おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

撫羽

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第3章 領地の防御

90ーノワ

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「ココ、そいつブラックフェンリルだ。フェンリルがトレントなんかにやられる訳ねーよ。お前もしかして、巣立ちして直ぐなのか?」
「アウ」
「珍しいな。この森にいたのか?」
「アウアウ」
「違うのか?」
「アウ」

 霧島が会話してるよ。というか、ブラックフェンリルって何だ?

「ココ、ブラックフェンリル自体が希少なんだ。普通フェンリルはシルバーの体毛をしてるんだ。フェンリルは本当なら森の守護聖獣なんだよ。フェンリルって、生まれて何年かしたら親元を離れて巣立ちすんだ。それでこの森にやって来てトレントに捕まったんだろうよ」
「へぇ~。君、珍しいんだ」
「アン」
「やだ、可愛い~! まだ子犬じゃない!」
「いやいや、お嬢。本当にブラックフェンリルなら、子供だろうと何だろうと危険だぜ。森の中だと最強なんだぜ」
「えぇー、シゲ爺。連れて帰りたいぃー」
「何言ってんだ!?」
「ココ、お前は本当にさあ……」

 俺の手を、ペロペロと舐めだした。もういいじゃん。懐いたと思わね?

「ね、一緒に来る?」
「アン!」
「そう、じゃあ名前を付けないとね」
「ココ!」
「男の子かなぁ?」

 俺はそのブラックフェンリルと言われる小さな黒い子をヒョイと抱き上げてみる。

「アウ?」
「そう、じゃあね~、君の名前は……」
「いや、ココ! 名前は……」
「うん、決めた! ノワ! 黒のノワールからとってノワね。よろしく、ノワ。あたしはココよ」

 そう言ったら俺とたった今ノワと名付けたブラックフェンリルのいる地面に大きな魔法陣が浮き出て光った。

「ああ、やっちまったよ」
「え? キリシマ、今の何?」
「あれだよ、テイミングってんだ。ココがそのブラックフェンリルをテイムしたんだ」
「えッ!? そんな事あたしできないわよ?」
「できたんだよ。ココが名付けて、あいつが受け入れた。それでテイミング完了だ」
『ココ、ココ! おれ、ノワ! ノワ!』

 フサフサな尻尾を千切れんばかりにブンブンと振っている。超可愛いじゃん。

「おぉッ、声が聞こえる!」
「そりゃそうだ。前に俺が言ってた念話と一緒だな。テイムして繋がりができたんだ」
「えぇ~! ノワ! よろしく!」
『ヨロシク! ココ!』
「もうお嬢さまったらぁ」
「お嬢らしいッス」
「何!? テイムだとッ!?」
「ふふふ、みんなもよろしくね! ノワよ!」
「ああ、反省してねーよ」
「何よ、キリシマ。何で反省すんのよ」
「そう、ホイホイとテイムすんじゃねーよ!」
「なんだ? 嫉妬してんの?」
「バカッ! ぶわーかッ! 何でドラゴンの俺が嫉妬すんだよ!」
「ふふふ、可愛い。ふわもこね~」
「へん、どうせ俺は冷たいし硬いよ」
「アハハハ! キリシマ、何言ってんのよ!」
「ココォー!!」

 ああ、また大きな声で叫びながらユリシスじーちゃんが走って来たよ。

「ココ! テイムしただとぉッ!?」
「はい、お祖父さま。ブラックフェンリルのノワです」
「アン!」

 おや、ちゃんとお座りして挨拶してるよ。

「ブ、ブ、ブラックフェンリルだとぉーッ!!」
「キリシマ、本当なのか!?」

 と、ディオシスじーちゃんもやって来ていた。

「ああ、止めるヒマもなくやっちまったよ」
「ハッハッハッハ! さすがココだッ!!」
「アハハハ! 仕方ないなぁ!」
「いいのかよ! じーちゃん2人共さ!」
「なんだキリシマ。やってしまったもんは仕方ないだろう!」
「ユリシス爺ちゃんはココには甘いんだよ!」
「何を言っておる! キリシマもココに助けてもらったのだろう!?」
「まあ、そうだけどよ」

 盗賊団の捕縛も済み、呑気な話をしていた時だった。

「ユリシス様! 檻があります!」
「なんだとッ!」

 周辺を確認していたじーちゃんの兵達が1つの檻を見つけた。
 森の中、大きな草木で覆い隠すように置かれた1つの檻。その中に捕らわれている人達がいたんだ。

「よく無事でおったッ! もう大丈夫だぞ!」

 じーちゃんが声を掛けるが、まだ怯えている。
 檻の中に捕らわれていた人達。女性が1人と女の子が1人、そして猫の様な耳がある小さな男の子と女の子だ。身を寄せるようにしてこっちを見ている。兄妹らしい。
 俺は皆の後ろで霧島に聞く。

「ねえ、キリシマ。猫耳があるんだけど」
「そうだな。猫獣人だろう」
「猫獣人?」
「ああ。この領地にはいないのか?」
「知らないけど、いないと思うわ」
「そうか。隣国にはいるみたいだな。猫だけでなく、狼や犬とかの獣人もいるぞ」
「そうなんだ。知らなかったわ」
「ココはまだちびっ子だからな」

 そんな問題か? 帰ったらロディ兄に教えてもらおう。
 じーちゃんの兵達が檻の鍵を壊し、中の人達を解放する。
 ああ、見てらんねー。ガリガリじゃん。

「もう大丈夫だからね」

 俺はそう言って思わず小さな猫獣人の兄妹を両腕で抱き寄せた。

「怖かったね。食事はもらえたの? 喉乾いてない?」

 とたんに2人の目に涙が溜まりだす。

「ああ、もう大丈夫よ。大丈夫」

 2人を抱き締めながら、背中を撫でる。

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