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第3章 領地の防御
102ー守りたいから
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「ココ、大事な事だ。お前ももう覚えていても良いだろう」
「父さま」
「今の世の中には、恵まれない子供達がたくさんいる。いや、子供達だけじゃない。そんな人達にも、普通に幸せに生きる権利があるんだ」
俺の記憶にある前世より、この世界は理不尽な事が沢山ある。財産だけでなく、人の命だって簡単に奪われる。それが当たり前の世界だ。特にこの領地では簡単に魔物に命を奪われてしまう。
そんな世界しか知らないのに、両親はそれに抗おうとしているのかも知れない。両親だけではない。じーちゃん達、兄達もだ。
「せめて、自分の手が届く範囲だけでも良い。ココ、人を助けるんだ。それが、巡り巡ってココの力となるんだぞ」
「はい、父さま」
俺は、この家に生まれて良かったと心から思うよ。前世、若頭だった俺だけど、そう思うよ。
その日の夜、またあの夢を見た。どうしてだ? 盗賊団の討伐に出た日からだ。何か刺激にでもなったのか?
俺達家族は縄で縛られ、どこかに連行されて行くところだった。そこに王子らしき人物もいた。
『お前達の事を信じたりしなければ……』
と、また言っている。何だ? 俺達家族は、捕らえられる様な事はしていないぞ。
処刑台の様な場所に皆並ばされて立っている。何なんだよ。
「……お嬢さまぁ」
「ん……ああ、サキ」
「少しうなされてましたよぅ。また、夢ですかぁ?」
「ああ、そうなんだ。ほんと、夢見がわりぃ」
「また、若になってますねぇ」
「あぁ……気をつける」
「お嬢さまぁ、どんな夢なんですかぁ?」
「それがな……」
俺は咲に夢の内容を話して聞かせた。俺達家族と王子が処刑場の様な場所に連れて行かれると。
「えぇ……気持ち悪いですねぇ」
「だろう?」
「ん~、お嬢さまぁ、関係ないのかも知れないですけどぉ」
「なんだ?」
咲が言うには、俺が記憶を取り戻す時の事を、自分が記憶を取り戻した8歳の時に夢で見ていたらしい。
だが、俺と2人だけで小屋に閉じ込められるなんてことはあり得ない。何より俺がまだ生まれていなかったから気にしていなかったそうだ。そしていつの間にか忘れてしまっていた。だが、実際に数年後俺が産まれ夢と同じ事が起こった。
そして夢の通り、俺はその時に前世を思い出した。
「だからぁ、あの時急に若になっても違和感がなかったんですぅ」
「そうなのか?」
「もしかしてぇ、前世の記憶のある私達は何かあるのかも知れませんよぅ」
「じゃあ、リュウに聞いてみるか?」
「そうですねぇ。誰もいないところで聞いてみますぅ?」
「ああ。だってサキもその夢の事があるだろう? なら、俺がみた夢も何かあるのかも知れない」
「お嬢さまぁ、若になってますぅ」
「あ、忘れてた。気を付けるわ」
なんか余計に気持ち悪い夢じゃんか。咲がそんな夢を見ていたなんてさ。予知夢か? なら、放っておけないぞ。ヤバイじゃん。
だが、鍛練は待ってくれない。久しぶりに鍛練を仕切っている父は超張り切っている。
しかも、じーちゃんズも参加だ。当然の様にシゲ爺もいる。そう言えば、シゲ爺も何か欲しいと言っていたな。後で聞いてみよう。なんて、考えながら鍛練をしていたら怒られちゃったよ。
「ココアリア! 弛んでいるぞぉ!」
「お嬢様ぁ! ちゃんと気合い入れて下さいぃ!」
「分かってるっての!」
「ココ! 何だその言葉使いはぁッ! 精神一到!!」
――おおー!!
――はぁ~い!!
「一意専心!! 鍛練を疎かにするなぁッ!!」
――おおー!!
――はぁ~い!!
ああ、もうキッツイ! また俺だけ肩で息してるよ。足もガクガクだ。
「ココさま、大丈夫か?」
「ココしゃま~」
「シュン、アキ、ありがとう」
シュンとアキの2人がスポドリ擬きを持ってきてくれた。可愛いなぁ。癒されるぜぃ。
「鍛練見ていたの? え、まさかシュンも鍛練するの?」
「おれはまだ駄目だって。もっと体力つけてからだって言われた」
「そう、よかったわね」
「え、いいのか?」
「だって、キツイわよ。もう、嫌んなっちゃうわ」
「ココさまは鍛練が嫌いなのか?」
「好きじゃないわね」
「じゃあ、何で鍛練するんだ?」
「だって何も守れないで諦めて泣くのは嫌じゃない?」
「うん、嫌だ」
「だからよ。自分や周りも守りたいから鍛練するのよ」
「自分もか?」
「そう、自分だけでなく周りもよ。でないと誰かが幸せじゃなくなっちゃうでしょう?」
「そうか……」
「でも、シュンはまだまだよ。もっと食べて体力つけてからだわ」
「そう言われた」
「そうよ、でないと身体を壊しちゃうからね」
「そうなのか?」
「そうよ」
「アキもしゅる~」
「アキはしなくてもいいわよ~。可愛いもの」
「アキもしゅるの! おねーしゃん達みたいにしゅるの」
ああ、いかん。影響を受けてるぜ。戦うメイドさん達を目標にしちゃ駄目だぞぅ。
「アキももっとたくさん食べられるようになってからね」
「うんッ! いっぱい食べる~」
ああ、可愛い。ほんと、癒されるぞぅ。
「お嬢さまぁ、変なお顔になってますよぅ」
うっせーな、咲は。
「父さま」
「今の世の中には、恵まれない子供達がたくさんいる。いや、子供達だけじゃない。そんな人達にも、普通に幸せに生きる権利があるんだ」
俺の記憶にある前世より、この世界は理不尽な事が沢山ある。財産だけでなく、人の命だって簡単に奪われる。それが当たり前の世界だ。特にこの領地では簡単に魔物に命を奪われてしまう。
そんな世界しか知らないのに、両親はそれに抗おうとしているのかも知れない。両親だけではない。じーちゃん達、兄達もだ。
「せめて、自分の手が届く範囲だけでも良い。ココ、人を助けるんだ。それが、巡り巡ってココの力となるんだぞ」
「はい、父さま」
俺は、この家に生まれて良かったと心から思うよ。前世、若頭だった俺だけど、そう思うよ。
その日の夜、またあの夢を見た。どうしてだ? 盗賊団の討伐に出た日からだ。何か刺激にでもなったのか?
