おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

撫羽

文字の大きさ
上 下
164 / 249
第5章 王都へ

164ー領主の一人娘

しおりを挟む
「ココ、乗せてあげよう」
「お祖父さま、いいですか?」
「ああ、いいよ。そろそろ飽きているだろう?」
「はい、飽きました」

 で、早速俺はディオシスじーちゃんの馬に乗せてもらっている。まあ、馬に乗ろうが景色が変わる訳じゃないんだけどさ。気持ちの問題だ。
 馬車と違って、視界が開けるし目線が高いんだ。最初はちょっと怖かった位だ。

「ココも馬に1人で乗れるようにならないとね」
「お祖父さま、まだ足が届きません」
「そうだね、まだまだだ。慌てて大きくなる事はない」
「お祖父さま?」
「クリスティー先生にも言われなかったかい?」
「何をですか?」
「今の時を足掻き楽しみなさいと」
「言われました」
「私も言われたよ」

 ディオシスじーちゃんが思い出話をしてくれた。
 じーちゃんがまだ俺位の歳の頃だ。ユリシスじーちゃんとは違ってなかなか剣が上達しなかったらしい。そうは見えないんだけどさ。ユリシスじーちゃんとディオシスじーちゃんとは3歳違うんだ。俺の頃の3歳は大きい。ディオシスじーちゃんが8歳だとしたら、ユリシスじーちゃんは11歳だから体形も違ってくるだろう。
 それで、追いつこうと毎日オーバーワーク気味に鍛練をしていた時期があったそうだ。そんな時にクリスティー先生に言われたそうだ。
 其々のペースがある。その歳でも違ってくる。『今の歳を目一杯足掻いて楽しみなさい。無茶をする事は違いますよ』と、言われたそうだ。

「クリスティー先生、本当何歳なんでしょう?」
「ハハハ、クリスティー先生の歳を詮索してはいけないな。恐ろしい事になるからね」
「えぇ~、怖いです」
「だろう? だから止めておきなさい」

 俺も、今の歳を楽しめって事なんだろう。今の俺に出来る事を精一杯しろと。
 俺の場合、性別もだからなぁ。それも、受け入れて楽しめって事なんだろうな。女児の俺に出来る事……まだ1人で馬にさえ乗れないのにそんな事あんのか?
 なんて、少し考えていた。
 この旅の目標は、王子の問題をクリアにする事だ。だけど、俺にとっても大事な旅になりそうだ。
 旅は順調に進み、幾つかの街を超えあと少しで王都だってところまで来た。
 今日は、街に宿泊するらしい。その街に到着して入門したところなのだが、なにやら街の様子がおかしい。

「何だろう?」
「若さまぁ、出ないでくださいよぅ」
「出ねーよ」

 闇雲に出ても仕方ないじゃん。それくらい俺だって分かっているさ。

「あ、止まりますねぇ」
「宿屋かな?」
「はいぃ。この雰囲気だと歌ったりできないでしょうしぃ」
「だよなぁ」

 そうなんだよ。街の雰囲気が暗いんだ。何か不幸があったのか? て、感じなんだよ。
 多分、もう少し待っていればロディ兄が情報を掴んでくるさ。それまで、大人しくしておこう。
 思っていた通り、直ぐにロディ兄が情報を持ってきた。

「領主の一人娘が病らしいですよ」
「ほう、それにしてもその事を領民が心配しているのか?」
「みたいです。ここの領主はとても領民に好かれていますから。その中でも一人娘は小さな頃から民と分け隔てなく育てられたそうですよ」
「ほう、なかなかそうはいかんな」

 話によると、良い領主みたいだ。街の祭等も率先して民の中に入って交流を持つ人らしい。今、病らしい娘の上に兄がいるそうだが、その兄も父と同じように領民と一緒になって収穫を手伝ったりしているらしい。領主の奥方も教会や孤児院に出入りしていて、男手では気が付かないような事を中心に働いているらしい。良い領主じゃん。だから、街の人達も心配するんだろうな。
 だが、病ってだけでこんなに暗くなるのか?

「それが、どの薬師に見せても駄目なんだそうです」
「なんだと?」
「もう1年は寝込んでいるそうで」
「1年だとッ! それは長いッ!」
「はい、だからもう駄目なんじゃないかと言われているそうです」
「治せないのか? 何の病なのだ?」
「それも分からないそうです」
「そうなのかッ! それは心配だ」

 俺、見ようか? いやいや、見ても治せるかどうか分かんねーしな。

「ココォッ!」

 あ、父に呼ばれちゃったぞ。嫌な予感がするぞ。

「はい、父さま」
「ココ、見て差し上げないか?」
「父さま、それは構わないのですが……」
「なんだ?」
「父上、出しゃばっても治せるかどうか分かりませんから」
「しかし、何の病か位は分かるだろう?」
「はい、多分ですが」
「取り敢えず、父上。お見舞いにしましょうか」
「見舞いか?」
「はい、父上。それでココにこっそり見てもらいましょう」
「ふむ……そうか? しかし、命が掛かっているのだぞ」
「父上はここの領主様と交流は?」
「ないなッ!」
「なら、やはり通りすがりで噂を聞いてお見舞いに、と言う事にしましょう」
「そうか、ロディに任せたぞ」
「じゃあ、私が付いて行こう」
「ディオシスお祖父さま」
「アレクシスが顔を出さない方が良いかも知れん。様子をみようか」
「はい、お祖父様」

 その方が良い。どの薬師にも病名さえ分からないというのが引っ掛かる。
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は

だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。 私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。 そのまま卒業と思いきや…? 「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑) 全10話+エピローグとなります。

処理中です...