おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

撫羽

文字の大きさ
上 下
90 / 249
第3章 領地の防御

90ーノワ

しおりを挟む
「ココ、そいつブラックフェンリルだ。フェンリルがトレントなんかにやられる訳ねーよ。お前もしかして、巣立ちして直ぐなのか?」
「アウ」
「珍しいな。この森にいたのか?」
「アウアウ」
「違うのか?」
「アウ」

 霧島が会話してるよ。というか、ブラックフェンリルって何だ?

「ココ、ブラックフェンリル自体が希少なんだ。普通フェンリルはシルバーの体毛をしてるんだ。フェンリルは本当なら森の守護聖獣なんだよ。フェンリルって、生まれて何年かしたら親元を離れて巣立ちすんだ。それでこの森にやって来てトレントに捕まったんだろうよ」
「へぇ~。君、珍しいんだ」
「アン」
「やだ、可愛い~! まだ子犬じゃない!」
「いやいや、お嬢。本当にブラックフェンリルなら、子供だろうと何だろうと危険だぜ。森の中だと最強なんだぜ」
「えぇー、シゲ爺。連れて帰りたいぃー」
「何言ってんだ!?」
「ココ、お前は本当にさあ……」

 俺の手を、ペロペロと舐めだした。もういいじゃん。懐いたと思わね?

「ね、一緒に来る?」
「アン!」
「そう、じゃあ名前を付けないとね」
「ココ!」
「男の子かなぁ?」

 俺はそのブラックフェンリルと言われる小さな黒い子をヒョイと抱き上げてみる。

「アウ?」
「そう、じゃあね~、君の名前は……」
「いや、ココ! 名前は……」
「うん、決めた! ノワ! 黒のノワールからとってノワね。よろしく、ノワ。あたしはココよ」

 そう言ったら俺とたった今ノワと名付けたブラックフェンリルのいる地面に大きな魔法陣が浮き出て光った。

「ああ、やっちまったよ」
「え? キリシマ、今の何?」
「あれだよ、テイミングってんだ。ココがそのブラックフェンリルをテイムしたんだ」
「えッ!? そんな事あたしできないわよ?」
「できたんだよ。ココが名付けて、あいつが受け入れた。それでテイミング完了だ」
『ココ、ココ! おれ、ノワ! ノワ!』

 フサフサな尻尾を千切れんばかりにブンブンと振っている。超可愛いじゃん。

「おぉッ、声が聞こえる!」
「そりゃそうだ。前に俺が言ってた念話と一緒だな。テイムして繋がりができたんだ」
「えぇ~! ノワ! よろしく!」
『ヨロシク! ココ!』
「もうお嬢さまったらぁ」
「お嬢らしいッス」
「何!? テイムだとッ!?」
「ふふふ、みんなもよろしくね! ノワよ!」
「ああ、反省してねーよ」
「何よ、キリシマ。何で反省すんのよ」
「そう、ホイホイとテイムすんじゃねーよ!」
「なんだ? 嫉妬してんの?」
「バカッ! ぶわーかッ! 何でドラゴンの俺が嫉妬すんだよ!」
「ふふふ、可愛い。ふわもこね~」
「へん、どうせ俺は冷たいし硬いよ」
「アハハハ! キリシマ、何言ってんのよ!」
「ココォー!!」

 ああ、また大きな声で叫びながらユリシスじーちゃんが走って来たよ。

「ココ! テイムしただとぉッ!?」
「はい、お祖父さま。ブラックフェンリルのノワです」
「アン!」

 おや、ちゃんとお座りして挨拶してるよ。

「ブ、ブ、ブラックフェンリルだとぉーッ!!」
「キリシマ、本当なのか!?」

 と、ディオシスじーちゃんもやって来ていた。

「ああ、止めるヒマもなくやっちまったよ」
「ハッハッハッハ! さすがココだッ!!」
「アハハハ! 仕方ないなぁ!」
「いいのかよ! じーちゃん2人共さ!」
「なんだキリシマ。やってしまったもんは仕方ないだろう!」
「ユリシス爺ちゃんはココには甘いんだよ!」
「何を言っておる! キリシマもココに助けてもらったのだろう!?」
「まあ、そうだけどよ」

 盗賊団の捕縛も済み、呑気な話をしていた時だった。

「ユリシス様! 檻があります!」
「なんだとッ!」

 周辺を確認していたじーちゃんの兵達が1つの檻を見つけた。
 森の中、大きな草木で覆い隠すように置かれた1つの檻。その中に捕らわれている人達がいたんだ。

「よく無事でおったッ! もう大丈夫だぞ!」

 じーちゃんが声を掛けるが、まだ怯えている。
 檻の中に捕らわれていた人達。女性が1人と女の子が1人、そして猫の様な耳がある小さな男の子と女の子だ。身を寄せるようにしてこっちを見ている。兄妹らしい。
 俺は皆の後ろで霧島に聞く。

「ねえ、キリシマ。猫耳があるんだけど」
「そうだな。猫獣人だろう」
「猫獣人?」
「ああ。この領地にはいないのか?」
「知らないけど、いないと思うわ」
「そうか。隣国にはいるみたいだな。猫だけでなく、狼や犬とかの獣人もいるぞ」
「そうなんだ。知らなかったわ」
「ココはまだちびっ子だからな」

 そんな問題か? 帰ったらロディ兄に教えてもらおう。
 じーちゃんの兵達が檻の鍵を壊し、中の人達を解放する。
 ああ、見てらんねー。ガリガリじゃん。

「もう大丈夫だからね」

 俺はそう言って思わず小さな猫獣人の兄妹を両腕で抱き寄せた。

「怖かったね。食事はもらえたの? 喉乾いてない?」

 とたんに2人の目に涙が溜まりだす。

「ああ、もう大丈夫よ。大丈夫」

 2人を抱き締めながら、背中を撫でる。

しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

魔道具作ってたら断罪回避できてたわw

かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます! って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑) フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は

だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。 私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。 そのまま卒業と思いきや…? 「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑) 全10話+エピローグとなります。

処理中です...