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第5章 王都へ
139ー出発だ!
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そんなこんなで出発の日になった。もう既に朝一で、捕まえた襲撃者を護送する為に領主隊が王都へ向かって出発している。
俺達は少しずつ目立たない様に裏口から出発だ。どうせ、この邸は見張られているだろうからな。その目を惑わせたいんだ。俺達が邸を出発したのを数日で良いから誤魔化したい。
「ココ、そろそろ出るよ。いいかい?」
「はいッ、ロディ兄さま」
「ココちゃん、あまりおてんばしたら駄目よ」
「母さま、あたしはそんな事しません」
「あら、いやだ。ココちゃんったら自覚がないのね」
なんだって?
「サキ、リュウ、お願いね」
「はいですぅ」
「了解ッス」
腑に落ちないぜ。
邸の裏から幌馬車に乗って出発だ。出発前にロディ兄が改良しただけの事はある。
たかが幌馬車なのに、乗り心地が良いんだ。ガタゴトお尻に響かない。それに、クッションやマットを沢山積んでくれている。野営の時にこのまま眠れそうだ。
俺達の馬車の前を行く幌馬車にはメイドさんが数人乗っている。
後ろは侍従が乗った幌馬車だ。旅芸人と商人の一行といったところか。
俺の膝の上にはノワが、横には霧島がチョコンと座っている。小っせーな。
同じ幌馬車にはロディ兄と王子が一緒だ。咲と隆、アルベルト、ソフィ、そしてロディ兄の従者のランスが御者として乗っている。
父とバルト兄、じーちゃん2人は馬だ。みんな、平民の恰好をしている。が、父達はちょっと無理があると思うぜ。あんなに体格の良い平民はいないだろう? て、話しだよ。じーちゃん達なんて、一体何歳なんだ? てくらい体格が良い。おまけに元気だ。もちろん、声が大きいのも標準装備だ。
メイドさん達は楽しそうに、旅芸人の装束でウフフ、キャハハと盛り上がっている。
俺達はちょっと裕福そうな商人の恰好だ。これもミリーさん達が頑張って作ってくれた。感謝だ。
邸では、父と兄の影武者が頑張ってくれている筈だ。
無事に俺達の馬車は領地を出た。一面の平原地帯だ。森に近い方は庶民でも倒せる程度の魔物が出るらしい。
俺は8歳になって初めての旅だ。今まで領地から出た事がなかったんだ。
普通、平民は特別な事がない限り領地からは出ない。というか出られないんだ。街から街まで距離がある。そんな旅を普通はする事がない。
商人や冒険者なら行き来はするが、一般庶民は産まれた街で何らかの職に就いて生活している。
前を行くメイドさん達が乗った馬車から歌声が聞こえてきた。今、国で流行っている歌なのだそうだ。前世の歌とは全くちがう。まるで、フォークダンスの時の歌の様だ。
旅芸人に変装するとかよりも、楽しんでいる様だ。度胸が良い。感心するぜ。俺もあっちに乗りてー。
「お嬢さまぁ、大丈夫ですかぁ?」
「え? サキ、何が?」
「酔ったりしてませんかぁ?」
「大丈夫よ」
「うっぷ……」
おいおい、誰かが馬車に酔ってるぞ。
「俺、飛んどくわ」
霧島かよ! ドラゴンて馬車に酔うのかよ!
「振動がな、うっぷ……」
大丈夫かよ。水飲むか?
