おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

撫羽

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第3章 領地の防御

89ーテイムしちゃった

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「能力を解放してもらったからな。使える様になったんだ。亜空間収納さ」
「やっぱ、亜空間収納なのね」
「ああ。ココはマジックバッグとか無限収納って知ってるか?」
「知ってるわ。マジックバッグは欲しいけどすっごく高いのよ」
「今のココならマジックバッグくらい作れるんじゃないか?」
「え? 本当に?」
「ああ。帰ったらまたエルフの先生に聞いてみたらいいさ」
「そうするわ!」

 欲しいんだよ。前から欲しかったんだ。俺は単純に亜空間収納のカモフラージュなんだけど。それが、作れるなら是非作りたい! みんなに作りたいんだ! 領主隊に持たせたいんだ!

「ココ! 怪我はないかぁッ!?」

 大きな声で叫びながら、ユリシスじーちゃんが走って来た。

「お祖父さま、大丈夫です!」
「そうか! トレントへの魔法攻撃は良かったぞ! サキやリュウもよくやった!」
「はいッ!」
「はいぃ! 有難うございますぅ」
「まさかトレントが出るとはな!」

 ディオシスじーちゃんだ。

「ああッ! あれは驚いた!」
「ユリシスお祖父さま、そうなのですか?」
「あれは、滅多にいないぞッ!」
「俺が遭遇したのは何年も前だ!」

 ええッ!? そんなになのか!?
 でも、ユリシスじーちゃんは気配を察知していたよな。いち早く指示を出していた。

「あいつがいるとな、森の空気が違うんだ!」
「ハハハハッ! 兄上、それじゃあココには理解できませんよ!」

 本当だよ。ディオシスじーちゃんの言う通り、全然理解できないよ。

「お嬢、空気で感じとれるなんてユリシス様位だッ!」

 ほお~、じーちゃん凄いんだ。いや、経験値なのか?

「ココ、兄上は野生の勘だよ」
「ふふふ、ディオシスお祖父さまったら」
「ハハハハ!」

 でも、良かった。無事に盗賊団を捕縛できたし、魔物も退治できたし。蜂蜜とメープルシロップも手に入ったし。回復薬になるキノコまで手に入った。お土産が沢山できたぞ。

「お嬢、まだ気を抜いたらいかんぞ! ここは森の中だ!」

 そう言いながら、シゲ爺が出て来たウルフ系の魔物を杖でぶん殴っている。しかも片手でだ。それ、杖の正しい使い方じゃないよね。絶対に違うよね。

「お嬢さまぁ、馬に乗りますよぅ」
「うん、分かった」

 俺はまだチビだからさ、馬に乗るのも咲にヨイショと乗せてもらわないといけないんだ。

「ああ、本当に早く大きくなりたいわ」
「また言ってるんですかぁ?」
「だって、何するのも不便だわ」
「急いで大きくなる事ないですぅ」
「そうッスよ」

 なんだか、生温かい目で2人に見つめられちゃった。それって、保護者目線だよね。
 2人の保護者目線に耐えながら、咲に馬へ乗せてもらおうかという時だった。

「お嬢、動くんじゃねーぞ」
「ココ、そのままだ」

 と、シゲ爺と霧島が注意を促した。どうしたんだ?

「こんな近くに来るまで気がつかねーなんて」
「いや、シゲ爺。かなり弱ってるぞ」
「え? 何? 何なの?」

 と、1人と一匹が見ている方を俺も見た。トレントが倒れていた場所のすぐ近くに、動く黒いものがあった。

「何なの?」
「ココ、分からん。あのオーラは魔獣じゃないんだけどな。なんせ弱っている」
「キリシマよう、魔獣じゃねーのか?」
「ああ、シゲ爺。あのオーラは違うな。魔獣というよりもっと……」

 話しているうちにその黒いものが、ゆっくりとこちらにやって来た。真っ黒の体毛に金色の瞳。まだ柴犬の子犬位の大きさだろうか。きっと犬ではないんだろうな。唯の犬が、魔物が棲息しているこの森で生きていけるはずがない。身体の彼方此方から血を流していて、片足も引きずっていて折れていそうだ。

「やだ、かわいそう!」
「お嬢! 何言ってんだ!?」
「お嬢、危険ッス!」
「お嬢さまぁ!」
「だって弱っているんでしょう!? 傷だらけじゃない、かわいそうよ。それに、可愛いじゃない!」

 俺は皆の言葉を流して、その黒いものに近寄って行った。小さな傷だらけの身体で威嚇してくる。
 態勢を低くして、驚かせないように慎重に……

「ね、噛まないでね。君を助けたいんだ。怪我してるじゃない。トレントにやられたの?」

 話しかけながら、そっと……あと、1メートルといった距離まで近づき片手を伸ばす。
 まずはこっちの匂いを嗅がせて、判断させる。

「あたしは君の敵じゃないわ。まだ小さいのに可哀そうに。ね、治してもいいかな?」

 話しかけながら、そっとだ。
 その黒いものが少し威嚇の声をあげる。

「大丈夫よ、何もしない。大丈夫」

 もう少し、手を伸ばす。
 俺の手の匂いをクンクンと嗅ぎだした。よし、もう少しだ。

「怪我を治すわね。噛まないでね」

 話しかけながら、俺はヒールと唱える。すると、光が黒いものを包み込み傷を癒していく。
 傷が治ったのが分かったのだろう。キョトンとした顔をして俺を見ている。

「ね、もう痛くないでしょう? 君、ちょっと汚いわね。クリーン」

 今度はシュルンッと全身が綺麗になり毛並みもよくなる。

「うわ、フッサフサじゃない。良い毛並みをしているわ。ねえ、君の親はどうしたの?」
「クウゥ~ン」
「いないの? もしかして、トレントにやられちゃった?」
「クウ……?」

 キョトンとしている。どうやら、そうではないらしい。
 霧島がフワフワと飛んでやって来た。

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