おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

撫羽

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第4章 立ち向かう

120ー実験終了しようぜ

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「クリスティー先生、もう良いんじゃないですか?」
「ロディ様、そうですか?」
「はい、もう充分ですよ」
「しかし、まだシールドが消えておりませんッ」

 ロディ兄とクリスティー先生が話し合っていた。

「しかし、領主隊から苦情が……」
「おや、そうですか?」
「はい、ずっと柱のところで見ているだけですから」
「それが実験なのでっす」

 領主隊がもう良いだろうと言い出したシールドの実験だ。
 普通、シールドを維持しようと思ったら1日に1度は魔力を流さないといけない。そうしないとシールドが消えてしまうんだ。
 だが、今回はテストなので最初にシールドを張っただけで、魔力を流したりはしていない。
 それがなんと、2日目に入っている。本当に俺も思うさ。もう良いだろうよ。

「なんとぉッ! まだやっていたのかぁッ!?」

 と、父がびっくりした位だ。片手にシュークリームを持って食べている。口の横に生クリームがついてるぞ。平和だね。
 クリスティー先生、本当にもう良いよ。

「撤収しよう……」

 ロディ兄が呆れている。
 領主隊もごめんよ。交代で2日もただただボーッとシールドを見ていただけだ。

「ココ、これだけ時間があれば逃げて来られるだろう」
「兄さま、そうですよね……」

 ちょっと、俺も引いちゃうよ。まさか、2日もするなんてさ。

「ふふふ、クリスティー先生は実験が好きだから」

 と、母は優雅にお茶を飲んでいた。

「ふむ、もう充分だッ!」

 父よ、シュークリーム何個目だ?

「俺も食うぞッ!」
「おうッ! キリシマ、食べろ食べろ! 美味いぞぅ!」
「アンアン!」
「おぉ!? なんだ? ノワも食べるか!?」

 え、ワンちゃんにシュークリームあげたら駄目だぞぅ。

「お嬢、ワンちゃんじゃないッス」
「そうだった」

 シュークリームを丸ごと1個もらってかぶり付いている、ブラックフェンリルのノワちゃん。尻尾をフリフリしながら、食べている。
 領主隊が2日もシールドを見てくれているのに、呑気すぎる。

「これ、うめーなッ!」

 霧島の口の周りに、生クリームがついている。

「アン!!」

 ああ、ノワもお鼻に生クリームがついてるよ。
 俺も食べよう。領主隊には申し訳ないけども。

「だけどまさか、2日も消えないなんて思わなかったよ」
「兄さま、本当ですね」

 シュークリーム美味いなぁ。中のクリームがカスタードと生クリームと2層になってるのがまた良い。

「ココ、他人事だね」
「え? 兄さま、シュークリーム美味しいですよ」
「ふふふ、ココちゃんったら」

 平和だね~。あ、シュークリームを作業場のみんなにも持って行ってあげよう。

「ね、シーゲル」
「はい、ココ様」
「作業場にもシュークリーム持って行きたいの」
「畏まりました。ご用意しましょう」

 メイドのお姉さんが走って行った。
 よく教育できているよ。感心するわ。
 で、俺は咲とシュークリームを持ったメイドのお姉さんと一緒に作業場に来ている。

「お嬢様! おやつですか?」

 目敏く見つけたのは、ナタリーさんだ。

「そうよ、シュークリームよ。休憩にしましょう。みんな食べて。サキ、ロウさん達にも持って行ってちょうだい」
「はいですぅ」

 と、返事はしているが実際に持って行くのはメイドのお姉さんだ。
 咲はみんなにお茶を入れてくれている。

「シュークリームなんてめったに食べられないから嬉しいですぅ!」

 そう言いながらもう食べているのがマニューさんだ。

「本当ね。ここに働きに来なかったら食べられなかったわ」

 と、ルリアさん。

「ああ、甘くて美味しい」

 頬張っているのが、ミリーさんだ。

「そう? 珍しいかしら?」
「お嬢さま、そりゃそうですよ。甘いものより食事の方が大切ですから」

 そっか。そんなにみんな食べるのも苦しかったりするのか?

「お嬢様、違いますよ。スィーツは作るのにも手間が掛かるでしょう? だからですよ。みんなちゃんと毎日普通に食べていますよ」

 そうか。なら、良かった。
 広くなった作業場で、休憩室だってあるのに皆椅子を持ってきて俺の近くに座っている。咲も当たり前の様にお茶を出してくれている。
 こうして、遠慮なく接してもらえる様になったのは嬉しい事だ。
 最初はやはり『お嬢様』て線引きがあった。もちろん、今もそれは明確にある。
 だけどな、今は仲間意識もあるんだ。あると思いたい。
 俺の『辺境伯のお嬢様』て立場を意識し過ぎて何をするのも気を遣って。なんて事はない。

「お嬢様、食べないんですかぁ?」
 
 ほら、俺が食べなくても食べている。そして、少し気にしてくれる。

「あたしはもう食べたのよ。美味しいからみんなにと思ってもらってきたの」
「ありがとうございます!」
「美味しいです~!」

 これくらいの距離感でいいよな。お嬢様だからって恐縮しなくていい。
 必要以上に身分の差を感じなくていい。
 本当は貴族なんて無くてもいいんだ。そんな身分差のない世界に俺は生きていたからそう思う。
 だがこの世界は違う。それを俺1人の力で変えられるものでもない。
 だからという訳ではないが、父が治めるこの領地では一緒に笑って一緒に美味しいと言える。この程度でいいと俺は思うんだ。
 そしてこの日、ソフィが目を覚ました。

「私は何て事をッ! 殿下、申し訳ありません! どうか私を罰してくださいッ!」

 と、打ちひしがれていた。ソフィは今までの事を全部覚えていたんだ。

「思い出してくれるか? 何がきっかけだったのか」
「はいッ! もちろんです。覚えている事は全てお話しします!」


   ◇            ◇            ◇

お知らせ🌟
明日から暫くの間Wi-Fiのない生活になります。もしかしたら、投稿に支障が出るかも知れません。申し訳ありません。
いつも有難うございます💖
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