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第4章 立ち向かう
117ー僕は許さない
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王子の話だと、その『王妃の侍女』がよく出てくる。何かを伝えにやってくるのはいつも同じ侍女だ。そして、その侍女が王子を別宮に幽閉し外に出る事を禁じた。
「その侍女は本当に王妃様の侍女なのでしょうか?」
「ココ嬢、間違いないよ。いつも王妃様の1番近くにいる侍女だ」
なら、指示していたのはやはり王妃か?
「でも、変なんだ」
「殿下、何が変なのですか?」
「確かに王妃様の侍女なんだが、だからと言って王妃様が指示していた証拠にはならないだろう? だって、王妃様自身は1度も出て来ていないんだ」
どういう事だ?
「ココ、そのままだ。王妃様の侍女が動いてはいるが、その侍女に指示を出しているのは王妃様かどうかは定かではないという事だ」
「そうなんだ。だって僕は実際に直接王妃様から言われた事は1度だってないのだからね」
誰かが、王妃様付きの侍女を使って指示していたとも考えられるという事か。
しかし、それはどうなんだ? 王妃に罪を被せるという事か?
「そうだね、だからストレートに考えると王妃様が自分の侍女を使って殿下を幽閉していた。もう1つの考えは、誰かが侍女を使ってやっていたという事だね」
また、ややこしくなってきたぞ。
「どちらにしろ、はっきりさせたいと思います。僕は許さない。必ず、真実を知りたいと思っています」
今までの王子とは違う。今までは、にこやかにはしていたが、自分の置かれていた状況に対してどうこういう事はなかった。そうだ、まるで他人事の様だったんだ。
それも、精神干渉の影響だったのか。
今は目に力がある。言動にも、しっかりと自分の意志がある。
これが、本当の王子なんだ。
「では、殿下。覚えておられる事を何でも構いません。お話しいただけますか?」
「ああ、辺境伯。最初からすべて話をしよう」
始まりは、王子の実母である側室様が亡くなった事だった。側室様の葬儀の時に『会わないようにする』と陛下が仰った。それが始まりだったんだ。
それから、すぐに別宮へと移された。その時はまだ王子自身も驚きと戸惑い、何でこんな事をするんだ、という気持ちはあったそうだ。しかし、そんな気持ちも日を追う毎に薄れていったそうだ。
食べる事にも何をするにも執着がなくなり、ただただ生きていただけだと王子は言った。
その時に既に精神干渉と毒を仕込まれていたのだろう。
「不思議と、食べたいとも外に出たいとも思わなかったんだ」
「それこそ『存在意義を剥奪する』という事でっす。そうしていくうちに何も考えられなくなるのでっす」
そんな事をして良い訳がない! 人権はどうなっているんだ!? 王子の気持ちを殺しているのと同じじゃないか!
「ですから、あってはならないものなのでっす」
そうだ、本当にその通りだ。
「ただ、僕はまだラッキーだった。辺境伯に見つけてもらえた。あの時、無理矢理別宮にやって来た辺境伯を見た時に僕の心が動いたんだ。この人と一緒に行かなければならないと思ったんだ」
「きっと、亡くなられたお母様が助けてくださったのですわ」
母が言う。もし自分の子供がそんな目に合っていたらどう思うだろう。助けたいに決まっている。
「辺境伯と一緒に行く事も、その侍女に妨害されたんだ。だけど、辺境伯は諦めなかった。侍女の言う事を無視して僕を連れ出してくれた。本当にあの時は、これで僕は生きていけると思ったよ。安心したんだ」
そんな思いをしていたなんて……
そんな風に見えなかったし、今話している程の意志も伺えなかった。
「ココ様、それが精神干渉でっす。こちらにやって来て毒から少しは遠ざかり、そしてその内ココ様発案の下着を着けるようになった。どんどん解毒され解呪されていたのでしょう。それに対抗していたのが、ソフィさんの精神干渉でっす。毎日、フィル君が飲んでいたものがあったのでっす」
「飲んでいたもの?」
「そうなんだ。ソフィに飲まされていた薬湯があったんだよ。まさか、ソフィまで精神干渉されているとは思わなかった。だから僕は当たり前の様にソフィからもらって毎日飲んでいた」
「それを解析致しました。自我を抑え何も考えられなくなるようなものでした」
クリスティー先生、いつの間にか色々やってくれていたんだ。
「厳しい事を申しますと、これだけ毒を使えるのでっす。一思いに毒殺する事だって可能でしたでしょう。それをしないで、態々精神干渉をしてジワジワと毒で弱らせる。一体何が目的だったのか分かりかねまっす」
確かに、クリスティー先生の言う通りだ。うちに襲撃してきた時だって殺そうとする動きはなかった。部屋に毒を仕込んでいった。
「一体何をしたいのだぁッ!?」
ああ、父も苛ついている。
「父上、相手の意思が分からない間は動いては駄目です」
「ロディの言う通りだなッ!」
「そうだね、今はこちらも力を蓄える時期だろう」
じーちゃんズが冷静に判断する。
頼りになるぜ。
「その侍女は本当に王妃様の侍女なのでしょうか?」
「ココ嬢、間違いないよ。いつも王妃様の1番近くにいる侍女だ」
なら、指示していたのはやはり王妃か?
