上 下
93 / 249
第3章 領地の防御

93ーお土産

しおりを挟む
「まあ、パンケーキなの?」
「はい、母さま。トレントがメープルシロップを沢山落としたんです!」
「あら! ラッキーねッ!」
「そうですよねッ!」

 母と2人で呑気な事を言ってるよ。皆の前にメイドさん達がパンケーキを並べてくれる。もちろん、メープルシロップもたっぷりとある。香ばしい良い香りがするぜ。

「ココ、マッシュも出たんだろう?」
「はい、兄さま。キノコも沢山拾ってきました」
「そう、じゃあ明日早速クリスティー先生に頼もう」
「兄さま、クリスティー先生ですか?」
「ああ。回復薬の作り方を教わるといいよ」
「え、それもクリスティー先生ですか?」
「そりゃそうだ、ココ。エルフなんだから」
「え? キリシマ。エルフは魔法なんでしょう?」
「回復薬を作ったりするのも得意だぜ」
「そうなんだ」

 へえ~、よく知ってるなぁ。まあ、いいや。

「ほら、お腹すいてるでしょう? 沢山食べてね。これをかけると甘くて美味しいのよ」

 俺は、側に座らせた猫獣人の兄妹の世話を焼く。
 キュゥ~と小さなお腹の音がした。

「ふふふ。美味しそうでしょう?」
「う、うん」
「本当に食べても良いの?」
「いいわよ。沢山食べてね」

 嬉しそうに2人はナイフとフォークを上手に使ってパンケーキを食べだした。
 ホカホカでフワフワのパンケーキに生クリームが添えてある。そこに、バターを塗ってメープルシロップをたっぷりとかける。ナイフを入れるとふわっふわで柔らかい。これはメレンゲをしっかり泡立てたな。少し厚めのパンケーキだ。

「ココ、これかけるのか?」
「そうよ、キリシマ。切ってあげるわ」
「おう、頼むぜ」

 霧島がフォークで食べやすい大きさに切りメープルシロップをたっぷりとかける。

「さ、どうぞ」
「ありがとな、いただき!」

 小さな手で器用にフォークを使って、パクッとパンケーキを食べるキリシマ。

「うんめ~!!」
「ね、美味しいでしょう?」
「ふわっふわじゃん!」
「アン! アン!」
「ノワ食べる?」
「アン!」

 パンケーキを数切れ、お皿に取り分けてあげる。あれ? ワンちゃんってこんなの食べたら駄目じゃん。

「お嬢、犬じゃないッス」
「はいぃ、フェンリルですぅ」
「そうだった」
「ここの料理は本当にうめーな!」

 霧島、口の周りがベタベタのテッカテカだ。生クリームまでついている。猫獣人の子達も夢中で食べている。
 うちの料理人達はみんな腕が良いからな。

「お嬢さまが色々注文つけるからですよぅ」
「え? そう?」
「そうッスね」
「そうだね、ポテトフライや魚のフライはうちの領地位じゃないかな?」
「兄さま、そうなのですか!?」

 驚いたよ、そうなのか?

「ココがもっと小さい時にね、言い出したんだ。それからだね、みんなで芋ほりして一緒にフライを食べるのは」

 げ、そうなのかよ。俺はてっきり代々やってるんだと思っていたよ。

「芋ほり大会は代々やっているそうよ。一気に収穫できて手間が省けるからじゃないかしら」
「ワッハッハッハ、その通りだなッ!」

 なんだ、やってんじゃん。ユリシスじーちゃんもお口の周りが光ってるぜ。せっかくの口髭が台無しだ。

「ふふふ。確かに、見た事のない料理が多いね」
「殿下、そうなのですか?」
「うん、まあ僕はあんまり知らないけどね」

 そっか、3年幽閉状態だったからか?

「母上がまだ生きていらした時は、普通に城の料理を食べていたけどそれでもここは知らない料理が多いよ。なにより、とっても美味しい」

 そうなのか。ちょっと自重しよう。

「ぷぷぷ、お嬢今更ッスよ」
「きっと無理ですぅ」

 お前ら酷いね。パンケーキが美味しいからいいや。
 みんなで和やかにお茶をしていると、玄関が騒がしくなった。
 そして、ロディ兄の従者のランスが慌てて入ってきた。

「王都の旦那様からです!」

 と、手紙をロディ兄に手渡した。
 何かあったのか? それとも、そろそろ帰ってくるのか?

「うん、明後日には到着するみたいだ」
「今回は時間が掛かったわね」
「色々あったのかも知れませんね」

 まあ、辺境の領地から王都に行くだけで半月は掛かっちゃうんだけどね。
 それにしても、今回はちょっと長かったような気がする。

「あちらとも色々お話しをしていたのでしょう」

 あちらとは、母の実家だ。さて、どんな話を持って帰ってくるかな?
 と期待しつつ、俺は相変わらず作業場に来ている。

「お嬢様ぁ! ご無事で良かったですぅ!」

 また、咲みたいな喋り方になっているのは1番年下のナタリーさんだ。心配してくれていたんだな。有難うよ。

「有難う、大丈夫よ。お土産があるのよ」
「えぇッ!? 討伐に出てお土産ですか!?」
「さっき焼いてもらったの。温かいうちに食べてね」

 咲が焼き立てのパンケーキを出す。

「え!? お嬢様、パンケーキがお土産ですか?」
「違うわよ、それにかけるメープルシロップよ」
「「メープルシロップ!!」」

 声が揃っちゃったのは、ナタリーさんとミリーさんだ。ミリーさんも甘党なのか?

「そうなの。メープルトレントが出たのよ」
「えぇッ!! トレントですか!?」
「そう、メープルトレントと、ハニートレントと、マッシュトレントがね。だから、沢山かけて食べて」

 咲がお茶を入れてくれる。

「それは嬉しいです! お嬢様、お怪我もなく?」
「ええ。なんともないわ」



   ◇            ◇            ◇

読んでいただき有難うございます!
これを書いている時にパンケーキが食べたくなって焼きました!
皆さんも同じ気持ちになって欲しいでっす!
いつも、ありがとうございます!
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

ボッチの少女は、精霊の加護をもらいました

星名 七緒
ファンタジー
身寄りのない少女が、異世界に飛ばされてしまいます。異世界でいろいろな人と出会い、料理を通して交流していくお話です。異世界で幸せを探して、がんばって生きていきます。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

ぐ~たら第三王子、牧場でスローライフ始めるってよ

雑木林
ファンタジー
 現代日本で草臥れたサラリーマンをやっていた俺は、過労死した後に何の脈絡もなく異世界転生を果たした。  第二の人生で新たに得た俺の身分は、とある王国の第三王子だ。  この世界では神様が人々に天職を授けると言われており、俺の父親である国王は【軍神】で、長男の第一王子が【剣聖】、それから次男の第二王子が【賢者】という天職を授かっている。  そんなエリートな王族の末席に加わった俺は、当然のように周囲から期待されていたが……しかし、俺が授かった天職は、なんと【牧場主】だった。  畜産業は人類の食文化を支える素晴らしいものだが、王族が従事する仕事としては相応しくない。  斯くして、父親に失望された俺は王城から追放され、辺境の片隅でひっそりとスローライフを始めることになる。

処理中です...