おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

撫羽

文字の大きさ
上 下
138 / 249
第4章 立ち向かう

138ー驚いた

しおりを挟む
 俺は本当に目先の事しか考えてないんだな、と反省したよ。何かって?
 ロディ兄だ。この兄がだ、前に話していた文字の一覧表とえんぴつをセットで領地内の各家庭に配布したんだ。
 言い出しっぺの俺は、そんな事すっかり忘れていたよ。あれから、ロディ兄はしっかりと準備していたんだ。ガラスペンの売れ行きも上々だった。その収益を当てたらしい。
 俺は少し安く売ってくれれば良いかなぁ、て程度に考えていたんだ。それが、各家庭に1セットだが無償配布したんだ。
 やるね、ロディ兄。
 そして、子供用の一覧表と絵本の作成も着々と進んでいた。領地内で絵心のある人を人伝に何人も探し出し、俺が描いたものを手本に作成していたんだ。
 びっくりだね。そうなんだ、これだけでも驚いていたのにだ。

「お嬢様! がっつり褒めてくださいッ!」

 と、言っているのはナタリーさんだ。
 俺がマジックバッグ製作やなんやかんやで暫く作業場に来られなかった間に、大量の下着セットを作っていたんだ。

「本当に驚いたわ」
「ロディ様が取り敢えず森の近くに住んでいる人達から配布したいと仰っていたので頑張りました!」

 ミリーさんもう無理しないでくれよ。

「お嬢様、それだけじゃないですよ! ジャジャーン!」

 と、言ってルリアさんが出してきたのは父や兄、王子の上着とホワイトシャツにトラウザーズだ。

「上着しか飾りは出来なかったんですけど、同じ生地で作っています。これなら公の場にも着て行けますでしょう?」

 と、マニューさん。これ、生地を織るのも飾りだって大変だっただろうに。

「王都へ行かれると聞きました。何があるか分からないので、出来る事はしておきたかったのです」
「ミリーさん、みんな、ありがとう!」
「奥様とお嬢様のドレスも生地を提供してますからね!」
「ええ、ありがとう!」

 もう、ありがとうとしか言葉が出ないよ。こんなに頑張って無理したんじゃないのか?

「お嬢様達がお留守の間はゆっくりさせてもらいますよ」

 本当だよ、ミリーさん。みんな、ゆっくりしてくれよ。
 いやいや、それだけじゃないぞ。

「ちょっとマニューさん、この生地どうやったの!? 柄が浮き出ているじゃない!」
「ふふふ。気付きましたか?」

 そりゃあ気付くさ。父達の上着に使っている生地だ。よく見ると柄が織り込まれているんだ。これは凄い!

「ルイソさんですよ」
「え、ミリーさん。ルイソさんが考えたの?」
「考えただけでなく、実践してくれたんですよ」
「え? マニューさん、意味が分からない!」

 マニューさんの話によると、ルイソさんが……

「試したい事があるんですねぇ。1台織機を使わせて欲しいのですねぇ」

 と、突然言ってきたのだそうだ。幸い、織機がフル活動している時じゃなかった。

「構いませんよ」

 と、貸したらしい。そして暫く試行錯誤していたそうなんだが、織れた生地を見て驚いたんだそうだ。柄が織り込まれている。どうやったんだ? と、早速教えてもらったらしい。

「実は同系色で微妙に色が違うんですよ。あ、違うわ。ルイソさんが言うには糸の艶が違うそうなんです」

 凄いな、そんな糸まで作り出していたのかよ!?

「その糸を柄になるように使うんです。あんまりうまく説明できませんけど」

 いや、俺も聞いてもよく分からないよ。天才は違うね。て、思うさ。

「この飾りに使っている糸ももしかしてそうなの?」
「そうなんですねぇ」

 ミリーさん、口調がルイソ爺さんになってるぞ。

「なんでも、糸に綺麗な艶が出せたから飾りに使えると言ってきたんですよ」

 ルイソ爺さん、どこまで先を読んでいるんだ?

「ルイソ爺さんって天才よね」
「本当ですねぇ」

 艶が違うなんて、餌で調節しているんだろうけど。何を食べさせたら艶が出るんだよ。俺にはさっぱり分からんぞ。それを思いつくルイソ爺さんて、本当に何者なんだ?

「お野菜といえばルイソさんだったんですけどぉ」
「サキ、そうなの?」
「はいぃ、領地のお野菜はみんなルイソさんが改良をしたものですからぁ」
「そうなんだ」
「でもぉ、もうお野菜はやり尽くしたんでしょうねぇ」

 え、そんな問題か?

「新しい事に目がいってるんじゃないですかぁ?」
「そう?」
「いえぇ、知りませんけどぉ」

 なんだよ、それ。適当かよ。

「エヘッ」

 あ、誤魔化したな。
 なんでもいいや。とにかく、凄い事をしているんだって分かったよ。

「お嬢様、後ですね」

 え、まだあるのか?

「メイドさん達やお嬢様の街娘風の普段着も作ってみたんです」
「ミリーさん、凄い!」
「サキさんがデザインを描いてくれたのでパターンから作ったんですよ」
「いつの間にそんな事をしていたの?」
「お嬢さまはぁ、マジックバッグを作るのに大変そうでしたからぁ」

 まあな、丸3日掛かってしまったからな。

「みんな頑張りましたよ。気をつけて行ってらして下さいね」
「そうです。今回は危険だと聞きました」
「無事に帰ってきて下さいね」
「帰ってらしたらまた一緒に甘いおやつを食べましょうねッ」
「みんな、ありがとう!」

 よく頑張ってくれたよ。本当に感謝だ。ありがとう。
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

転生しても山あり谷あり!

tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」 兎にも角にも今世は “おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!” を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...