「でも、変なんだ」
「殿下、何が変なのですか?」
「確かに王妃様の侍女なんだが、だからと言って王妃様が指示していた証拠にはならないだろう? だって、王妃様自身は1度も出て来ていないんだ」
どういう事だ?
「ココ、そのままだ。王妃様の侍女が動いてはいるが、その侍女に指示を出しているのは王妃様かどうかは定かではないという事だ」
「そうなんだ。だって僕は実際に直接王妃様から言われた事は1度だってないのだからね」
誰かが、王妃様付きの侍女を使って指示していたとも考えられるという事か。
しかし、それはどうなんだ? 王妃に罪を被せるという事か?
「そうだね、だからストレートに考えると王妃様が自分の侍女を使って殿下を幽閉していた。もう1つの考えは、誰かが侍女を使ってやっていたという事だね」
また、ややこしくなってきたぞ。
「どちらにしろ、はっきりさせたいと思います。僕は許さない。必ず、真実を知りたいと思っています」
今までの王子とは違う。今までは、にこやかにはしていたが、自分の置かれていた状況に対してどうこういう事はなかった。そうだ、まるで他人事の様だったんだ。
それも、精神干渉の影響だったのか。
今は目に力がある。言動にも、しっかりと自分の意志がある。
これが、本当の王子なんだ。
「では、殿下。覚えておられる事を何でも構いません。お話しいただけますか?」
「ああ、辺境伯。最初からすべて話をしよう」
始まりは、王子の実母である側室様が亡くなった事だった。側室様の葬儀の時に『会わないようにする』と陛下が仰った。それが始まりだったんだ。
それから、すぐに別宮へと移された。その時はまだ王子自身も驚きと戸惑い、何でこんな事をするんだ、という気持ちはあったそうだ。しかし、そんな気持ちも日を追う毎に薄れていったそうだ。
食べる事にも何をするにも執着がなくなり、ただただ生きていただけだと王子は言った。
その時に既に精神干渉と毒を仕込まれていたのだろう。
「不思議と、食べたいとも外に出たいとも思わなかったんだ」
「それこそ『存在意義を剥奪する』という事でっす。そうしていくうちに何も考えられなくなるのでっす」
そんな事をして良い訳がない! 人権はどうなっているんだ!? 王子の気持ちを殺しているのと同じじゃないか!
「ですから、あってはならないものなのでっす」
そうだ、本当にその通りだ。
「ただ、僕はまだラッキーだった。辺境伯に見つけてもらえた。あの時、無理矢理別宮にやって来た辺境伯を見た時に僕の心が動いたんだ。この人と一緒に行かなければならないと思ったんだ」
「きっと、亡くなられたお母様が助けてくださったのですわ」
母が言う。もし自分の子供がそんな目に合っていたらどう思うだろう。助けたいに決まっている。
「辺境伯と一緒に行く事も、その侍女に妨害されたんだ。だけど、辺境伯は諦めなかった。侍女の言う事を無視して僕を連れ出してくれた。本当にあの時は、これで僕は生きていけると思ったよ。安心したんだ」
そんな思いをしていたなんて……
そんな風に見えなかったし、今話している程の意志も伺えなかった。
「ココ様、それが精神干渉でっす。こちらにやって来て毒から少しは遠ざかり、そしてその内ココ様発案の下着を着けるようになった。どんどん解毒され解呪されていたのでしょう。それに対抗していたのが、ソフィさんの精神干渉でっす。毎日、フィル君が飲んでいたものがあったのでっす」
「飲んでいたもの?」
「そうなんだ。ソフィに飲まされていた薬湯があったんだよ。まさか、ソフィまで精神干渉されているとは思わなかった。だから僕は当たり前の様にソフィからもらって毎日飲んでいた」
「それを解析致しました。自我を抑え何も考えられなくなるようなものでした」
クリスティー先生、いつの間にか色々やってくれていたんだ。
「厳しい事を申しますと、これだけ毒を使えるのでっす。一思いに毒殺する事だって可能でしたでしょう。それをしないで、態々精神干渉をしてジワジワと毒で弱らせる。一体何が目的だったのか分かりかねまっす」
確かに、クリスティー先生の言う通りだ。うちに襲撃してきた時だって殺そうとする動きはなかった。部屋に毒を仕込んでいった。
「一体何をしたいのだぁッ!?」
ああ、父も苛ついている。
「父上、相手の意思が分からない間は動いては駄目です」
「ロディの言う通りだなッ!」
「そうだね、今はこちらも力を蓄える時期だろう」
じーちゃんズが冷静に判断する。
頼りになるぜ。
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