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第3章 領地の防御
98ー調査報告
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バルト兄の話だ。
父と兄は捕らえた刺客を王都へと連行していった。そして、王城の兵へ引き渡した。ここまでは普通の事だ。城の兵へと引き渡し、王へ謁見を願い出たのだそうだ。
だが、許可が下りなかった。
「兄上、それはどうしてですか?」
「病気療養中だと言われたんだ」
「病気ですか?」
「ええ、殿下。殿下がおられる頃はどうでした?」
「私はまったく知りません。別宮から出る事ができなかったので」
「そうですか。そこで、少し城で情報収集をしてみたのです」
「バルト殿、城でですか?」
「はい。城の下働きの者から護衛の兵達に城の中はどうか聞いてみたのですよ」
ほう、色々調べていたんだな。
「あまり目立ってもいけません。それで、皆で手分けをして色んな立場の人達に聞いたのです」
父や兄が動くと、どうしても目立ってしまう。あれは辺境伯だと皆見ている。
そこで、同行していた兵達や、母の実家の使用人達が城で働いている人達に聞いたんだそうだ。
すると、父が王子を保護する前から王の姿は見られていない事が分かった。
「私が殿下をお連れする時も、陛下は出て来られなかった。それがとても違和感を覚えたのだ」
父はそれを覚えていた。だからこそ、城の人間に聞いてみたんだそうだ。
「陛下は殿下の事を、ご存知ないのかも知れんと思うのだ」
「父上、なら一体誰が殿下の事を?」
「それだ。殿下の護衛のアルベルトが先に調べていた事なんだが」
王子をうちで保護して、直ぐに姿を見なくなっていた王子の護衛であるアルベルト。単身で王都へ戻り、母の実家に身を寄せていたそうだ。
母の実家と連携して、王子の事を調べていたんだ。
「でだ。あちらとアルベルトが調べた結果なのだが」
結論から言うと、決定的な事はつかめなかったらしい。だが、どうやら王は関係していないと父達は結論付けた。
「どの話にも、誰に聞いても陛下の話が一切出てこないんだ」
「兄上、どういう事ですか?」
「陛下のお姿を見かけた者さえいなかったんだ」
いやいや、それは異常だ。城にいるべき人の姿が見られていない。一体どういう事なんだ?
「俺達が謁見を願い出たときは、病気療養だと言われた。本当にご病気なら城の医師が診察している筈だ。しかし、医師も陛下のお姿を見ていなかったんだ」
これは、異常事態だと思った母の実家と父達は王の周辺も調べたんだそうだ。
「今、陛下の代わりに実務を執り行っているのは宰相だ。しかし、実権を握っている訳ではなかったんだ」
「あなた、もしや王妃様ですか」
「ああ、私はそうみている」
王妃は第1王子、第2王子、第1王女の実母だ。
父が保護した第3王子の実母ではない。
「王妃殿下のご実家は侯爵家でしたわね」
「ああ。あちらとはあまり関わりのない家だな」
母の実家は文官家系だ。その文官を蔑んでいる貴族達がいるらしい。と、いっても武官家系ではない。文官と武官、相容れないように思えるが、そうでもないそうなんだ。
何故なら、どちらも国の為に働いているからだ。役割は違えども、志は同じといったところか。
だが、武官に比べて文官は地味だ。命を守ってもらったとか、国を守り戦に勝利したとかではないからな。しかし、城や国を滞りなく動かしているのは文官の力が大きい。
その文官家系の貴族を蔑んでいるのは、自分達で商売をして成功し贅沢をしている一部の少数貴族達がそうらしい。
そんな貴族の代表格が、現在の王妃の実家なのだそうだ。
「自分達の手腕で成功しているのだ。だから、贅沢するのも何をするのも好きにすればよい。しかしだな、立場を超えて国政に口を出すのはまた話が別だ」
まして、自分の娘が王妃なんだ。余計に勘違いして横柄な態度になる。そして、自分の立場を顧みることなく口を出すようになる。
王はそれを抑えていたらしい。苦言を呈しているところを見た者もいる。
「それで、思うようにならないからと?」
「まだ、確実ではない」
なら王の命が危ないんじゃないのか?
