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第4章 立ち向かう

135ーマジックバッグを作ろう 1

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 その日から王都へ向かう為の準備が始まった。
 食料はもちろん、皆の装備も点検して回復薬も補充する。
 そうだ、こんな時にはマジックバッグだよ。クリスティー先生、教えてくれるって言ってたのにどうなった? 今日はどこにいるんだ?

「お嬢さまぁ、どうしましたぁ?」
「クリスティー先生はいないのかなって……」
「どうしてですかぁ?」
「だってね、王都へ行くのにマジックバッグがあれば便利でしょう?」
「あぁ、なぁ~るぅ」

 ヒョコッと首を横に傾けて人差し指を頬の横で立てている。咲のそのあざといポーズは標準装備なのか? オプションにはしてくれないのか?

「お嬢、無理ッス。本人は気に入ってるんッス」
「そうなの?」
「そうッス。ピンクゴールドの髪と一緒にお気に入りッス」
「エヘッ」

 そりゃ駄目だな。と、クリスティー先生はっと。裏の屋舎に行けばいるかな? 普段用事がなくても邸の中をフラフラしているのに、こんな時は見かけない。どこにいるんだ?

「お嬢さまぁ、多分裏のぉ……」
「ああ、やっぱり?」
「はいぃ」

 と、裏に向かおうとしたらそのクリスティー先生が前から歩いて来た。

「あ、クリスティー先生!」
「はい、ココ様。何かありましたか?」
「クリスティー先生を探していたんです」
「私をですか? では、やはりこれは神のお告げですね」

 なんだと? 神のお告げ?

「誰かが私を呼んでいる気がして来てみたのでっす。やはり、お告げでした」

 うん、クリスティー先生って時々意味の分からない事を言う。まあ、いいや。それよりさ。

「クリスティー先生」
「ああ、皆まで言わなくても分かりまっす」
「本当ですか?」
「はい、マジックバッグですね?」
「えぇ? どうして分かるんですかッ?」

 超能力者かよ。いや、魔法かよ!?

「だって王都に行かれるのでしょう? なら欲しくなるだろうと思いまして」

 なんだよ、その通りだ。魔法でも超能力でも何でもなかったぜ。

「はい、そこで時間停止をですね……」

 と、マジックバッグを作っている。空間を圧縮する魔法と時間を停止する魔法、そして重くても大丈夫なように重力軽減の魔法を付与するのだそうだ。
 どれも俺は使った事がない魔法だ。
 できるかな? と思ったんだがアッサリとできた。

「ですから、ココ様は一気に魔法を付与してはいけませんと前にも申しましたよ?」

 と、クリスティー先生に言われた。そうだよ、また一気に付与しようとして1個無駄にしたんだ。
 とにかく、作る事ができた。これを人数分作りたい。

「人数分ですか?」
「はい、クリスティー先生」
「それはまた……」
「え? 駄目ですか?」
「いえ、駄目とは言いません。ココ様の魔力量なら楽勝でしょう。しかし……」
「なんですか?」
「マジックバッグの元になるバッグがありませんね」

 なんだってぇッ!?

「え、クリスティー先生。何でも良いのじゃないんですか?」
「ココ様、あれだけの魔法を付与するのでっす。そこそこ丈夫なバッグでないと無理でっす。またパ~ンと破れてしまいますよ」
「え……どうしましょう?」
「ロディ様に相談ですね」
「はい、クリスティー先生」

 と、いうことでロディ兄の執務室に来ている。もちろん、クリスティー先生と一緒にだ。
 だが、何故か俺はロディ兄の膝の上に座らされている。久しぶりだな、この感じ。折角ロディ兄のシスコンがマシになったかと思っていたんだが、健在だったらしい。

「暫く忙しかったからね。ココと触れ合う事もなかなかできなかった」

 なんだよ、ずっと忙しくても俺は良いぜ。触れ合わなくてもさ。

「で、マジックバッグを作るのかい?」
「はい、兄さま。あったら便利でしょう?」
「確かにね。で、その元になるバッグが欲しいと」
「そうなのですよ、ロディ様。交代しませんか?」
「クリスティー先生、それは駄目です」
「そうですか、仕方ありません」

 何をだよ。俺は普通に椅子に座りたいぞぅ。

「ココ、どうせなら剣帯に着けられる様なバッグにしてくれないか?」
「兄さま、剣帯ですか? じゃあポーチ位の大きさでいいのですか?」
「クリスティー先生、ポーチだとどれくらいの容量になるのですか?」
「そうですね、ココ様が作るとなると幌馬車1台分位でしょうか?」
「充分ですね。領主隊はそのサイズで。ああ、使用人達はもっと容量が欲しいかな。みんなに聞いてみるけど、いろんな大きさを作れるかい?」

 どうなんだろう? クリスティー先生。

「バッグを変えるだけですから大丈夫でっす」
「なら、色々揃えよう」
「兄さま、有難うございます」

 そうか、領主隊は剣帯に着けたいんだ。対戦する時に邪魔にならない様にだろうな。俺もそのサイズがいいな。動きやすいし両手が塞がらないじゃん。

「ココ様、頑張って作りましょうね」
「はい、クリスティー先生」

 大きさが何でもいいならさぁ。

「クリスティー先生、アクセサリーに付与したりもできるのですか?」
「それは亜空間になりますね。使う者が相応の魔力量がないと使えません」

 ほうほう、俺がもっている亜空間収納と一緒なのか?

「そうですよ、ココ様がお持ちのものと同じでっす。亜空間とは通常存在している空間とは異なる空間の事でっす。そこと繋げて収納できるようにするのですよ。時間の概念も重力もありません。ですが、かなりの魔力量が必要になりますね」

 そうなのか。もしかしてクリスティー先生は使えるとか?

「私は使えますよ。ココ様も大きくなったらもっと容量が大きくなるでしょうね」
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