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第4章 立ち向かう

136ークリスティー先生は子供好き

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「ココ様も成人する頃には今より魔力量が増えているでしょうからね」

 成人する頃か。やっぱ早く大きくなりたい。じれったいよ。

「それまでは、今の歳のココ様を楽しんでください」

 と、クリスティー先生はニッコリと俺に微笑みかけた。おお、イケメンだ。さすがエルフ。

「クリスティー先生、楽しむのですか?」
「そうでっす。8歳の今の時は2度とはないのですよ。8歳の感受性で足掻いてください。私達の様に長い時間を生きる者にとってはそんな風に思いますね。自分の8歳の頃なんてもう覚えてもいませんから」

 8歳の今を楽しむか……

「分かりました、クリスティー先生」
「はい、ココ様は良い子でっす」

 そうして、マジックバッグ製作はロディ兄が元になるバッグを手配してくれるまで待つことになった。
 ああ、する事がなくなってしまったよ。よし、可愛い子達でも見に行こうかなと。
 そう思ってクリスティー先生も一緒に裏へ向かっていた。そしたら裏から聞こえてきたよ。奴の声が。

「俺様に勝てるわけねーだろうッ! 1万年はえーぞッ!」

 また偉そうに言っている。今度は何をしているんだ?

「シュンの鍛練に付き合っているのですよ」
「シュンですか?」
「そうでっす」

 クリスティー先生はニコニコと平然としている。いやいや、シュンはまだ7歳だぞ。俺より1歳下なんだぞ。

「彼は身体能力がとっても高いですね。それに志がありまっす」
「志ですか?」
「はい。領主隊に入るという目標ですね」

 ああ、言っていたな。そして、じーちゃん達みたいに強くカッコよくなるんだと。一緒に討伐に出るんだと。

「でも、まだノワちゃんの足元にも及びません」
「クリスティー先生、ノワはワンちゃんですよ」
「いえいえ、ブラックフェンリルですよ」
「そうでした」
「ふふふ。とは言っても、ノワちゃんは強いですね。この邸の誰よりも強いかも知れません」
「えぇッ?」
「そりゃそうでっす。ブラックフェンリルですから」

 ブラックフェンリルってそんなに強いのか!? 俺、全然知らなかったよ。

「お嬢、森の守護者だと教えられたじゃないッスか」
「守護者って言ってもよく分かんないわよ」
「ふふふ。森に生息するどの魔物よりも強いという事ですね」
「え……」
 
 ノワちゃん、可愛い見かけとちがってスゴイじゃん! 俺、びっくりだよ。
 裏の鍛練場に行くとそのノワが走って来た。

「アンアンアン!」
「ノワ、今日も可愛い」
「アンアン! 『違うぞ、おれはカッコいいだ!』」
「ふふふ、カッコ可愛いわ」
「あんあん!」

 ノワを抱っこする。このモフモフが、可愛いノワちゃんがどの魔物よりも強いんだと。ああ、世の中おかしいぞ。

「あーッ! ココさまー!」

 シュンが手を振ってくれる。もう片方の手には木剣が握られている。
 領主隊を目指すのは良いんだ。だが、剣を振るということは命のやり取りをするということなんだ。そんな事、まだシュンには分からない。なのに、良いのか? とも思ってしまう。

「ココ様、順に勉強していく事でしょう」
「クリスティー先生……」
「歳を重ねないと分からない事や、経験を重ねないと見えない事がありまっす。順にゆっくりと勉強していけば良いのでっす。まだまだ未来は沢山あるのですから」

 そうだった。シュンはまだまだ子供だ。これから選べる未来も沢山あるんだ。

「ココ様もですよ。同じ子供でっす。ちょっとおてんばさんですけどねッ」

 また、おてんばさんて言われちゃったよ。
 母にも言われたし。俺そんな事はないと思うんだけどなぁ。

「お嬢、自分の事はよく見えないって言うッスね」

 隆、煩いよ。

「ココ! どうしたッ!?」
「ユリシスお祖父さま、時間が空いてしまって」
「おうッ! なら一緒に鍛練するかッ!?」

 いや、遠慮しとくよ。鍛練は1日1回で十分だよ。
 と、裏の鍛練場にいたメンバーが、じーちゃん2人にシゲ爺、霧島だった。うん、いつものメンバーだね。シュン、こんな濃い人達の中に入って大丈夫なのか?

「じーちゃんもシゲ爺も超カッケーんだよ!」

 そうかい、良かったね。そのメンバーの色に染まらない事を願うよ。
 いつまでも可愛いシュンでいて欲しい。

「アキはどうしたの?」
「昼寝!」

 ああ、なるほどね。アキの昼寝中はシュンが鍛練してるって言ってたね。

「ココ様、俺もっと強くなるからさ、そしたら相手してくれよなッ!」
「いいわよ~。でもわたしに勝てるかしら?」
「頑張るッ!」

 ああ、もう返事まで可愛い!
 いやいや、1歳下なだけだからね。勘違いするんじゃないよ。でも、シュンって幼いよな。猫耳があるから余計にそう思うのかな?

「成長速度が人間とは少し違う様ですね」

 ほうほう。クリスティー先生は何でも知っているんだな。

「なによりシュンは素直で可愛いでっす」

 うん、それには俺も大賛成だよ。本当に素直で可愛い。

「此処に来てすぐの頃は2人共夜中に泣いて起きたりしていたのでっす。今はもうそんな事もありませんけど」

 ああ、そりゃそうだ。辛い事が多かっただろうに。

「シュンもアキもこれからでっす。此処に保護されて本当に良かったでっす」

 そう言ってもらえると俺も嬉しい。母達が良く面倒を見てくれているお陰だよ。クリスティー先生もな。

「クリスティー先生、有難うございます」
「おや、何ですか?」
「先生もシュンやアキに色々して下さったと聞いています」
「ふふふ。私は子供が好きなのでっす。エルフは長命種ですが子供が少ないのですよ。ですので、本当に子供は可愛いでっす」

 可愛いだけで世話はできないだろうに。クリスティー先生も有難う。
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