境伯……もしや、第3王子殿下の件ですかな?」
「耳に入っとりますか?」
「もちろんです」

 伯爵は話し出した。昨日はディオシスじーちゃんとロディ兄、俺が訪問したが、父もいるならもしやと予想していたのかも知れない。
 伯爵も第3王子のクーデターの件を知っていた。そして……

「まだ殿下が幼い頃にお目通りした事があります。私はあのご聡明だった第3王子殿下がそのような事を考えられる筈がないと思っております。そして、噂では辺境伯が保護されていると聞きました」

 ほら、これは読まれているぞ。きっとここにも王子がいるのではないかと思っているんじゃないか? だって、でないと不自然だ。辺境伯の身分を隠し、庶民が宿泊する様な宿に宿泊しているんだ。いつもの父ならそうはしないだろう。いや、どうだろう? 父ならもしかしたら態々庶民の宿屋に泊まるかも知れない。

「伯爵……」
「昨日、我が娘の命を救って頂いた事とは関係なく、私は辺境伯の不利になる事は言いませんぞ」

 関係なく? どういう事だ?

「私は王都に住んでいる訳ではありません。自分の領地を治めるので精一杯ですからな。それでも、耳にはします。馬鹿な貴族の政略争いをです。そんな事をしているヒマがあるのなら、自分の領地の領民の事を考えろと言いたいものです」
「おぉ、そう思われますか!?」
「はい。辺境伯もそうではないですかな?」
「その通りです。私も領地を治める事で手一杯です。今回の様な馬鹿な野望など……」

 あ、馬鹿って言った。
 しかしこの伯爵、父とはタイプこそ違うが同じ様な考えを持っている様だ。これは心強い。
 今まで、父とは交流がなかったというが、これを機に交流できると良いな。
 なんて思っていると、当の2人は意気投合したらしく父は『内緒なのです』とまた言いながら王子の事を打ち明けていた。そんな感じでも良いのかよ。
 疑い出すとキリがない。だけど、今回は知られない方が良いのじゃないのか?



   ☆            ☆            ☆

読んで頂きありがとうございます!
今日はこの後、ちびっ子~投稿します。
宜しくお願いします!
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