162 / 249
第5章 王都へ
162ーいいもの見っけ
しおりを挟む
「この先の沼地に角有りのオオトカゲがいますッ!」
「なんだとぉ!?」
ユリシスじーちゃんは直ぐに取って返す。元気に木々の間を走って行く。俺はオオトカゲを討伐した事がない。魔物討伐の経験が少ないからな。
「ディオシスお祖父さま」
「ああ、普通は角がないはずなんだけどね。何か異変でもあったのか?」
「角有りと言う事は魔物ですよね」
「そうなるね。だが、オオトカゲと言ってもそう強い部類には入らない。ちょっと外皮が堅いんだけど、村人でも2人で討伐すれば平気だろう」
「でもそれは、角がない場合ですよね?」
「そうだね」
大変だ。俺は思わず林の奥へと走って行った。俺なんかが行く必要はないだろうけど、それでもじっと待っている事なんてできなかったんだ。
「若ッ、ユリシス様達なら大丈夫ッス」
「そうじゃない、そうじゃないんだ」
「若さまぁ?」
「熊とかオオトカゲとか角兎だってそうだ。村人の生活を脅かす事になるだろう? そんなのどうしてこんなに出てくるんだよ」
「そうッスね」
「若さまぁ、獣同士が争って負けた方を食べますぅ。角有りを食べますぅ。それを繰り返していくと途中で魔物に変化してしまう獣がいるんですぅ」
「そうなのか?」
「はいぃ。今回は偶々でしょうけどぉ、角有りが多い事は確かですぅ」
「そうか」
咲の話しを聞きながら俺はユリシスじーちゃんの元へと急ぐ。俺はそんな事も知らなかった。本当に勉強不足、経験不足だ。
「ココ、邪魔をしたら駄目だよ」
「ディオシスお祖父さま、邪魔なんてしませんッ」
「アハハハ」
それだけ、俺は弱いって事かよ。悔しいなぁ。
「ココはまだ獣に対しても魔物に対しても経験が少ないからね」
「分かってます、お祖父さま」
そうさ、俺は皆の中で1番経験が少ない。いくら鍛練していたって経験値を稼げるわけじゃない。圧倒的に経験が足らないんだ。
それでも、俺はじっとしていられない。
しばらく林の中を行くとじーちゃんの声が聞こえてきた。
「よぉしぃッ! 喉をねらえぇーッ!」
ユリシスじーちゃんが指示を出している。ディオシスじーちゃんが話していた通り、オオトカゲは外皮が堅い。なので、先に尻尾を攻撃してオオトカゲが上を向いた瞬間に比較的外皮の柔らかい喉を狙うんだ。
これは、他の魔物に対してもよく使う手だ。
俺達が現場に着くともうオオトカゲは討伐されていた。沼から出てきて直ぐのところを討伐したのだろう。沼の直ぐ横にワニの様な大きなトカゲが横たわっていた。外皮がゴツゴツとしていて、いかにも硬そうだ。大きな口を開けている。
「デカイッ」
「デカイッスね」
「うわぁ」
咲なんて引いているぞ。そのポーズはやめろ。両手をパーにして口の前にもっていっている。その手も表情もあざといんだよ。
「おうッ、ココ! 見にきたのかッ!?」
「ユリシスお祖父さま、あたしも参加したかったです」
「ワッハッハッハ! これしきアッと言う間だ。残念だったなッ」
本当、残念だよ。せめて、討伐しているところを見たかったぜ。
ああ、オオトカゲの喉がパックリと割れている。これが致命傷だな。頭には立派な角が3本あった。
隊員達がオオトカゲもマジックバッグへと収納している。
「ディオシスお祖父さま、オオトカゲも食べられるのですか?」
「もちろんだよ。それに外皮も売れるんだ。冒険者達の装備になるんだよ」
ほう~。捨てる部位がないという感じだろうか?
