おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

撫羽

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第4章 立ち向かう

113ー部屋の調査 1

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「例えば、あの糸で作った物を着用している際に、魔物から毒で攻撃されたとしまっす。それなら無効化しまっす。呪いもそうでっす。ですので、ココ様。あの糸で作った洋服や下着は大変有用なものなのですよ」
「クリスティー先生……」
「自信を持ってください」
「有難うございます」
「実は私も頂いて愛用しているのでっす」

 そう言ってクリスティー先生は微笑んだ。
 クリスティー先生に気遣いしてもらって俺情けねーぞ。しっかりするんだ。
 対抗策はないのか?

「まず、その部屋を見せて頂きましょう。そして、サシェですか。お預かりしましょうね」
「クリスティー先生、よろしくお願いしますわ」
「はい、奥様。お任せください」

 シーゲルがクリスティー先生と一緒に出て行った。以前、王子が使っていた部屋を案内するのだろう。そして、サシェだ。
 クリスティー先生がいてくれて良かった。
 あんな一瞬で情報を読み取り、その上呪詛返しまでしていた。エルフの能力は俺には想像や理解も追いつかない程高い。

「父さま、あたしもクリスティー先生とご一緒しても良いですか?」
「ココちゃん、クリスティー先生にお任せしておきましょう」
「母さま、あたしも見たいです。勉強になります」
「そうだね、ココ。兄様も一緒に行こう」
「まあ、ロディまで」
「よいッ! だが、2人共充分に気を付けるのだぞッ!」
「はい、父さま」
「はい、父上」

 俺はロディ兄と一緒にクリスティー先生を追った。

「ココ、悲観しているのではないね?」
「はい、兄さま。許せません」
「それでこそ、ココだ」
「お嬢!」
「リュウは部屋の前に待機よ。サキにもそう言ってちょうだい」
「俺もご一緒しますッ!」
「いや、リュウ。待機だ。人数が増えるとそれだけリスクも増える。ランスもだ」
「ロディ様!」
「同じ理由だ。お前達は部屋前で待機だ」

 前を行くクリスティー先生を見つけた。

「クリスティー先生」
「おや、ココ様にロディ様。どうされました?」
「クリスティー先生、私達もご一緒させてください」
「はい、クリスティー先生!」
「危険ですよ?」
「分かっております。勝手に動かないと約束致します」
「はい、します」
「ふふふ、分かりました。では、私の後を付いて来て下さい。油断してはいけませんよ」
「はい」
「はい!」
「ココ様は鑑定眼を使いながら進めますか?」
「はい、できます」
「では、鑑定眼で周りを見ながらロディ様と一緒に来てください。とっても良い勉強になりまっす」

 シーゲルが部屋の鍵を開けてドアを開けようとする。

「あ、お待ちなさい」

 いきなりクリスティー先生が、ドアノブに伸ばしたシーゲルの手を止めた。

「クリスティー先生?」
「ココ様、見る事ができますか?」

 俺はそう聞かれ、鑑定眼でドアの近辺を見る。

「クリスティー先生、この光は何ですか?」
「どこに見えますか?」
「ドアの上部です。部分的に見えているのですか? 嫌な感じの光です」

 部屋の入口のドア。その上部が不自然に鈍く光って見えた。鑑定眼を使わないとこんなの分からない。そんな光だ。これは、何かの部分的なものなのか? 丸い図形の様にも見える。

「その通りでっす。早速、まだ生きているのがありましたね。あれは魔法陣の一部ですね。あの下を通ると魔法に掛かる様になっていますね」
「クリスティー先生、しかしサシェを発見した時にこのドアを私だけでなくロディ様やココ様も通っております」
「皆さまは耐性が高いのでしょう。ですので掛からなかったのでしょうね。その後、ソフィさんが通った時に魔法に掛かってしまったのでしょう。少々お待ちください」

 そう言って、クリスティー先生が部分的に見えている光に向かって手を翳す。

「スキャン」

 何だ? 直訳だと精査しているのか?

「オッケーでっす。これでパターンを読み込みました。もう必要ないので消しまっす。ディスペル」

 クリスティー先生がそう唱えると、ヒュンと一瞬で光が消えた。

「はい、では入りましょう」

 クリスティー先生、格が違うぜ。こんなの俺は全然できないよ。

「ココ様、経験の差ですよ」
「クリスティー先生、そうですか?」
「はい。ココ様はまだ8歳でっす。できない事の方が多くて当然なのですよ。それを指導する為に私達がいるのでっす」

 そうだ、俺はまだ8歳だという事を忘れていた。俺は恵まれているんだ。俺の周りには色んな師匠がいてくれる。有難い事なんだ。

「ココ、そうだね。偉いよ」

 ロディだって師匠だ。頭脳と冷静さを見習わないとな。俺は直ぐに面倒になってしまうから。
 クリスティー先生を先頭に部屋へと入って行く。

「良いですか? 私が通った場所を通って付いて来てくださいね。余計な場所を触ってもいけません」
「はい、クリスティー先生」
「あら、ココ様。良いお返事でっす。鑑定眼も忘れずに使ってくださいね」
「はい」
「サシェがあったのはクローゼットでしたか?」
「はい、そうです。あちらです」
「ああ、その前に……」
「クリスティー先生、あたしがやります」
「おや、そうですか?」
「はい」

 俺も少しは見えるんだ。少しは役に立ちたいんだよ。このままだと悔しすぎるぜ。
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