おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

撫羽

文字の大きさ
上 下
145 / 249
第5章 王都へ

145ー何でだ?

しおりを挟む
「どうしてこんなになるまで盗賊団を捕まえられなかったのかだ」
「ロディ兄さま?」
「街を守っている兵達がいる。街には冒険者ギルドもあった。なのにここまでなのはおかしいね」
「殿下」

 冒険者ギルド、あったのか? 俺は全然気がつかなかった。
 大きな街だ。辺境に1番近い街だから、他所に比べると魔物討伐のクエストもあって冒険者も多く滞在しているのだそうだ。
 大店の仕入れだとかになると、冒険者に護衛を依頼するのだそうだ。それでも、盗賊団に襲われた。それだけ手強い盗賊団だったのだろうか?
 それにしては、父とじーちゃんがアッサリと捕縛してきたよな。俺には分からんな。

「お嬢さまぁ、まだまだお子ちゃまですからぁ」
「うっせーよ」
「ふふふぅ」

 実際、そうなんだ。この世界では、まだまだお子ちゃまだから知らない事が多い。悔しいけどな。
 ロディ兄と王子は父達を待っていた。
 だが、なかなか戻って来ない。領主邸には戻っている筈だ。どうしたのだろう?

「もしかして、父上も気付いたか?」
「ロディ、そうかも知れないね」

 何だ? 何の事なんだよ。教えてくれよ。

「ココ、どうして今まで盗賊団を捕まえられなかったのかだね」
「兄さま、それは逃げ足が速いからと伯爵様が……」
「そうだね」
「それだけではないだろうね」
「殿下……」
「尋問しているのかも知れない」
「そうだね」

 昼食が終わってもまだ父達は戻って来なかった。

「何をしているのかしら?」
「お嬢、多分尋問ッスよ」
「それは兄さまも言ってらしたわ」
「だから時間が掛かってるんスよ」
「だからね、何の尋問をしているのかって事よ」
「そりゃあ、色々っス」

 なんだよ、もしかして隆も分かっているのか? 分かってないのって俺だけ?

「お嬢さまぁ、お茶でも入れましょうかぁ?」
「いいわ、サキ。庭でも散歩するわ」
「はいですぅ」
「お嬢、じっとしてらんない性分ッスよね」

 うっせーんだよ。じっと待っているのが苦手なんだよ。
 庭に出たら、ディオシスじーちゃんとノワ、それに霧島がいた。

「ココ、どうした。何考え込んでんだ?」
「アウゥ?」
「なんでもないわ。父さま達が遅いなぁって思って」

 そういいながらノワの頭を撫でる。千切れんばかりに尻尾を振っている。ああ、癒されるぜ。

「ココ、まだ尋問中みたいだ」
「ディオシスお祖父さま、長くないですか?」
「色々あるのだろう」
「また、色々ですか?」
「どうした?」

 その色々が俺には分からない。ロディ兄と王子は分かっているみたいだが、俺だけ分からないとディオシスじーちゃんに話した。

「なんだ、そんな事か。ココは令嬢なんだしまだ幼い。分からなくて当然なんだよ」
「だってお祖父さま、わたしだけ分からないのは嫌です」
「アハハハ、その内分かるさ」

 だからさぁ、俺は今知りたいんだ。

「ココ、ロディは何と言っていた?」
「兄さまは……」

 どうして今まで盗賊団を捕まえられなかったか。と言っていた。逃げ足が速いだけではないのだろう。そんな口ぶりだった。
 だから、どういう事なんだ?

「ヒントはロディが言っているよ」
「お祖父さま、分かりません」
「アハハハ。じゃあ大人しく待っていなさい」

 なんだよ、じーちゃんも教えてくれないんだ。
 そんな事をしていたら、裏から父とユリシスじーちゃんが歩いてきた。

「父さま、ユリシスお祖父さま」
「なんだ、ココどうしたッ!」

 うん、相変わらず声が大きい。

「父さま、盗賊団を尋問したのですか?」
「ああ」
「ココ、また後でなッ!」

 それだけ言って、父とユリシスじーちゃんは邸に入って行った。

「ココ、行こう」
「え? ディオシスお祖父さま、いいのですか?」
「ああ。その目でしっかりと見ると良い」
「はい、お祖父さま」

 なんだか分からんが、ハッキリするらしい。
 俺はディオシスじーちゃんに連れられて父の後を追った。
 どうやら応接室で伯爵と話しているらしい。父の大きな声が聞こえる。

「これはイカンぞッ!」
「街の腐敗につながるッ!」

 父もユリシスじーちゃんも大きな声で憤慨している。
 何があったのだろう?
 そこに街の兵が数人呼ばれたらしく、部屋に入って行った。

「衛兵の責任者だね」
「なかなか捕まえられなかったからですか?」

 俺は、ディオシスじーちゃんと部屋の外で見ていた。
 なんだか、入り難い空気なんだよな。

「なんとッ! 気付いていなかったのかぁッ!?」

 また父の大きな声だ。
 そしてまた衛兵が3人入って行った。呼ばれたのかな?

「濡れ衣だ! 俺は知らない!」

 今度は兵らしき声が聞こえた。なんだ? どうしたんだ?

「ココ、よく考えてみなさい。衛兵の責任者が呼ばれた。その後で、2人の兵に挟まれながらまた兵が入って行った。そして、あの言葉だ」

 父が、街の腐敗に繋がると言っていた。知らなかったのかとも。そして兵達。
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

転生したら悪役令嬢の兄になったのですが、どうやら妹に執着されてます。そして何故か攻略対象からも溺愛されてます。

七彩 陽
ファンタジー
 異世界転生って主人公や何かしらイケメン体質でチートな感じじゃないの!?ゲームの中では全く名前すら聞いたことのないモブ。悪役令嬢の義兄クライヴだった。  しかしここは魔法もあるファンタジー世界!ダンジョンもあるんだって! ドキドキワクワクして、属性診断もしてもらったのにまさかの魔法使いこなせない!?  この世界を楽しみつつ、義妹が悪役にならないように後方支援すると決めたクライヴは、とにかく義妹を歪んだ性格にしないように寵愛することにした。 『乙女ゲームなんて関係ない、ハッピーエンドを目指すんだ!』と、はりきるのだが……。  実はヒロインも転生者!  クライヴはヒロインから攻略対象認定され、そのことに全く気付かず義妹は悪役令嬢まっしぐら!?  クライヴとヒロインによって、乙女ゲームは裏設定へと突入! 世界の破滅を防げるのか!?    そして何故か攻略対象(男)からも溺愛されて逃げられない!? 男なのにヒロインに!  異世界転生、痛快ラブコメディ。 どうぞよろしくお願いします!

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

処理中です...