「ココ、マジックバッグを余分に持っていないかい?」
「お祖父さま、ありますよ」
ふふふ、俺は分かっちゃったぜ。
「若さまぁ、何ですかぁそのお顔はぁ」
うるせーよ。
「若、マジックバッグッスか?」
「そうそう。きっとこの村に残していくんだろう。中に今日討伐した獲物をどっさり入れてさ」
「そうッスよね」
「旦那様らしいですぅ」
だよね~。父ならそうするよな。まさかこんな事までしているとは思わなかった。自慢の父だよ。見直したぜ。
「ただ声が大きいだけかと思ってた」
「そんな筈ないッス」
「冗談だよ。分かってるって」
さあ、村に戻ろう。と、思って歩き出していたんだ。咲や隆と3人でのんびりとさ。
「ん……?」
おや? その時、俺の視界の隅に入った木々の間にチラッと見えた。
「あれ?」
「若、どうしたッスか?」
「ちょっと向こうへ行くぞ」
「え? 若さまぁ?」
俺は、気になった方へと少し戻る。足場が悪いな。木の幹がボコボコ出ていて歩きにくい。ここら辺は本当に立派な木が多い。街道から少し逸れただけなのに林になっているんだな。
そして、じーちゃん達がオオトカゲを討伐していた場所を過ぎ、沼地を少し過ぎた場所だ。
「ほら、やっぱり」
「若、何ッスか?」
「ほら、リュウ。これ薬草だよ。しかもなかなか栽培できない種類だ」
「本当ですかぁ?」
「間違いないよ。領地でも栽培しようとしていたんだ。でも気候が合わなくて、その上領地の土だと水捌けが良すぎて育たなかったんだよ」
「そうなんですかぁ?」
そうだよ、母と残念だなぁ~って話していたんだ。領地の気候には合わなかったんだ。潮風も砂混じりの土も駄目だったんだ。
そこには、ポーション類には必要な薬草が群生していたんだ。
「なんだとぉ!?」
ユリシスじーちゃんは直ぐに取って返す。元気に木々の間を走って行く。俺はオオトカゲを討伐した事がない。魔物討伐の経験が少ないからな。
「ディオシスお祖父さま」
「ああ、普通は角がないはずなんだけどね。何か異変でもあったのか?」
「角有りと言う事は魔物ですよね」
「そうなるね。だが、オオトカゲと言ってもそう強い部類には入らない。ちょっと外皮が堅いんだけど、村人でも2人で討伐すれば平気だろう」
「でもそれは、角がない場合ですよね?」
「そうだね」
大変だ。俺は思わず林の奥へと走って行った。俺なんかが行く必要はないだろうけど、それでもじっと待っている事なんてできなかったんだ。
「若ッ、ユリシス様達なら大丈夫ッス」
「そうじゃない、そうじゃないんだ」
「若さまぁ?」
「熊とかオオトカゲとか角兎だってそうだ。村人の生活を脅かす事になるだろう? そんなのどうしてこんなに出てくるんだよ」
「そうッスね」
「若さまぁ、獣同士が争って負けた方を食べますぅ。角有りを食べますぅ。それを繰り返していくと途中で魔物に変化してしまう獣がいるんですぅ」
「そうなのか?」
「はいぃ。今回は偶々でしょうけどぉ、角有りが多い事は確かですぅ」
「そうか」
咲の話しを聞きながら俺はユリシスじーちゃんの元へと急ぐ。俺はそんな事も知らなかった。本当に勉強不足、経験不足だ。
「ココ、邪魔をしたら駄目だよ」
「ディオシスお祖父さま、邪魔なんてしませんッ」
「アハハハ」
それだけ、俺は弱いって事かよ。悔しいなぁ。
「ココはまだ獣に対しても魔物に対しても経験が少ないからね」
「分かってます、お祖父さま」
そうさ、俺は皆の中で1番経験が少ない。いくら鍛練していたって経験値を稼げるわけじゃない。圧倒的に経験が足らないんだ。
それでも、俺はじっとしていられない。
しばらく林の中を行くとじーちゃんの声が聞こえてきた。
「よぉしぃッ! 喉をねらえぇーッ!」
ユリシスじーちゃんが指示を出している。ディオシスじーちゃんが話していた通り、オオトカゲは外皮が堅い。なので、先に尻尾を攻撃してオオトカゲが上を向いた瞬間に比較的外皮の柔らかい喉を狙うんだ。
これは、他の魔物に対してもよく使う手だ。
俺達が現場に着くともうオオトカゲは討伐されていた。沼から出てきて直ぐのところを討伐したのだろう。沼の直ぐ横にワニの様な大きなトカゲが横たわっていた。外皮がゴツゴツとしていて、いかにも硬そうだ。大きな口を開けている。
「デカイッ」
「デカイッスね」
「うわぁ」
咲なんて引いているぞ。そのポーズはやめろ。両手をパーにして口の前にもっていっている。その手も表情もあざといんだよ。
「おうッ、ココ! 見にきたのかッ!?」
「ユリシスお祖父さま、あたしも参加したかったです」
「ワッハッハッハ! これしきアッと言う間だ。残念だったなッ」
本当、残念だよ。せめて、討伐しているところを見たかったぜ。
ああ、オオトカゲの喉がパックリと割れている。これが致命傷だな。頭には立派な角が3本あった。
隊員達がオオトカゲもマジックバッグへと収納している。
「ディオシスお祖父さま、オオトカゲも食べられるのですか?」
