おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

撫羽

文字の大きさ
上 下
112 / 249
第4章 立ち向かう

112ー毒と呪い 2

しおりを挟む
「さて、フィル君の毒と呪いですね」

 クリスティー先生が言うには実行犯はソフィだった。

「そんな……ソフィ殿がまさかそんな事!?」
「ただし、ご自分の意志ではないのですよ」
「クリスティー先生、どういう事ですか?」

 その時だ。廊下から大きな声が聞こえてきた。

「どうしてだッ!? なぜにぃッ!」

 ああ、ユリシスじーちゃんだ。

「じーちゃん、落ち着けって!」
「これが落ち着いていられるものかッ!」

 霧島もいるな。また、一緒だったのかよ。
 そして、バタンとドアが開き雪崩れ込んできた。
 ユリシスじーちゃん、ディオシスじーちゃん、霧島、シゲ爺、それにノワだ。
 もう『チームじーちゃんズ』でも作っちゃうか? 最近いつも一緒だ。

「ココ、どうなってんだ!?」
「これからクリスティー先生のお話しを聞くのよ」
「クリスティー先生ッ! 殿下はぁッ!?」
「おやおや、ユリシス様。大丈夫ですよ、もう手当はすんでいまっす」

 そして、やっとクリスティー先生のお話しだ。

「ソフィさんと言いましたか? 彼女が最近毒に侵された事はありませんか?」
「あります。こちらに来て直ぐの頃です。部屋のクローゼットにサシェの様な物があったのです。そこに毒が仕込んであった事がありました。その時に彼女は倒れています」
「ロディ様、その時は彼女だけですか?」
「はい、その部屋に入ったのが彼女だけでしたので」
「その時でしょうね。サシェに仕込んであったのか、又は発動したら消滅するようにしてあったのか。何れにせよ、その時に魔法が掛けられ精神干渉をされていますね」

 そんな前からなのかよ。あの時もっと詳しく調べていれば良かった。

「ココ様、不可抗力ですよ。こんな緻密な悪意のある事を誰が思いつきますか」
「クリスティー先生、念のためその時のサシェを保存してあります」

 と、父の側近兼執事のシーゲルが言い出した。

「おや、そうなのですか? 分析してみましょう。で、それが置かれていたお部屋も見たいですね」

 ジーゲル、やるじゃん! 

「で、クリスティー先生。ココが考えた下着を着けているのに、どうしてまた毒と呪いなのでしょう?」
「はい、ロディ様。ご説明しましょうね」

 これは、ソフィじゃないと不可能だっただろうとクリスティー先生の見解だ。
 俺が作った下着や服は、1日中ずっと着ている訳ではない。必ず脱ぐ時がある。着替える時や、風呂に入る時に必ず脱ぐ。そんな少しの時間に根気よく毒を仕込み、呪いをかけていったのだろうと言う事だった。

「しかし、ソフィ殿は呪いを掛けることなんて出来ない筈です」

 そうだな、アルベルトの言う通りだ。

「そうですね、ですから魔法で操られていたのでしょう。彼女がその部屋に入った時に何等かの罠が仕込んであったのではないでしょうか? これは普通に知られている魔法ではありません。魔法をそれなりに詳しく専門的に学んだ者しか知らない魔法ですね」

 例えばだ。火属性に耐性があるモンスターでも、それ以上の炎で攻撃するといくら耐性があったとしても耐えられない。それと同じだそうだ。

「いくら状態異常無効の物を身につけていたとしても、それ以上の事があれば状態異常に掛かってしまうのです。100パーセント無効にするものではありませんから。例えばですよ。毎日顔を洗う水に毒を入れられたりすると、蓄積してしまいまっす。毎日飲む水やお薬等もそうですね。そして、呪いでっす。これも毎日の積み重ねですね。そんな面倒な事が出来るのは、お世話をしている者が適任ではないでしょうか?」

 油断した。あの時、ソフィだって倒れたんだ。その時にちゃんとクリスティー先生に見てもらっていれば良かったんだ。

「あたしのミスです。油断しました」
「いいえ、ココ様。これも予測に過ぎませんが、きっと誰かが反応すれば消滅する魔法陣でも仕組んであったのでしょう。彼女はそうとは知らずに毎日のお世話をしていただけでしょう。通常の鑑定では見破れないように隠蔽されていました」

 隠蔽だって!?

「はい、そうでっす。フィル君にかけられた呪いは『存在意義を剥奪する』そんな呪いでした。お分かりですか? 自分はどうなっても仕方がない、そんな存在なんだと思わせるのでっす」

 王子は『迫害されても仕方がない』と、話していた。あれが、そうなのか?

「ココ様、その通りでっす。自分で自分の心を傷付けるのでっす」
「クリスティー先生、呪いを掛けた者を特定できませんか?」
「ロディ様、今回あまりにも執拗で人間性を疑うような内容でしたので、実は呪詛返しをしておりまっす」

 呪詛返し!? また怖いワードが出てきた。

「私が解呪した際に呪いの元に返しておりまっす。術者を特定することは無理ですが、代わりにその者の首筋や腕に棘模様のアザが浮き出ている筈でっす。そして実行した魔術師は、1人ではありませんね」

 うわ、こっわッ。執念を感じるぜ。

「ココ様、仕掛けてくる方が悪いのでっす。呪いを掛けるにはそれなりの覚悟が必要でっす」
「クリスティー先生、ソフィは覚えているのですか?」
「さあ、微妙なところだと思いまっす。彼女は気持ちがそう強くない様ですから。強ければこんなに簡単には掛かりませんね」

 執拗に仕掛けてくる。なんだ? 嫌な感じだな。
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

転生チートは家族のために ユニークスキル『複合』で、快適な異世界生活を送りたい!

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...