「ありがとうよ。飛んでたらなんともないぜ」
「王都までずっとそうやって飛んでるの?」
「おうッ」
ま、好きにするといいさ。王都まで何日も掛かるけどな。
「え……ココ、やっぱ肩に乗せてくれよ」
「え、吐かない?」
「吐かねーよ!」
「じゃあいいわよ」
霧島が俺の肩に乗ってきた。
「ん、ここならマシだな」
何か頼んないんだよな、霧島ってさ。
「なんでだよッ! 俺ほど頼り甲斐のあるドラゴンはいねーぞッ!」
「はいはい」
「ココ。マジ俺には冷てーなッ!」
「ふふふ」
ほらまた王子に笑われちゃったよ。
「来る時は身体が辛くで景色どころじゃなかったけど、ずっと平原が続くんだね」
見渡す限りの広大な平原が目の前に広がっていた。空には綿菓子の様な薄い雲が所々にある、薄い色した青空だ。風が枯草を巻いて通り過ぎて行く。所々に生えている木々の葉は少し黄色くなっている。
もう、王都じゃ上着がいるだろうな。
「兄さま、空気が違いますね」
「海から遠くなると潮風も感じなくなるからだろう」
そっか。領地は海に近いからな。潮の匂いが風に混じっているのが普通だった。どんどん乾いた風になっていく。
「良い天気だ」
王子も呑気だね。
「慌てても仕方がないだろう?」
「確かにそうですね」
「それにね、自分を憐れむのはもうやめたんだ」
「殿下……?」
「確かに精神干渉だったんだろうけどね。自分は仕方ないんだ。こんな運命なんだ。と思うのを止めたんだ」
「はい……」
「スッキリしたよ。僕は僕を諦めない。とことん足掻いてみるよ」
「はい、殿下」
おう、良い事だ。良い顔をする様になったよ。
「こんなに心強い味方がいるんだしね」
「おうッ、任せろッ!」
霧島、お前出てくんなよ。折角良い話をしてるんだからさぁ。台無しじゃんか。
「あ、ひでー!」
「兄さま、次の街までどれくらいですか?」
「そうだね、2~3日じゃないかな?」
そんなにあんのかよ。遠いな。
「ココ、街と街の間はそんなもんだよ」
「兄さま、そうなんですか?」
「ああ。次の街は父上と仲の良い伯爵が治めている街なんだ。邸に泊めてもらえるだろう」
て、事はそれまでは馬車泊か。
俺は小さいから良いけどさ。兄達はどうすんだろう?
「ちゃんとテントを持って来ているよ。ココが頑張ってマジックバッグを作ってくれたから、色々持って来られて便利だよ」
「良かったです」
「馬もね、助かるんだよ」
「兄さま、馬ですか?」
「そうだよ。沢山の荷物を載せて人も乗るとなると重さが違うだろう?」
なるほど。そりゃ、良かった。頑張った甲斐があるよ。
俺達は少しずつ目立たない様に裏口から出発だ。どうせ、この邸は見張られているだろうからな。その目を惑わせたいんだ。俺達が邸を出発したのを数日で良いから誤魔化したい。
「ココ、そろそろ出るよ。いいかい?」
「はいッ、ロディ兄さま」
「ココちゃん、あまりおてんばしたら駄目よ」
「母さま、あたしはそんな事しません」
「あら、いやだ。ココちゃんったら自覚がないのね」
なんだって?
「サキ、リュウ、お願いね」
「はいですぅ」
「了解ッス」
腑に落ちないぜ。
邸の裏から幌馬車に乗って出発だ。出発前にロディ兄が改良しただけの事はある。
たかが幌馬車なのに、乗り心地が良いんだ。ガタゴトお尻に響かない。それに、クッションやマットを沢山積んでくれている。野営の時にこのまま眠れそうだ。
俺達の馬車の前を行く幌馬車にはメイドさんが数人乗っている。
後ろは侍従が乗った幌馬車だ。旅芸人と商人の一行といったところか。
俺の膝の上にはノワが、横には霧島がチョコンと座っている。小っせーな。
同じ幌馬車にはロディ兄と王子が一緒だ。咲と隆、アルベルト、ソフィ、そしてロディ兄の従者のランスが御者として乗っている。
父とバルト兄、じーちゃん2人は馬だ。みんな、平民の恰好をしている。が、父達はちょっと無理があると思うぜ。あんなに体格の良い平民はいないだろう? て、話しだよ。じーちゃん達なんて、一体何歳なんだ? てくらい体格が良い。おまけに元気だ。もちろん、声が大きいのも標準装備だ。
メイドさん達は楽しそうに、旅芸人の装束でウフフ、キャハハと盛り上がっている。
俺達はちょっと裕福そうな商人の恰好だ。これもミリーさん達が頑張って作ってくれた。感謝だ。
邸では、父と兄の影武者が頑張ってくれている筈だ。
無事に俺達の馬車は領地を出た。一面の平原地帯だ。森に近い方は庶民でも倒せる程度の魔物が出るらしい。
俺は8歳になって初めての旅だ。今まで領地から出た事がなかったんだ。
普通、平民は特別な事がない限り領地からは出ない。というか出られないんだ。街から街まで距離がある。そんな旅を普通はする事がない。
商人や冒険者なら行き来はするが、一般庶民は産まれた街で何らかの職に就いて生活している。
前を行くメイドさん達が乗った馬車から歌声が聞こえてきた。今、国で流行っている歌なのだそうだ。前世の歌とは全くちがう。まるで、フォークダンスの時の歌の様だ。
旅芸人に変装するとかよりも、楽しんでいる様だ。度胸が良い。感心するぜ。俺もあっちに乗りてー。
「お嬢さまぁ、大丈夫ですかぁ?」
「え? サキ、何が?」
「酔ったりしてませんかぁ?」
「大丈夫よ」
「うっぷ……」
おいおい、誰かが馬車に酔ってるぞ。
「俺、飛んどくわ」
霧島かよ! ドラゴンて馬車に酔うのかよ!