俺達家族は縄で縛られ、どこかに連行されて行くところだった。そこに王子らしき人物もいた。
『お前達の事を信じたりしなければ……』
と、また言っている。何だ? 俺達家族は、捕らえられる様な事はしていないぞ。
処刑台の様な場所に皆並ばされて立っている。何なんだよ。
「……お嬢さまぁ」
「ん……ああ、サキ」
「少しうなされてましたよぅ。また、夢ですかぁ?」
「ああ、そうなんだ。ほんと、夢見がわりぃ」
「また、若になってますねぇ」
「あぁ……気をつける」
「お嬢さまぁ、どんな夢なんですかぁ?」
「それがな……」
俺は咲に夢の内容を話して聞かせた。俺達家族と王子が処刑場の様な場所に連れて行かれると。
「えぇ……気持ち悪いですねぇ」
「だろう?」
「ん~、お嬢さまぁ、関係ないのかも知れないですけどぉ」
「なんだ?」
咲が言うには、俺が記憶を取り戻す時の事を、自分が記憶を取り戻した8歳の時に夢で見ていたらしい。
だが、俺と2人だけで小屋に閉じ込められるなんてことはあり得ない。何より俺がまだ生まれていなかったから気にしていなかったそうだ。そしていつの間にか忘れてしまっていた。だが、実際に数年後俺が産まれ夢と同じ事が起こった。
そして夢の通り、俺はその時に前世を思い出した。
「だからぁ、あの時急に若になっても違和感がなかったんですぅ」
「そうなのか?」
「もしかしてぇ、前世の記憶のある私達は何かあるのかも知れませんよぅ」
「じゃあ、リュウに聞いてみるか?」
「そうですねぇ。誰もいないところで聞いてみますぅ?」
「ああ。だってサキもその夢の事があるだろう? なら、俺がみた夢も何かあるのかも知れない」
「お嬢さまぁ、若になってますぅ」
「あ、忘れてた。気を付けるわ」
なんか余計に気持ち悪い夢じゃんか。咲がそんな夢を見ていたなんてさ。予知夢か? なら、放っておけないぞ。ヤバイじゃん。
だが、鍛練は待ってくれない。久しぶりに鍛練を仕切っている父は超張り切っている。
しかも、じーちゃんズも参加だ。当然の様にシゲ爺もいる。そう言えば、シゲ爺も何か欲しいと言っていたな。後で聞いてみよう。なんて、考えながら鍛練をしていたら怒られちゃったよ。
「ココアリア! 弛んでいるぞぉ!」
「お嬢様ぁ! ちゃんと気合い入れて下さいぃ!」
「分かってるっての!」
「ココ! 何だその言葉使いはぁッ! 精神一到!!」
――おおー!!
――はぁ~い!!
「一意専心!! 鍛練を疎かにするなぁッ!!」
――おおー!!
――はぁ~い!!
ああ、もうキッツイ! また俺だけ肩で息してるよ。足もガクガクだ。
「ココさま、大丈夫か?」
「ココしゃま~」
「シュン、アキ、ありがとう」
シュンとアキの2人がスポドリ擬きを持ってきてくれた。可愛いなぁ。癒されるぜぃ。
「鍛練見ていたの? え、まさかシュンも鍛練するの?」
「おれはまだ駄目だって。もっと体力つけてからだって言われた」
「そう、よかったわね」
「え、いいのか?」
「だって、キツイわよ。もう、嫌んなっちゃうわ」
「ココさまは鍛練が嫌いなのか?」
「好きじゃないわね」
「じゃあ、何で鍛練するんだ?」
「だって何も守れないで諦めて泣くのは嫌じゃない?」
「うん、嫌だ」
「だからよ。自分や周りも守りたいから鍛練するのよ」
「自分もか?」
「そう、自分だけでなく周りもよ。でないと誰かが幸せじゃなくなっちゃうでしょう?」
「そうか……」
「でも、シュンはまだまだよ。もっと食べて体力つけてからだわ」
「そう言われた」
「そうよ、でないと身体を壊しちゃうからね」
「そうなのか?」
「そうよ」
「アキもしゅる~」
「アキはしなくてもいいわよ~。可愛いもの」
「アキもしゅるの! おねーしゃん達みたいにしゅるの」
ああ、いかん。影響を受けてるぜ。戦うメイドさん達を目標にしちゃ駄目だぞぅ。
「アキももっとたくさん食べられるようになってからね」
「うんッ! いっぱい食べる~」
ああ、可愛い。ほんと、癒されるぞぅ。
「お嬢さまぁ、変なお顔になってますよぅ」
うっせーな、咲は。
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