おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

撫羽

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第4章 立ち向かう

128ー討伐完了

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 このままだと王子に命中してしまう! と、誰もが思った。ソフィの腕を掠めた事で多少威力は落ちているが、しかしナイフだ。

 ――ガキン!!

「え……?」
「マジッスか!?」
「やだぁ、かっこいいぃ!」

 呑気な咲だ。なんとノワがフリスビーを取るが如く、ナイフをジャンピングキャッチしていたんだ。しかもちゃんとグリップの方を咥えている。

「ノワ! 大丈夫? 怪我はない?」
「アンアン!『大丈夫! これくらい平気だ!』」
「ノワ、凄いわ! よくやった!」
「アン!『おれ、スゴイ!?』」
「ええ、超カッコいい!」
『エヘヘ! おれ、カッコいい!』

 思わずノワを抱き上げ撫でまくる。本当、偉いぞ。ノワに助けられちゃったよ。

「殿下、ご無事ですか?」
「僕はどこも怪我していない。ソフィ、腕を!」
「大丈夫です。これくらい何ともありません」
「ソフィ、危なかったわ」
「奥様、申し訳ありません。夢中で……」
「ココちゃん、治してあげてちょうだい」
「はい、母さま」

 俺は、血が流れるソフィの腕に向かって詠唱した。

「ヒール」

 パックリと開いた傷口が光りながら閉じていく。光が消えると傷も綺麗に消えていた。

「大丈夫? 念の為、鑑定するわね」

 こいつら執拗だからな。ナイフに毒を塗っている可能性もある。
 ほら、やっぱりだよ。

「アンチドーテ」
「ココちゃん、毒もなの?」
「はい。もしかしてと思って鑑定してみました。投げナイフに塗っていたんですね」
「ココ様、有難うございます」
「ココ嬢、ありがとう」
「いえ、怪我がなくて良かったです。母さま、どこからですか?」
「私が戻ってきたらその後から普通に入ってきたのよ。咄嗟にシールドを張ったんだけど私は攻撃魔法が得意じゃないから」

 いやいや、そんな事を言うけどいつの間にか1人倒していたじゃん。

「アルベルトがシールドの内側から攻撃してくれていたのよ。ほら」

 母が言う方を見ると黒装束が数人倒れていた。

「人を呼んでくるッス」

 リュウが走って行った。これで本当に終わりだよな? もういないよな?

「ノワ、分かる?」
「アン!『もうなにもいないぞ』」
「ノワ、有難う」

 さて、中を確認しておこう。念には念を入れてだ。
 俺は鑑定眼を使いながら屋舎の中を確認して回る。

「お嬢さまぁ、何かありますかぁ?」
「今んとこないな」
「ほら、若になってますぅ」

 そりゃごめんよ。気が緩んだらつい出てしまう。

「サキ、そこの黒装束がいた場所には近寄らないで」
「えぇ~、何かありますかぁ?」
「クリスティー先生に確認してもらうわ」

 うん、あとは大丈夫そうだ。
 クリスティー先生に黒装束の男達が倒れていた場所を見てもらった。

「おやおや、毒を持っていたのですね?」
「はい、クリスティー先生」
「自害しようとでもしたのでしょうか?」
「え……?」
「毒が零れていますね。アンチドーテ」
「そうなんですか? 自害する隙はなかったと思います」

 そんな暇を与えず、意識を失っていたからな。
 だが、俺の鑑定眼では見えなかったんだ。俺は、今までの事があったから念のためクリスティー先生に見てもらったんだ。

「ココ様、それが経験というものでっす。そうして経験を積み重ねていくと分かることも多いのですよ」
「はい、クリスティー先生」
「はい、お利口さんでっす」

 授業みたくなっているが、目の前に大の男達が気を失って縄で縛られている。この男達も王都へ連行して行くのか? 無意味な気もする。

「ココッ! 男達が侵入していただとぉッ!?」
「父さま、リュウが縛ってくれてます」
「おうッ! リュウ、よくやったぁッ!」
「はいッス!」
「ココちゃん、殿下も邸に戻りましょう。後は任せましょう」
「そうですね、殿下戻りましょう」
「ああ。アルベルト、ソフィ、行こう」

 もう俺には用はないよな? 咲も武器を仕舞っている。俺の武器も仕舞ってよ。

「はいぃ、お嬢さまぁ」

 ほんと、どこに隠してんだ? ジッと見る。

「お嬢さまぁ、エッチですかぁ?」

 何でだよ。何がエッチだよ。あ、そこに仕舞ってるんだ。ほほう。

「だからぁ、見ないでくださいぃ」

 はいはい、分かったよ。まあ、一応前世は男だしな。いや、今女だし! しかも子供だし!
 母や王子達と一緒に邸に戻ってきた。作業場のみんなももう戻っている。
 邸の中も普段通りにメイドさん達がいる。あんな事があったのにいつも通りだ。

「ふうぅ、美味しいお茶でも頂きましょうね」

 直ぐに母にメイドさんがお茶を出す。

「あたし、甘いのが欲しいわ」

 と、俺が言うとお茶と一緒にお茶請けも出てくる。よく教育できているよ。

「さあ、殿下もどうぞ」
「有難う」

 王子もよく無事でいてくれた。アルベルト、グッジョブだぜ。
 しかしなぁ、こんな強硬手段に出て来てどうするつもりなんだろう。て、王子を狙っているんだろうけどさ。それにしても、場当たりというかお粗末すぎる。

「おや、もうお茶ですか?」

 優雅にクリスティー先生がやって来た。もうあっちは良いのか?

「一通り見て回りましたけど、大丈夫でっす」
「そう、クリスティー先生。有難うございます」
「いえ、奥様」

 クリスティー先生が座ると直ぐにお茶が出てきた。
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