「振動がな、うっぷ……」
大丈夫かよ。水飲むか?
「ありがとうよ。飛んでたらなんともないぜ」
「王都までずっとそうやって飛んでるの?」
「おうッ」
ま、好きにするといいさ。王都まで何日も掛かるけどな。
「え……ココ、やっぱ肩に乗せてくれよ」
「え、吐かない?」
「吐かねーよ!」
「じゃあいいわよ」
霧島が俺の肩に乗ってきた。
「ん、ここならマシだな」
何か頼んないんだよな、霧島ってさ。
「なんでだよッ! 俺ほど頼り甲斐のあるドラゴンはいねーぞッ!」
「はいはい」
「ココ。マジ俺には冷てーなッ!」
「ふふふ」
ほらまた王子に笑われちゃったよ。
「来る時は身体が辛くで景色どころじゃなかったけど、ずっと平原が続くんだね」
見渡す限りの広大な平原が目の前に広がっていた。空には綿菓子の様な薄い雲が所々にある、薄い色した青空だ。風が枯草を巻いて通り過ぎて行く。所々に生えている木々の葉は少し黄色くなっている。
もう、王都じゃ上着がいるだろうな。
「兄さま、空気が違いますね」
「海から遠くなると潮風も感じなくなるからだろう」
そっか。領地は海に近いからな。潮の匂いが風に混じっているのが普通だった。どんどん乾いた風になっていく。
「良い天気だ」
王子も呑気だね。
「慌てても仕方がないだろう?」
「確かにそうですね」
「それにね、自分を憐れむのはもうやめたんだ」
「殿下……?」
「確かに精神干渉だったんだろうけどね。自分は仕方ないんだ。こんな運命なんだ。と思うのを止めたんだ」
「はい……」
「スッキリしたよ。僕は僕を諦めない。とことん足掻いてみるよ」
「はい、殿下」
おう、良い事だ。良い顔をする様になったよ。
「こんなに心強い味方がいるんだしね」
「おうッ、任せろッ!」
霧島、お前出てくんなよ。折角良い話をしてるんだからさぁ。台無しじゃんか。
「あ、ひでー!」
「兄さま、次の街までどれくらいですか?」
「そうだね、2~3日じゃないかな?」
そんなにあんのかよ。遠いな。
「ココ、街と街の間はそんなもんだよ」
「兄さま、そうなんですか?」
「ああ。次の街は父上と仲の良い伯爵が治めている街なんだ。邸に泊めてもらえるだろう」
て、事はそれまでは馬車泊か。
俺は小さいから良いけどさ。兄達はどうすんだろう?
「ちゃんとテントを持って来ているよ。ココが頑張ってマジックバッグを作ってくれたから、色々持って来られて便利だよ」
「良かったです」
「馬もね、助かるんだよ」
「兄さま、馬ですか?」
「そうだよ。沢山の荷物を載せて人も乗るとなると重さが違うだろう?」
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