もしかして、どこかに幽閉されているか……若しくは毒でも盛られたか。それこそ第3王子の様にさ。
「だが、どこにおられるのか分からない」
「父上、しかし悠長な事をいっていても良いのですか?」
「ロディ、下手に動くと余計に事態を悪くする」
「そうですが……」
「第1王子殿下がもう21歳になられる」
この国の第1王子、イザークス・ヴェルムナンド。21歳だ。
第2王子が、ニコルクス・ヴェルムナンド。まだ15歳だ。
第1王女が、マールミーア・ヴェルムナンド。18歳。
そして王妃、エラトミーア・ヴェルムナンド。42歳。
王は、シーガルクス・ヴェルムナンド。まだ43歳だ。
「陛下は私の2学年上におられた。聡明なお方だ。王子殿下ともお話しした事はあるが、お2人共ご自分の立場を弁えておられて聡明なお方だった。だが、もしかしたら早々にイザークス第1王子殿下に譲位させるつもりなのかも知れん」
うちのドン、いや父は41歳。若いね。
父と兄は捕らえた刺客を王都へと連行していった。そして、王城の兵へ引き渡した。ここまでは普通の事だ。城の兵へと引き渡し、王へ謁見を願い出たのだそうだ。
だが、許可が下りなかった。
「兄上、それはどうしてですか?」
「病気療養中だと言われたんだ」
「病気ですか?」
「ええ、殿下。殿下がおられる頃はどうでした?」
「私はまったく知りません。別宮から出る事ができなかったので」
「そうですか。そこで、少し城で情報収集をしてみたのです」
「バルト殿、城でですか?」
「はい。城の下働きの者から護衛の兵達に城の中はどうか聞いてみたのですよ」
ほう、色々調べていたんだな。
「あまり目立ってもいけません。それで、皆で手分けをして色んな立場の人達に聞いたのです」
父や兄が動くと、どうしても目立ってしまう。あれは辺境伯だと皆見ている。
そこで、同行していた兵達や、母の実家の使用人達が城で働いている人達に聞いたんだそうだ。
すると、父が王子を保護する前から王の姿は見られていない事が分かった。
「私が殿下をお連れする時も、陛下は出て来られなかった。それがとても違和感を覚えたのだ」
父はそれを覚えていた。だからこそ、城の人間に聞いてみたんだそうだ。
「陛下は殿下の事を、ご存知ないのかも知れんと思うのだ」
「父上、なら一体誰が殿下の事を?」
「それだ。殿下の護衛のアルベルトが先に調べていた事なんだが」
王子をうちで保護して、直ぐに姿を見なくなっていた王子の護衛であるアルベルト。単身で王都へ戻り、母の実家に身を寄せていたそうだ。
母の実家と連携して、王子の事を調べていたんだ。
「でだ。あちらとアルベルトが調べた結果なのだが」
結論から言うと、決定的な事はつかめなかったらしい。だが、どうやら王は関係していないと父達は結論付けた。
「どの話にも、誰に聞いても陛下の話が一切出てこないんだ」
「兄上、どういう事ですか?」
「陛下のお姿を見かけた者さえいなかったんだ」
いやいや、それは異常だ。城にいるべき人の姿が見られていない。一体どういう事なんだ?
「俺達が謁見を願い出たときは、病気療養だと言われた。本当にご病気なら城の医師が診察している筈だ。しかし、医師も陛下のお姿を見ていなかったんだ」
これは、異常事態だと思った母の実家と父達は王の周辺も調べたんだそうだ。
「今、陛下の代わりに実務を執り行っているのは宰相だ。しかし、実権を握っている訳ではなかったんだ」
「あなた、もしや王妃様ですか」
「ああ、私はそうみている」
王妃は第1王子、第2王子、第1王女の実母だ。
父が保護した第3王子の実母ではない。
「王妃殿下のご実家は侯爵家でしたわね」
「ああ。あちらとはあまり関わりのない家だな」
母の実家は文官家系だ。その文官を蔑んでいる貴族達がいるらしい。と、いっても武官家系ではない。文官と武官、相容れないように思えるが、そうでもないそうなんだ。
何故なら、どちらも国の為に働いているからだ。役割は違えども、志は同じといったところか。
だが、武官に比べて文官は地味だ。命を守ってもらったとか、国を守り戦に勝利したとかではないからな。しかし、城や国を滞りなく動かしているのは文官の力が大きい。
その文官家系の貴族を蔑んでいるのは、自分達で商売をして成功し贅沢をしている一部の少数貴族達がそうらしい。
そんな貴族の代表格が、現在の王妃の実家なのだそうだ。
「自分達の手腕で成功しているのだ。だから、贅沢するのも何をするのも好きにすればよい。しかしだな、立場を超えて国政に口を出すのはまた話が別だ」
まして、自分の娘が王妃なんだ。余計に勘違いして横柄な態度になる。そして、自分の立場を顧みることなく口を出すようになる。
王はそれを抑えていたらしい。苦言を呈しているところを見た者もいる。
「それで、思うようにならないからと?」
「まだ、確実ではない」
なら王の命が危ないんじゃないのか?
もしかして、どこかに幽閉されているか……若しくは毒でも盛られたか。それこそ第3王子の様にさ。
「だが、どこにおられるのか分からない」
「父上、しかし悠長な事をいっていても良いのですか?」
「ロディ、下手に動くと余計に事態を悪くする」
「そうですが……」
「第1王子殿下がもう21歳になられる」
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第2王子が、ニコルクス・ヴェルムナンド。まだ15歳だ。
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そして王妃、エラトミーア・ヴェルムナンド。42歳。
王は、シーガルクス・ヴェルムナンド。まだ43歳だ。
「陛下は私の2学年上におられた。聡明なお方だ。王子殿下ともお話しした事はあるが、お2人共ご自分の立場を弁えておられて聡明なお方だった。だが、もしかしたら早々にイザークス第1王子殿下に譲位させるつもりなのかも知れん」
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