「もちろんだよ。それに外皮も売れるんだ。冒険者達の装備になるんだよ」
ほう~。捨てる部位がないという感じだろうか?
「ココ、マジックバッグを余分に持っていないかい?」
「お祖父さま、ありますよ」
ふふふ、俺は分かっちゃったぜ。
「若さまぁ、何ですかぁそのお顔はぁ」
うるせーよ。
「若、マジックバッグッスか?」
「そうそう。きっとこの村に残していくんだろう。中に今日討伐した獲物をどっさり入れてさ」
「そうッスよね」
「旦那様らしいですぅ」
だよね~。父ならそうするよな。まさかこんな事までしているとは思わなかった。自慢の父だよ。見直したぜ。
「ただ声が大きいだけかと思ってた」
「そんな筈ないッス」
「冗談だよ。分かってるって」
さあ、村に戻ろう。と、思って歩き出していたんだ。咲や隆と3人でのんびりとさ。
「ん……?」
おや? その時、俺の視界の隅に入った木々の間にチラッと見えた。
「あれ?」
「若、どうしたッスか?」
「ちょっと向こうへ行くぞ」
「え? 若さまぁ?」
俺は、気になった方へと少し戻る。足場が悪いな。木の幹がボコボコ出ていて歩きにくい。ここら辺は本当に立派な木が多い。街道から少し逸れただけなのに林になっているんだな。
そして、じーちゃん達がオオトカゲを討伐していた場所を過ぎ、沼地を少し過ぎた場所だ。
「ほら、やっぱり」
「若、何ッスか?」
「ほら、リュウ。これ薬草だよ。しかもなかなか栽培できない種類だ」
「本当ですかぁ?」
「間違いないよ。領地でも栽培しようとしていたんだ。でも気候が合わなくて、その上領地の土だと水捌けが良すぎて育たなかったんだよ」
「そうなんですかぁ?」
そうだよ、母と残念だなぁ~って話していたんだ。領地の気候には合わなかったんだ。潮風も砂混じりの土も駄目だったんだ。
そこには、ポーション類には必要な薬草が群生していたんだ。
87
お気に入りに追加
2,977
あなたにおすすめの小説
ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました
星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。
出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む
家具屋ふふみに
ファンタジー
この世界には魔法が存在する。
そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。
その属性は主に6つ。
火・水・風・土・雷・そして……無。
クーリアは伯爵令嬢として生まれた。
貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。
そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。
無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。
その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。
だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。
そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。
これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。
そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。
設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m
※←このマークがある話は大体一人称。
お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ
雑木林
ファンタジー
現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。
第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。
この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。
そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。
畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。
斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる