おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

撫羽

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第3章 領地の防御

108ーノワの鍛練?

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「みんな忙しいところ申し訳ないんだけど」
「お嬢様、どうしました?」
「ミリーさん、あのね。母さまも欲しいと言い出しちゃって」
「ああ、奥様の分でしたらお嬢様と同じデザインのパターンを作りかけていますけど」

 俺はいかにも申し訳なさ気に言ったんだ。なのに……なんだって!?

「ミリーさん、凄いッ!」
「え? どうしました?」
「そうなのよ。あたしと同じデザインがいいとか言ってるの。スカートだけもう一段多くして……」
「ああ、はいはい。大丈夫ですよ。色は黒で良いですか?」
「うん、ありがとう!」

 この人達は本当に仕事のできる人達だなぁ。先を読んで動くなんて、なかなかできないぞ。よく働きにきてくれたよ。もうミリーさんの手元には八割方完成したパターンがあった。

「明後日には仕上げますよ」
「ミリーさん、急がなくても良いのよ。本当に無理しないで、怪我もしないでね」
「はい、有難うございます」
「もう1つあるのよ」

 もう、本当に申し訳ないんだけどさ。

「お嬢様、従者服でしょう?」
「そうなのよ。コロッと忘れてて……」
「それもパターンのお手本を起こしておいてください。こっちで進めますよ」

 ミリーさん、頼りになるよ。
 これはまた何か差し入れ持ってこないとな。ミリーさんの好きな激甘なやつ。

「ふふふぅ、そうですねぇ」
「お嬢、いるッスか?」

 隆がやって来た。ひょっこりと顔を出している。なんだ? 裏庭でじーちゃん達といたのじゃないのか?

「アン!」
「あ、ノワ~! 遊んでもらってたのぉ~?」
「アンアン!!」
「お嬢、ノワはめっちゃ賢いッス。さすが、フェンリルです」
「そう?」
「キリシマと比べ物にならないッス」

 いや、それを言ったら霧島が可愛そうだよ。霧島だってやる時はやるよ。多分な。

『ココ、おれかしこい!?』
「ええ、ノワはお利口さんね! とっても可愛いしね!」

 俺はノワを抱っこしてモフりまくる。
 ああ、このもふもふ癒されるぜ。前世の親父が飼っていたトイプードルを思い出すよ。

「あっちのキリシマですねぇ」
「ふふふ、そうそう」
「お嬢、ちょっと裏まで来てください」
「どうしたの?」
「いや、マジでノワが凄いんッス」

 なんだろう? と、思いながら隆に連れられて裏にある鍛練場まで移動する。

「あら、シュン、アキ。一緒に遊んでもらってたの?」
「ココしゃま~!」
「ココさま、ちがうよ! 俺も鍛練するんだ!」

 いやいや、だからさぁ。シュンはまだ早いだろう?

「ココ、よく食べて外で適度に身体を動かす方が良いんだ」
「ディオシスお祖父さま」
「そうだッ! まさか子供にワシ達大人と同じ鍛練はさせんさッ!」

 そりゃそうか。まだ子供だもんな。て、俺も子供だぞ? ガッツリ鍛練してるぜ?

「ココ、殿下が歩いておられるだろう」
「はい。私達が鍛練している間ですね」

 俺達が鍛練している間、王子はゆっくりとだが鍛練場を歩くのをずっと続けている。
 最初の頃は本当に1周歩くのも大変そうだった。それが今は俺達を見ながら上半身を真似して動かしながらしっかりと何周も歩けるようになっていた。

「そう。一緒に歩くように言ってあるんだ」
「そうなんですか。それなら良いですね」
「ココさま! 俺も毎日歩く!」
「あたしも~!」

 可愛いなぁ~。2人共可愛い。焦らなくて良いんだよ。

「無理しちゃダメよ。アキはまだ小さいんだから、苦しくなったらすぐにやめるのよ」
「あいッ!」
「2人でゆっくり歩くと良いぞッ!」
「はいッ!」
「あいッ!」

 2人してユリシスじーちゃんに向かって手を挙げている。まるで、じーちゃんが先生みたいだよ。
 うん、可愛いは正義だな。て、俺シュンと歳変わんねーじゃん!

「お嬢、ちょっとノワを見てください」
「ああ、そうだったわ。リュウ、何するの?」
「まあ、見ててください」

 そう言って、隆はノワを連れて鍛練場の広場にでる。広場というか、運動場というか、とにかく何もないだだっ広い場所だ。隅っこの方には弓や魔法の練習用に的が設置してある。

「ノワ! 行くぞッ!」
「アン!! アンアン!」

 隆が声をかけると、ノワが一緒に走り出した。まだ小さな身体なのに、あっという間に隆を追い越していく。ピンと耳を立て尻尾を振りながら小さな身体で飛ぶように走って行く。可愛いなあ。

 ――ピー―!!

 隆が、魔物討伐の際に合図に使う笛を吹いた。と、ノワがその場で止まった。

 ――ピーーピーーピーー

 また隆が笛で合図をした。すると、ノワは練習用の的目掛けて風属性魔法を放った。見事に的の中心に当たっている。

「えぇッ!! 魔法!?」
「あれ、ウインドカッターなんだよ」
「凄いです! ディオシスお祖父さまが教えたのですか!?」
「いいや、教えてないんだ。ココ、それだけじゃないんだ」

 ――ピピーー!!

 と笛で合図をし、隆が魔法の的に使う様な丸いフリスビー型の板を思いっきり遠くに高く飛ばした。

「アンアンアン!!」

 ノワが鳴きながら追いかけ、見事にジャンピングキャッチして咥え1回転して着地した。

「凄い!!」
「ハッハッハ! ノワは賢いだろう!?」
「ディオシスお祖父さま! 凄いです!」

 また、隆が笛を吹く。

 ――ピーー!!

 尻尾を揺らしながら、こちらに全速力で戻ってくる。そして、隆の前にお座りだ。

「完璧じゃないッ!」
「ね、凄いっしょ!?」
「リュウ、凄いなんてもんじゃないわよ! これ、1日で覚えたの!?」
「ココ、1日どころじゃないぞ。ほんの数時間で覚えたんだ」
「ディオシスお祖父さま! なんてお利口なんでしょう!」

 ドックコンテストにでも出したい位だぜ! 犬じゃないんだけどさ。
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